デジタル技術の普及・発展に伴って消費者行動が大きく変わる中、小売業界にもそれに対応したDXが求められるようになっています。本記事では、小売業におけるDXとはどのようなものなのか、小売業の抱える課題をいかにして解決するのかを、具体的な事例もまじえながら解説します。
そもそもDXとは?
DXとは“Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)”の略です。DXというと、たとえば紙で作業していた仕事をPC上で行うようにすること(ペーパーレス化やデジタル化)を連想する方が多いかもしれません。こうした取り組みもたしかにDXの一環ではありますが、より本質的に言えば、DXとは単にデジタル化するだけでなく、デジタル技術を利用して人々の生活をより良いもの、より豊かなものに根底から変革していく取り組みを指します。
DXはときに、私たちの生活様式やビジネスモデルそのものに大きな変革をもたらすこともあります。たとえば、すでに広く世間に受け入れられている動画や音楽のサブスクサービスなども、「映画はレンタルショップに行って借りるもの」「音楽はCDを買って聴くもの」といった既存の価値観を根底から覆す形で成立するものです。
DXは企業だけでなく、官公庁の施策としても注目されており、行政サービスを便利にするためなどにも活用されています。
小売業の課題とは? DXが必要な理由
では、このDXが小売業界にどのように関係しているのでしょうか。この点に関して、現在の小売業が抱えている課題などに照らして考えてみましょう。
なぜ小売業にDXが必要なのかと言えば、第一にデジタル技術の普及・発展に伴って、社会構造そのものや消費者の購買行動が大きく変容したからです。その最たる例としては、ECサイトの普及が挙げられるでしょう。従来は買い物と言えば、店舗に足を運んで行うものでしたが、今ではあらゆるものがクリックひとつで購入できます。
また、クレジットカードのみならず、スマホなどを用いたキャッシュレス決済が普及したことで、消費者は財布すら持たずに買い物できるようになりました。いまの消費者にとってキャッシュレス決済への対応は当然の流れとして受け止められつつあり、対応していない店舗は「不便なお店・遅れているお店」として敬遠の対象になりかねません。
また、新型コロナウイルスのパンデミックによって外出自粛要請が長期的に発令されたことで、消費者の行動や価値観にはさらに大きな変化が起こりました。このような状況の中、小売業には消費者のニーズや社会の変化に合わせて、新たなビジネス様式を構築していく姿勢が求められています。DXも、まさにそうした取り組みの一環として求められているのです。
[RELATED_POSTS]小売DXを推進するメリット
小売DXを推進するメリットとしては次のようなことが考えられます。
業務の効率化
DXによって、業務の効率化が見込めます。ITツールを活用することで、スタッフ間の情報伝達速度の向上や、研修業務・勤怠管理・データ管理などの手間が削減されます。これらの効果によって業務フローをより合理的な形に再構築することが可能になり、従業員の能力を活かした人材配置などもしやすくなるでしょう。業務効率化による作業負担の軽減や、それぞれの個性に応じた適正な人材配置は、従業員満足度の向上にもつながります。
コスト削減
DXの代表的なメリットとしては、コスト削減効果も挙げられます。というのも、先述のような業務効率化によって店舗経営に必要な人材を減らせるため、人件費の削減が可能になるのです。あるいは、AIを活用した在庫管理システムなどを導入することで、販売状況や在庫状況に応じた適切な発注が可能になり、過剰在庫の低減や保管にかかるコストを削減することもできます。在庫が食品の場合は、フードロス問題の改善など、SDGsの貢献にもつながるでしょう。
顧客満足度の向上
DXのメリットとしては、顧客満足度の向上も挙げられます。業務効率を上げることで、従業員は接客業務により専念することが可能になります。これによって接客のクオリティは上がり、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。また、AIによる在庫管理や顧客ニーズの分析は、顧客が欲しい商品が充実した店舗をつくることに寄与します。こうした取り組みを通して顧客満足度を改善することで、消費者の購買意欲が向上したり、口コミにつながったりして、売上の向上が期待できるでしょう。
小売DXを行う際の注意点
小売DXを行う際には、次のような点に注意が必要です。DXの効果を最大化するためにも、ぜひ覚えておきましょう。
計画を立てる際は長期的・継続的に
小売DXは一朝一夕で達成できることではありません。ITシステムを導入して運用開始し、そこから効果を挙げるまでには、やはり一定の時間やコストが必要なのです。いきなり期待した効果が出るとも限らないため、試行錯誤しながら時間をかけて改善していく心積もりでいるのが大切です。
また、DXを行う際には、ITツールやデータサイエンスなどに理解のあるデジタル人材の雇用または育成が欠かせません。ITツールを使う現場のエンドユーザーにも、最低限のITリテラシーは必要になるでしょう。
データドリブンな意思決定を支える基盤を導入する
DXの効果を上げるには、組織の意思決定のあり方を「データドリブン」に変えることが必要です。データドリブンとは、データに基づいて意思決定していくことなどを意味しますが、これを実現するには、データ管理やデータ分析が可能なIT基盤(データプラットフォーム)をまず構築することも欠かせません。
このようなIT基盤の導入には当然ながら相応の費用が必要なので、費用対効果や必要性などをよく検討した上で導入の可否を決断しましょう。DXはあくまでも経営を改善するための手段であり、目的ではないため、初めからデジタル化やDXありきで進めるのではなく、まずは実現したいビジョンや経営戦略を明確にすることから始め、それにDXがどのように貢献できるかという仕方で思考を進めるのがおすすめです。
実際に推進されているDX事例
最後に、実際に小売業界で推進されているDXの事例を紹介していきます。
AIカメラによる小売業DX
最初に挙げるのは、AIカメラによる小売DXの事例です。これはスーパーマーケットなどの店内にAIカメラを店内に設置し、顧客の行動をモニタリングするというものです。このAIカメラは各顧客の属性や店舗内での行動を分析し、どのような商品に需要があるのか、どのように売り場のレイアウトを改善したらいいかなど、店舗経営に役立つ有用なヒントを提供してくれます。小売業において需要予測は経営者の経験や勘に頼りがちですが、AIカメラによって客観的なデータの裏付けやサポートが得ることが可能です。
セルフレジによる小売業DX
昨今見かけることが多くなったセルフレジの導入も、小売DXの事例として挙げられるでしょう。セルフレジにもさまざまなものがあり、ひとつずつバーコードを読み込まなくても、まとめて一気に自動会計してくれるものもあります。あるアパレル小売店では、そのような高性能のセルフレジを導入し、従来できていたレジ前の行列解消に役立ちました。そのお店では、複数店の服をまとめ買いする顧客が多く、一会計当たりの時間が長引きがちでした。セルフレジによって顧客のみでも迅速に会計ができるようになったことで、レジの回転率を上げて行列を解消したり、レジ係にかかっていた人件費を削減したりすることに成功したのです。
まとめ
昨今ではデジタル技術の発展や社会状況の変化によって小売業にも変革が求められており、それぞれの課題に合ったシステムの導入が必要になってきています。DXは、そうした時代の要請に応える形で小売業においても推進されつつあります。小売業界のDXについて、さらに深く知りたい方は、ぜひ以下のリンクから資料を取得してご覧になってください。
リンク先:https://www.clouderp.jp/resources/distribution-retail-services-digital-revolution
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