今やESGは企業活動において不可欠な取り組みとなっています。本記事では、まずESGの概要や注目されるようになった背景についておさらいします。また、市場が広がっているESG投資に欠かせないESGスコアとは何か、企業がESGスコアを向上させるためのポイントを解説します。最後に、ESG投資における7つの方法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ESGスコアとは
昨今、ESG投資の広まりとともに、ESGスコアという指標が重視されるようになりました。まずは、ESGスコアとはどのようなものなのか、ESGの概要を振り返りつつ、確認していきましょう。
ESGとは
ESGは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字をとった用語です。2006年、当時の国連事務総長であったコフィー・アナン氏が、機関投資家に対し、投資プロセスの中にESGを組み込む「責任投資原則(PRI)」を提唱したことで広まりました。
しかし、ESGについて明確な定義は存在しません。そのため、評価するための算出方法や指標は、評価機関によってばらつきがあります。
ESGスコアは投資先を決めるための指標
ESGへの取り組み状況を基に投資先企業を決めることを「ESG投資」と呼びます。国内では2017年7月、公的年金の管理・運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、本格的にESG投資を開始したことで話題になりました。また、海外においては年次レポートなどの定期的な報告書に、温暖化や気候変動によるリスクなどを盛り込むことも予想されており、ESG投資はますます広がると見られています。
一方で、ESG投資先を決めるのに評価軸が定まっていないと、投資家はESGに関する企業の取り組みを正しく比較検討できません。そこで、投資先企業を評価するための基準となる「ESGスコア」が重視されるようになりました。ESGスコアは、第三者評価機関が、企業のESGに関する取り組みや課題点などを総合的に判断し、算出した指標です。
ESGの背景
世界中でESGが注目されるようになったのは、どのような要因が考えられるでしょうか。最も大きい要因としては、技術の進歩や経済発展が歓迎される一方で、地球環境や社会、企業統治での悪影響が問題視されるようになったことが挙げられます。
企業は営利を目的とします。しかし、長期的な視点で持続的な成長を遂げるためには、利益を追求するだけでなく、非財務情報にも目を向けて取り組まなければならないという声が高まってきたのです。また、前述したように、投資家がESG投資を積極的に行うようになり、企業もその流れを重視する必要性があったことも背景にあります。
ESGブランド調査とは
ESGブランド調査とは、毎年、日経BP社が一般の消費者などにESGを軸としたブランドイメージをヒアリングしている取り組みです。2021年には約2万1000人を対象に調査を行い、1位は大手自動車メーカー、2位は大手飲料メーカーと、上位には有名企業が名を連ねました。
(参照元:https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20211008/)
こうした調査が行われるのも、自社のESGに関する情報を公開している企業が増えているという背景があるからです。ブランド調査で上位にランクインすれば、企業は投資家から資金を集められるようになります。また、消費者や取引先に好印象を与え、ひいては売上向上にもつながっていくでしょう。そのため、各企業は、将来的な成長を見据え、ESGへの対応を強化しているのです。
[RELATED_POSTS]ESGスコアを向上させるためには
では、どうすればESGスコアを上げられるのでしょうか。まず、ESG評価機関は環境、社会、企業統治における評価項目を策定する際、SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)やGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)など、ESGの査定において国際的な定評のあるフレームワークを参照しています。そのため、自社のESGスコアを向上させるには、各ESG評価機関が提示している表面的な評価項目だけではなく、その項目の基盤にあるフレームワークを踏まえて取り組む必要があります。
ESG投資の方法は7つある
ESG投資は、ネガティブスクリーニングやESGインテグレーションなど、7つの方法が存在します。これらは、ESG投資を促進・普及するための国際団体であるGSIAが提唱したものです。
倫理的でない企業を除外するネガティブスクリーニング
ネガティブスクリーニングとは、社会や環境にとって望ましくないと思われる特定の事業から収益がある企業を、投資先から除外する方法です。具体的な例としては、たばこやアルコール、武器、ギャンブルなどが挙げられます。また近年は、環境面をより重視し、温室効果ガスを多く排出したり、原子力や化石燃料を扱ったりする業界も除外されるケースがあります。
ESG分析も体系的に組み込むESGインテグレーション
ESGインテグレーションとは、投資先を検討する際、財務的な情報による分析だけでなく、ESGのような非財務情報による分析も体系的に含める方法です。現在、ESG投資のなかでも最も広まってきており、今後主流になると見込まれています。特に長期的な視点で投資する際には、非財務情報も判断に組み入れることで、より大きな収益を上げられるようになります。
さまざまなアプローチができる議決権・エンゲージメント
議決権・エンゲージメントによるESG投資とは、株主の権利を通して、企業に対しESGへの取り組みを促していく方法です。株主総会では議決権を行使したり、定期的に経営者への情報開示を求めたりすることもあります。経営者側と直接対話することで、ESGの取り組みに関する認識を合わせるなど、さまざまなやり方が考えられます。
ESGへの貢献度が高い投資先を選べる、国際規範に基づくスクリーニング
国際規範に基づくスクリーニングとは、国際労働機関(ILO)が定める規範や、国連が提唱する「国連グローバル・コンパクト」といった国際的なルールに基づいて、その基準に満たない企業を除外する方法です。結果としてESGへの貢献度が高い投資先を選べるようになります。
ESGスコアを用いて投資先を選ぶポジティブスクリーニング
ポジティブスクリーニングとは、環境面や社会面に配慮した商品やサービスを提供しているなど、ESGの観点でポジティブな取り組みの実績がある企業を投資先に選ぶ方法です。ESGスコアを参考に、積極的に温室効果ガスを削減している企業や、ダイバーシティの促進に取り組んでいる企業などが投資先として優先的に選ばれるようになります。
今後注目される可能性が高いサステナブル・テーマ投資
サステナブル・テーマ投資とは、男女平等や再生可能エネルギーの活用など、サステナビリティ(持続可能性)を重視し、投資対象を検討する方法です。昨今話題のSDGsと深い関連性があるため、投資方法として今後人気の高まりが予想されています。
ポジティブ・インパクトを与えることを目的とするインパクト投資
インパクト投資とは、財務的なリターンのみならず、社会や環境に関する課題解決も目指しながら、社会へのポジティブな影響を把握できる案件へ投資する方法です。環境や社会へのインパクトは、例えば識字率や就学率といった測定可能なデータを用いて判断されます。
まとめ
ESG投資は長期的な視点に立ち、環境や社会といった非財務情報も含めて企業の成長を見定め、投資することです。しかし、ESGには明確な基準がないため、その判断にはESGスコアが欠かせません。環境や社会といった非財務情報への評価が重視され、ESG投資が一般的になるほど、ESGスコアへの社会の関心も高まってくるかもしれません。
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