ERP(統合基幹業務システム)とMES(製造実行システム)の違いは? 本当に導入すべきシステムを整理

 2021.10.06 

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ERPは、基幹業務について企業のリソースを統合的に管理し、会社の経営を効率化するシステムです。MESは、製造業の工場での工程の効率性を上げ、管理するためのシステムですが、両者は具体的にどのように違うのでしょう。

また、ERPとMESは連携による効果が期待されていますが、両者はどのように連携するべきか、連携上の留意点について紹介します。

ERP(統合基幹業務システム)とMES(製造実行システム)の違いは? 本当に導入すべきシステムを整理

ERPとMESはどう違う?それぞれの特徴を解説

ERPは、基幹業務について企業のリソースを統合的に管理し、会社の経営を効率化するシステムです。これに対して、MESは、生産工場での各工程における効率性を上げ、スムーズに管理するためのシステムです。

コンパクトにまとめると次の通りです。

  • ERP=会計・生産管理などに関わる基幹システム
  • MES=製造業における生産工程の管理を行うシステム

ERPは、製造業だけでなく、あらゆる業種で企業のリソース管理に活用できますが、MESは製造業に特化したシステムです。また、ERPは財務を中心として企業の経営の数字全体を管理しますが、MESは、ERPの生産管理データのうち、レイヤーが現場に近いレベルのものを管理するシステムでもあります。

ERP(統合基幹業務システム)とは

企業を動かしているのは、人・モノ・カネ・そして情報です。
これらを無駄なく適切に配分し、どのように使ったのかを一目で把握できれば、経営陣としてはリアルタイムで会社の状況を手に取るようにわかります。これをシステムで実現しようとしているのがERPです。

例えば、ERPでは基幹業務に関する多様なデータをダッシュボードでのグラフ一覧や、BIによる分析データなどで経営陣に知らせます。また、各部にも数字が情報共有されて、目標のなかに織り込まれれば、会社は一丸となって同じ方向を向いてビジネス活動をすることができます。

このシステムにより、経営状況などの数字がリアルタイムで見える経営を実現しようというコンセプトは、必要性が普遍的に認められ、広く支持されています。

MES(製造実行システム)とは

これに対して、MESは、工場の生産ラインにおける数字を把握し、製造プロセスの安定化・効率化を図るためのシステムです。ERPデータのなかでのMESデータは、生産管理データの重要な一画を占めています。

重要な部分なので、MESのデータが正確でかつERPに正しく反映されるなら、経営の数字の確度は高くなります。また、経営側からの需要予測などのデータに基づき稼働するなら、工場は工程も合理化され、無駄がなくなるでしょう。

MESの取り扱うデータを挙げると、「設計データ・原材料の管理・工場における生産ラインの稼働率などの生産効率に関するデータ・工場内の人員配置・製造ラインを構成する機械の保守データ・生産スケジュール管理・あるいは工場で利用する電気やガスなどのエネルギーに関するデータ・在庫管理などのサプライチェーンデータ」といったように、工場に関わるさまざまな数字全般に及びます。

ERPとMESの違いは「管理レイヤーの差」にアリ

ERPとMESの違いは、どのデータを誰が管理するのかを考えると非常にわかりやすくなります。
ERPは取締役会の数字、MESは工場長の数字であり、また、ERPの数字に基づいた経営計画に従い、工場長がこれらの計画をMESで実行する、と考えられるのです。

システムがそれぞれ支援する層はどこか、という観点から次のように整理するとシンプルでよいでしょう。

  • ERP=計画層の支援
  • MES=実行層の支援
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ERPとMESの役割とそれぞれのメリット

続いて、ERPとMESが持っている役割を紹介します。
「なぜ製造業では、2つのシステムを使うと経営効率がよりアップするのか」その理由がわかるとそれぞれの役割もより具体的に理解できます。

ERPの役割とは

ERP=企業のリソースを包括的に管理し、情報を経営に活かすものですが、ERPの数字は、経理・財務システム・生産管理システム・物流システム・人事、労務管理システムといった基幹システムから統合的に吸い上げられた数字です。

相互の数字が変わることにより、ほかの数字も連動して変わります。大枠での経営計画を変更することは大きな問題ですのでリスクとなりうるので、これらのデータはある幅のなかで納まっている必要があります。

加えて、それぞれの数字の確実性・正確性が担保されることが課題となるので、BIによる分析、AIによる自動化などで、人為的な誤りを極力排するようにし、経営陣に正確な判断材料を提供しています。

MESの役割とは

MES=生産ラインと各製造工程を連携させるためのツールですが、ERPで算出した生産計画の数字を忠実に実現することが基本的な役割です。経営方針に基づき生産計画データが修正される場合も、また正確に実現できることがMESに求められます。

人力で管理を行うと、こうした相互のフィードバックは思い通りに迅速に行うことは困難です。IoTやAIを活用し、適切に工場での生産プロセスを調整・変更できるのがMESに期待されている役割であり、メリットでもあります。

製造業においてERPとMESの連携が求められる理由

ERP・MESは、ERPの計画に基づき、MESが計画を実行するという役割を持っていますが、相互の連携を適切に行うことはシステム上の課題です。

できるだけタイムラグなしに、リアルタイムで経営陣の求める数字をMESが実現することが理想であり、ERPとMESを同時に利用する意味はここにあります。そのため、相互のデータはリアルタイムで参照されることが必要なのです。

例えば、設計技術仕様に関する情報・原材料の価格・エネルギーの消費・人員配置をMESで管理し、実行記録もまた、MESを通じてERPにフィードバックされることが確実に行われることが求められます。

ERPとMESの連携を進める上での注意点

ERPとMESの連携を進めるには、相互のデータの矛盾・前提条件の相違が問題になることが多いと考えられます。「MESが特定のオペレーションを前提としたデータを出している一方で、ERPの方では、それとは異なった生産管理オペレーションを想定していた」などといったこともあるので、注意が必要です。

このように前提条件が異なるなかでは、相互のデータは適切に参照しあえる関係にはありません。システム導入時にそうした点を十分に確認しないことが原因となる失敗事例も、頻繁に見受けられます。
「オペレーション自体を見える化し、システムも導入していく」という基本は、MES・ERPという大掛かりなシステムについては徹底されるべきです。これは導入時に限らず、BIデータの活用などのため、アップグレードする際にも大きな課題となります。

また、「導入時にデータの連携に苦労してしまう・そのためのカスタマイズ予算が想定よりも膨らんでしまう」というような事態も起こりがちです。特定のシステムについて「できること・できないこと」を、実証データを用いて検討するための時間的余裕も、導入時に重要なことであると考えられます。

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まとめ

ERPとMESのデータ連携は、相互のフィードバックを通じて製造業経営の予測可能性と効率性を上げ、変化に対応できるスピーディな経営に役立ちます。そのためには、現場からのデータをリアルタイムで把握することは不可欠で、工場のデータをMESで吸い上げ、フィードバックできることも特に重要です。

現在、中小企業のIT投資はERP・MESを中心に積極的に進められていますが、低予算でも導入しやすいクラウド型ERPパッケージOracle NetSuiteをクラウドで導入し、MESを工場の生産形態に合わせて構築するなどの方法が考えられます。

ERP・MES双方のデータの連携には留意点もあるので、専門のコンサルタントを起用するなどしてぜひ十分な導入およびデータ連携の具体的な検討を行うことをおすすめします。

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