デジタル社会が進む中、日本における銀行はDX化にどう取り組めばよいのでしょうか。本記事では、そもそもDXとは何か、銀行がDX化するメリット、解決すべき課題を解説します。また、具体的な取り組み方法も成功事例とあわせてご紹介しますので、DX推進にお役立てください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
昨今、IoTやAIなどデジタル技術が発達、浸透してきたことに伴い、DXに取り組む企業が増えています。そもそもDXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、直訳すると「デジタルによる変革」になります。ITやデジタル技術をビジネスに活かすことで、市場での優位性を確保し、変わりゆく事業環境に対応することを指す言葉です。
銀行を始めとする金融業においても、取引のオンライン化やデジタルサービスへの移行が進んでおり、それらを推進する仕組みづくりが各企業に求められています。
銀行がDXを推進する重要性
では、銀行がDXを推進すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つの点を取り上げます。
需要の変化に応える
銀行が顧客をつなぎ止めておくためには、顧客のニーズを常に把握し、それに応えていく必要があります。しかし、顧客のニーズは社会や技術によって刻々と変化するものです。
近年はデジタル技術を駆使し、インターネットを通じた便利なサービスが次々と提供されています。顧客はそれらのサービスを日常的に利用しており、デジタルでの接触の方が急激に増えているのです。そこで、銀行はそうした変化に対応し、従来のアナログな方法ではなく、モバイルアプリなどを導入して、デジタルに注力する必要があると考えられます。
競争力が向上する
デジタル技術をビジネスにうまく導入させることで、サービスの質が高まり、より優れた顧客体験を提供できるようになります。顧客のニーズをつかんだ適切な対応により、顧客満足度が向上します。
そうなると既存顧客は、引き続きサービスを利用してくれるでしょう。また、口コミなどを通じて、新規顧客の取り込みにもつながります。これは、日々激化する市場において、競争力を向上させるために重要な戦略です。
テックジャイアントの参入に対応する
昨今は異業種の企業が金融業界へ参入する動きがよく見られます。特に、GAFAのGoogleやAppleなど、テックジャイアントと呼ばれる企業も金融業界へ本格的に参入することが見込まれており、注目を集めているのです。
すでに多くの利用者を抱えているこれらの企業が参入すれば、顧客はそちらへ流れてしまうリスクがあります。GAFAはビックデータを所有し、DX化も進んでいるため、競争は激化するでしょう。
既存の銀行が生き残るためには、間近に迫っているリスクをしっかり把握し、早急にDX化を進めることが不可欠です。
銀行におけるDXの課題
DX推進の重要性は理解できたとしても、実現するのは容易ではありません。銀行業界が抱えるDX化の課題には、どのようなものがあるでしょうか。
プロジェクトの難易度が高い
DX化へのプロジェクトとしては、レガシーシステムからの脱却が不可欠です。しかし、銀行という業界の特性上、金融に関わる様々な機能やサービスがうまく動かなかったり、停止したりすると、顧客の生活に甚大な影響を及ぼしかねません。また、トラブルを起こしてしまった銀行は「信頼できない」というレッテルを貼られ、顧客の流出を免れないでしょう。
IT人材が不足している
DX推進に取り組む企業の悩みとして、IT人材の不足が挙げられます。銀行も同様で、採用している現行のシステムについて正確な知識を持ち、開発や運用に携われる人材の確保が課題となっています。
ただ、DX推進プロジェクトは一部の組織で完結するのではなく、最終的には全社的に取り組まなければ効果を得られません。したがって、組織を横断的にまとめ、デジタル化ひいてはビジネスの根底から変革する取り組みを遂行できる人材を確保することこそが、DX化の最大のポイントと考えられます。
銀行のDXを推進するには
銀行がDX化を進めるとして、最初に思い浮かぶのは、顧客と直接接点のある組織、例えば営業部門などにおけるデジタル化かも知れません。しかし実際は、営業などフロント部門を支えるバックオフィス部門のデジタル改革も重要なのです。
では、具体的にどのような取り組みをすべきかを解説します。
デジタル人材を確保する
顧客のニーズに合ったサービスを提供するためには、システム全体を改修する必要があります。それらの業務を担うデジタル人材を積極的に確保できれば、スムーズにDX化を進められるでしょう。社外から即戦力として採用する方法以外にも、ある程度素質を持った人材を採用してから、社内で育成する方法が考えられます。
クラウドシステムを採用する
それぞれ独自の金融システムを構築してきたこと、またセキュリティ上の懸念から、現在もオンプレミスでのシステムを運用している銀行が多く見られます。しかし、DX化で大きなイノベーションを起こすためには、クラウド化も避けては通れないでしょう。
例えば、インターネットを介して様々な場所から社内システムへのアクセスが増える中、これまでの会社の内・外に分けてセキュリティを考える方法では限界があります。今後はゼロトラストの概念に基づき、最新のセキュリティに守られたクラウドシステムを採用することで、金融のデジタル化推進も検討すべきでしょう。
デジタル化を前提とした経営戦略を立てる
DX化は、現場部門からスモールスタートでデジタル化するのが一般的です。しかし、前述したように、DXは現場部門や、ある一部の部署や組織だけでは成り立ちません。まず、経営層がなぜDX化を進めるのかといった目的やビジョンを掲げ、経営戦略に盛り込んでビジネスモデルを立案することが何よりも重要です。新たな経営戦略を基に、徐々に社内のDX化を進めていけるでしょう。
銀行におけるDXの事例
ではここからは、銀行においてDX化を進め、成功した事例を2つご紹介します。
みんなの銀行
「みんなの銀行」とは、株式会社ふくおかフィナンシャルグループの100%子会社として、2021年5月にサービスを開始した話題のデジタル銀行です。自ら「まるでSNSのような場所」と定義しているように、顧客とフレンドリーな関係を築くことを目指しています。
手続きをよりシンプルにして、個人のニーズに合わせたサービスを提供するようにしています。具体的には、キャッシュカードや通帳は不要で、スマートフォンのアプリのみで口座開設、ATM入出金、支払い、振り込み、貯蓄、ローンなどを完結できるのが特長です。
会計システムとしてOracleのERPクラウドシステム「Oracle Fusion Cloud ERP」を導入しています。機能が90日ごとにアップデートされるため常に最新テクノロジーを享受でき、セキュリティも厳重に管理されています。これまでの銀行の枠組みにとらわれず、DXによって、ゼロから次世代の金融システムを構築した良い事例です。
SMBCグループ
新興の銀行だけではなく、既存の金融グループも大きな変革を実践しています。例えば三井住友銀行が属するSMBCグループはOracleと協業し、これまでの会計システムを見直し、「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)」を導入しました。グループ全体の経理業務効率化やコスト削減、統制強化を推進するためです。
SMBCグループのような一大金融グループであっても、将来にわたる経営を盤石にするため、ITを活用した大胆な変革を進めているのです。
まとめ
銀行では、システムの停止などのトラブルは信用失墜を招きかねないため、レガシーシステムからの脱却は大きな挑戦となります。しかし、テックジャイアントも金融業界に参入を試みている現在、DXを実行して競争力を高めることは喫緊の課題です。DX化すると、顧客満足度が向上し、複雑な作業も自動化できるためコストの削減にもつながるでしょう。
そのため、改めて経営戦略を立て、DX推進の中核となるデジタル人材を確保し、システムのクラウド化を進めることが重要です。OracleのERPシステムによる成功事例も参考にしながら、ぜひDX化への取り組みをご検討ください。
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