高速なインターネット環境が整備され、ネット上であらゆる情報が検索できる時代になり、企業の購買プロセスは激変しました。担当者は経営課題を解決するために関連するベンダーに連絡するのではなく、まずインターネット検索によって情報収集を行います。一説には、製品やサービス提供企業にコンタクトを取る段階では購買プロセスの6割方が完了しているそうです。
こうした時代のビジネスにおいて、競合優位性を保つために必要なのは営業戦略だけでしょうか?もちろん違います。昨今特に重視されている戦略が「CRM」です。本稿では、そんなCRM戦略とは何かを分かりやすく解説していきます。
CRM戦略とは?
CRMは「Customer Relationship Management」の略であり、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。文字通り「顧客との関係性を管理するための戦略」であり、単に顧客情報を管理することではありません。ちなみにCRM戦略をIT面から実現するための製品を「CRMシステム」と呼びます。
「顧客との関係性を管理する」ということ
CRM(顧客関係管理)といってもその解釈は実にさまざまです。「CRMとは顧客至上主義で製品・サービスを提供することだ!」という人もいれば、「CRMはとにかく顧客について理解することだ!」という人もいます。明確な定義がない以上、それぞれの解釈に従って戦略を立てていく必要があります。
ただし、CRM戦略を実施する上で最も有効的な解釈としては、「顧客1社1社が持つ課題やニーズを深く理解した上で、都度最適なソリューションを提案できる良きビジネスパートナーになること」がおそらく正しいのではないかと思います。
顧客企業の経営課題を解決するために最適な製品やサービスは、必ずしも自社のものとは限りません。その時に、顧客にとって最適なソリューションを考え、時には他社の製品やサービスを含めた提案を行うということが、顧客との良好な関係性を築くことに繋がるケースもありえます。
こうした、ビジネスという枠組みを越えて長きにわたって良好な関係性を築き、顧客の利益と自社の利益、双方のバランスを整えていくことがCRM戦略の本質だと言えます。こうした戦略が、長期的に大きな利益をもたらすことになるでしょう。
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CRM戦略のメリット
CRM戦略を実施することで企業が得られるメリットとは何か?このメリットがビジネスに直結するものでなければ、CRM戦略を実施する意味はありません。要するに、顧客のためだけに行動するような「御用聞き」になってしまっては、顧客と一緒になってビジネスを成功させるという関係は築けません。ここでは、企業がCRM戦略を実施する意義やメリットについて整理していきます。
1.顧客ニーズを正確に把握できる
昨今のビジネス成功に欠かせない要因が「顧客ニーズを把握する」ということです。インターネット環境が整備されていない時代とは違い、顧客は自身が抱えているニーズや課題をなかなか表面に表しません。多くの製品・サービスが溢れている今、顧客は自社にとって最適なものを選ぶためにかなり慎重になっているのです。
CRM戦略を実施し、顧客について深く理解するための活動を始めると顧客ニーズを正確に把握できるようになります。それによって最適なソリューションを都度提案したり、さまざまなニーズを製品やサービスに反映させたりすることで、ビジネスを持続的に成長させることができます。
2.「顧客分析」の経験値が上がる
CRM戦略には必ず「顧客分析」が必要です。顧客から収集したさまざまな情報を統合して、それらを分析することで製品やサービスが今後進展すべき方向性や、カスタマーサービスにおける応対向上などに活用できます。そしてこれからの時代、顧客分析はとっても重要なスキルです。
CRM戦略によって顧客分析の経験値が向上することで、将来的に競合優位性を手にいれるためのスキルを生むことができます。
3.真のビジネスチャンスを見極められる
顧客との関係性の中ではさまざまなビジネスチャンスが生まれます。顧客が抱える課題に対して、自社製品やサービスで対応するということはさほど難しくないからです。しかしながら、どのビジネスチャンスも将来的なビジネスに繋がるわけではありません。重要なのは、顧客にとって本当に必要なソリューションを提案し、顧客と良好な関係性を築いて長きにわたって取引する関係性を構築することです。
たとえばある企業では、顧客から「こんな経営課題を解決できる製品はないか?」と相談を受けた際に、「それでしたら他者製品の○○が最適かと思います」といったように、常に顧客にとって最適なソリューションを提案します。それが結果的には自社への信頼性に繋がり、継続的に取引を行うような関係性を構築することになるのです。
4.長期的な関係性を構築してLTVを向上する
そうして長期的な関係性を構築することで、顧客のLTV(Life Time Value)が向上します。LTVというのは顧客と関係する機関の中で、どれくらいの利益が生まれたかを示す指標です。LTVが大きいほど、顧客と良好な関係性を築く、継続的に利益を確保していることになります。
要するに「初回のみの取引で得た500万円の利益」と、「10年間の取引で得た4,000万円の利益」とでは、どちらの方が企業にとって良いかということです。
5.パーソナライズされた製品・サービスを提供できる
昨今、顧客企業は自身の経営課題やニーズにカスタマイズされた製品やサービスを求めています。顧客ごとに最適な製品・サービスを提供することを「パーソナライズ」と呼びます。CRMではこれを実現することができ、製品やサービスの価値をより向上することができます。
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CRM戦略実現に向けたIT面からのアプローチ
CRM戦略を実現する上で欠かせない存在になっているのがCRMシステムです。CRM戦略をIT面からアプローチすることによって、効率的なCRM戦略を実行し、情報をさまざまな形でアウトプットすることができます。
CRM戦略にCRMシステムが必要な理由とは?
まず、CRM戦略に欠かせないのが「顧客情報の収集及び統合管理」です。通常顧客情報というのは、営業担当者ごとに分散管理されています。そのため、顧客情報を情報資産として活かすことが難しく、多くの企業がその時点でCRM戦略につまずきます。
CRMシステムは顧客情報を統合的に管理するための機能が備わっており、営業担当者の情報入力先をExcelからCRMシステムに換えるだけで、顧客情報を資産として蓄積できます。そしてCRMシステムに蓄積した顧客情報は、BI(Business Intelligence)ツールと連携して顧客分析を自動化したり、MA(Marketing Automation)ツールと連携したりしてマーケティング戦略に活用できます。
最近では、DMP(Data Management Platform)と連携することで大規模なデジタルマーケティングの顧客情報を活用する事例も増えています。このように、CRM戦略を実現するための基盤としてCRMシステムが必要であり、蓄積した顧客情報を最大限活用するためにも欠かせません。
CRM戦略を実施する場合は、同時にCRMシステムの導入も検討しましょう!その際の選定ポイントはERPなどバックオフィスシステムと連携できるものを選ぶと企業にとって効率化も図れるため良いでしょう。
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