企業が事業を継続していくためには、危機管理やリスク管理が重要になってきます。事業継続計画(BCP)とは、緊急時に「事業を継続する」ための計画のことです。事業継続計画(BCP)を策定するには、危機管理やリスク管理といった用語の意味を正確に理解しておく必要があります。本記事では、事業継続計画(BCP)とは何かを明らかにしたのち、危機管理やリスク管理との違いについて解説します。
緊急時に備えて策定する事業継続計画(BCP)とは?
企業は事業を継続していくためにも、大地震といった自然災害やテロ、感染症のパンデミック、サイバー攻撃によるシステム障害などの緊急時に備えて、「事業継続計画(BCP)」を策定することが重要です。まずは、事業継続計画(BCP)の概要について説明します。
事業継続計画(BCP)とは緊急時に「事業を継続する」ための計画
事業経営計画(Business Continuity Plan)は、企業が危機的状況に瀕したときに、被害を最小限に抑えて、事業を復旧・継続できるよう対策や方法を取りまとめた計画のことを指します。
危機的状況とは、大地震といった自然災害やテロといった人為的災害など、企業の中核事業の継続に支障をきたすような事態に陥ることです。なお、事業経営計画は「Business Continuity Plan」の頭文字を取り、「BCP(ビーシーピー)」という略称でも呼ばれます。
事業継続計画(BCP)が取り上げられた背景とは?
世界では1970年代以降、コンピュータが企業にとって欠かせないものになったことで、情報セキュリティーの一環として事業継続計画(BCP)が取り上げられるようになりました。
事業継続計画(BCP)の有効性が世界中に広がっていった大きなきっかけが、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロです。その際にBCPを策定していたメリルリンチ社が早期に業務再開に至ったことから、事業計画(BCP)は注目されはじめました。
日本でも阪神大震災をきっかけに、2005年に「事業継続計画ガイドライン」が内閣府によって定められ、事業継続計画(BCP)に関心を持つ企業が増加しています。
国内における事業継続計画(BCP)の策定状況
国内における事業継続計画(BCP)の策定状況に関して、株式会社帝国データバンクの調査によると、BCPを策定していると回答した国内企業は17.6%で過去最高となりました。一方で、事業継続計画(BCP)を策定していない企業もまだまだ多いといえるでしょう。
特に中小企業は14.7%と少ないのが特徴です。大企業の32.0%という数値からも、中小企業で進んでいないことが分かるでしょう。今後は中小企業の事業継続計画(BCP)に対する取り組みが課題になってくるといえます。
事業継続計画(BCP)を策定して得られるメリット
事業継続計画(BCP)を策定するメリットとして、あらかじめ緊急時の対応を決めておくことで、緊急時に迅速な対応ができる点が挙げられます。早期に事業を復旧させることで、顧客や関係者を安心させられるでしょう。
また、策定しておいた事業継続計画(BCP)に基づき、迅速かつ的確に事業を復旧させることで、取引先や株主などからの評価や信頼も高まります。結果として、企業の社会的な信用度アップにも繋がるでしょう。
事業継続計画(BCP)策定から運用の流れ・6つのステップ
事業継続計画(BCP)の策定から運用の流れは、以下の6つのステップで行うのが基本です。
- 策定の目的を整理し方針を立てる
- 社内で体制作りを行う
- 復旧・再開を急ぐ事業の優先順位をつける
- 事前案を策定し、シミュレーションを行う
- 「発動基準」と「発動時の体制・要員」を明確にする
- BCP策定・社内で共有
事業継続計画(BCP)を策定する際は、まず目的を明確にして、自社に合った方針を立てることから始めます。方針を立てたら社内でプロジェクトチームを作り、全社員に事業継続計画(BCP)を周知徹底させ、社内体制をしっかりと固めていきます。
また、事業継続計画(BCP)の策定では、緊急時に復旧を急ぐ事業に優先順位をつけることが大切です。企業にとって最も重要な事業を最優先で復旧できるように策定します。事前案を策定した後は、復旧にどの程度かかるかなどをシミュレーションして検証するようにしましょう。
なお、事業継続計画(BCP)を策定する際は、「発動基準」と「発動時の体制・要員」を明確にすることも重要です。事業継続計画(BCP)の策定が完了したら、社内で共有して運用を開始します。
[RELATED_POSTS]事業継続計画(BCP)の効果的な運用には見直すことが大切
事業継続計画(BCP)を策定したとしても、想定していなかった事態が発生する可能性も考えられるでしょう。そのため、事業継続計画(BCP)を効果的に運用するためには、定期的に見直しを行うことが大切だといえます。見直しのタイミングの例として、以下のような場面が挙げられます。
- 社内やステークホルダーに変革があったとき
- 中核となる事業を変更したとき
- 国や業界のガイドラインが改定されたとき
- BCPの訓練後や発動後
危機管理とは?事業継続計画(BCP)との違いを押さえる
危機管理と事業継続計画(BCP)は混同されることがありますが、両者は異なる概念です。ここでは、危機管理の概要ならびにBCPとの違いを解説し、危機管理とBCPを両立させることが大切であることを明らかにしていきます。
危機管理とは予期できない危機に事後対応するためのもの
危機管理は、英語ではCrisis Management(クライシスマネジメント)といい、予期できない危機に事後対応するためのものです。危機管理の対象となるのは、想定外・想定以上の危機であり、BCPよりも対象の範囲が拡大します。
予期できない想定外・想定以上の危機に対応するためにも、状況に応じて臨機応変に対応することが求められます。想定外・想定以上の危機が発生したときの責任者や報告の手順などを定めた「エスカレーションルール」を策定しておくことが大切です。
危機管理と事業継続計画(BCP)の違いは対象と目的
危機管理と事業継続計画(BCP)の違いは、BCPは危機の対象が「想定内の危機的状況」であるのに対して、危機管理は「想定外・想定以上の危機」を対象とする点です。危機の対象が異なるため、危機管理とBCPは策定する目的も異なります。
想定内の危機的状況に陥ったときに、事業を継続させることに特化した「事前準備」がBCPの目的です。一方、危機管理は想定外・想定以上の危機が発生したときに、被害を最小限に食い止める「事後対応」が目的になります。
リスク管理とは?事業継続計画(BCP)との違いを把握する
危機管理と似た用語に「リスク管理」という用語もありますが、リスク管理と事業継続計画(BCP)も対象範囲が異なります。ここでは、リスク管理の概要ならびに危機管理やBCPとの違いについて解説していきます。
リスク管理とはリスクを回避するためのもの
リスク管理は、英語ではRisk Management(リスクマネジメント)といい、発生しうる不確定事象を回避するための取り組みのことを指します。リスク管理の対象となるのは、想定内に発生しうる不確定事象です。リスク管理は、企業だけに限らず家庭でも行われるものです。
危機管理は想定外・想定以上の危機が発生したときに、被害を最小限に食い止める取り組みであるのに対して、リスク管理は想定されるリスクが発生しないようにするための取り組みです。この点が違いといえるでしょう。
リスク管理と事業継続計画(BCP)の違いは対象範囲
事業継続計画(BCP)はリスク管理の下位の領域であり、BCPはリスク管理の一部と見ることもできます。BCPは企業のリスク管理の一環として策定されますが、BCPとリスク管理は対象範囲が異なります。
BCPでは企業の事業継続に特化した範囲を対象とするのに対して、リスク管理では企業の事業継続に限らず、企業や組織に悪影響を与えるあらゆる事象が対象です。例えば、家庭で行われる防災対策などもリスク管理に含まれます。
まとめ
事業継続計画(BCP)を策定しておくと、緊急時に迅速な対応を取ることができます。迅速に対応することは、企業の社会的信用度アップにも繋がるでしょう。企業が事業を継続していくためには、リスク管理が重要だといえます。
社内の情報を一元管理するためには、クラウドERPの活用がおすすめです。情報を一元管理することでミス防止にも繋がり、企業活動に潜むリスクを取り除くことができるでしょう。
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