経営活動における管理項目において特に重要なのが「原価管理」です。最近では「コスト・マネジメント」とも呼ばれ、企業が持続的に利益を確保していくために欠かせないものとなっています。
原価管理は主に「製造業で用いられる管理指標」だと考えられがちですが、経営環境が急速に変化している中、現在では幅広い業種で活用されています。本稿ではそんな原価管理について、「原価とは何か?」という基礎から管理手法までご紹介します。原価とは何か?
原価管理について理解するために、まずは原価から解説していきます。
原価とは「製品を1つ生産、サービスを1つ提供するために必要になった費用を集計したもの」です。パンを1つ作るためには原材料となる小麦粉を仕入れて、それを職人がこねて焼いて、店頭に並べるというプロセスがあります。その中のあるタイミングで、原料費や人件費、光熱費などが発生します。それらをすべて集計したのが原価です。
原価にはさまざまな種類があり、原価を分類する考え方についてもさまざまなものがあります。まずは費用が何に使われたかいう分類です。この観点から、材料費と労務費を分けることができます。
次に、その製品とどれだけ関係するかという観点から、直接費と間接費に分類されます。たとえばカレーパンの原価を計算する際に、カレーパン以外の原材料にはならないカレー粉は直接費になりますが、他のパンの材料にもなる小麦粉は間接費です。
これら2つの分類を組み合わせると「直接材料費」「直接労務費」「間接材料費」「間接労務費」という4つの区分ができ、これを用いて原価を計算することが多いでしょう。また、製造と販売と分けて考える際は、製造にかかる原価(製造原価)と販売や管理にかかる原価(販売管理費)は別の原価として考えられます。
原価管理は何のためにあるのか?
原価について理解すれば、原価管理を理解することは難しくありません。文字通り、原価管理とは「原価を管理するための活動」を指します。ここで重要なのは、原価管理が何のためにあるのかを知ることです。
利益をコントロールする
利益とは製品を販売した価格から原価を引いた金額をいいます。ということは、原価を正しく管理することは、利益をコントロールすることに繋がります。企業が持続的に利益を創出していくためには、適正な原価を常に維持したり、原価を低減したりするための取り組みが大切であり、そのために原価管理があります。
適正価格を設定する
「製品をいくらで販売するのが適正化?」ということについては、原価管理を継続的に行う必要があります。どんぶり勘定で製品価格を決定してしまうと、相場よりも安い価格を設定して損失が増えるか、相場よりも高い価格を設定して製品が売れないケースがあります。また、原価とは常に変動するものなので、それらを総合していくらで販売するのが適正なのかを決定できます。
原価の無駄を発見する
製品1つを製造するために、サービスを1つ提供するために発生する原価の中には無駄が隠れていることがあります。原価管理を実施していると、「この費用は本当に必要だろうか?他のもので代替できないか?」を考えることで原価の無駄を発見することができます。これによって原価の低減が容易になり、ひいては利益創出に繋がります。
付加価値が生まれる所を知る
ビジネスを成功させるために秘訣は、製品やサービスの付加価値が生まれる所を理解し、集中的な投資を行うことです。そうすることで、効率良く資金を回し、製品やサービスが持つ価値を高めることができます。そしてその付加価値が生まれる場所を知るには、原価管理を実施してどういった費用が付加価値を生んでいるかを理解することが大切です。
リスクマネジメントの一環として
原価は常に一定ではありません。それは企業にとってリスクでもあり、将来的に材料費などが高騰することで利益が下がったり、販売価格を上げなくはいけなかったりします。そうした場合でも、原価を可能な限り一定に保つための取り組みを実施していれば、社会情勢等に左右されることなく安定的な経営活動を実施できます。原価管理では、リスクマネジメントの一環として原価シミュレーションを行ったり、将来的なリスクに備えたりすることも行います。
このように、原価管理の目的はいずれも経営活動においてとても重要なものです。原価管理は「経営そのもの」と言われることもありますし、これまで原価管理を実施してこなかった企業には、ぜひ原価管理を取り入れていただきたいと思います。
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原価計算との違いは?
原価という言葉に対して「原価計算」を想起した方が多いかもしれません。原価計算とは、製品の製造やサービスの提供にかかる原価を、目的に応じて正確に計算し、把握する処理のことを指します。要するに原価計算は手段であり、原価管理はそれを用いた目的ということです。
原価計算の目的としては、利益計算を行い正しい財務諸表を作成することや、製品価格を決定することです。ちなみに、55年以上前に当時の財務省企業会計審議会が公表した「原価計算基準」によると、原価計算は以下のように定義されています。
<原価計算の目的>
商品・販売・サービスにかかった費用よりも、高い値段で商品を販売したりサービスを提供したりすることがビジネスの基本であり、商品・サービスを提供するにあたって適当な価格設定を行うために原価を計算する- 商品・販売・サービスにかかっている原価が適正なものかどうかを判断するには基準が必要であり、その基準を作るために原価計算を継続的に行い、基準と実際の差異分析を実施することで原価の適正化を図る
- 株主や投資家などの利害関係者に対して財務諸表という形で経営状況を報告するにあたり、その情報の根拠となる原価情報を提示するために原価計算が必要になる
- 経営活動は基本計画や予算編成によって決まるものだが、状況は常に変化するため条件に合わせたシミュレーションが必要であり、正確な予測分析を実施するためにも原価計算が必要になる
- 自社とその利害関係者(取引先や銀行など)全体の経営効率化を実現するために、予算管理を徹底して正確な予算編成を作成することが大切であり、そのために原価計算を実施する必要がある
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原価管理の管理手法
原価管理の管理手法としておすすめするのが、ERP(Enterprise Resource Planning)を活用したものです。ERPは複数の基幹系システムが統合されているため、原価計算に必要な費用情報を各システムから収集できます。さらに、システム上をその情報を加工して、原価計算を実施できるため原価の把握がかなり簡素化されます。
さらに、ERPに備わった原価シミュレーション機能などを活用すれば、原価管理を実施してその目標を達成するまでのプロセスをかなり短縮できます。原価管理を徹底し、経営活動を効率的に行っていきたいと考える場合は、ぜひERPをご検討ください。
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