消費税の経過処置ってなに?わかりやすく解説

 2019.06.10 

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1989年4月にスタートした消費税制度は、1997年4月に3%から5%に、2014年4月には8%に、すでに2回に税率引き上げが行われています。そして3回目の税率引き上げが2019年10月1日に実施され、10%へと引き上げられる予定です。

前回の引き上げ時には「経過措置」がありましたが、今回も同様に経過措置はあるのでしょうか?

※今回の情報は2019年5月執筆時点での情報になります。今後、内容が変更になる可能性がございますので予めご了承ください。

経過措置ってなに?

「経過措置」とは、法令や規定を改めるにあたり、新しい法令・規定を限定的に緩和させて、新しい秩序への移行をスムーズの行うための措置です。2014年4月に実施された税率の引き上げでは、旅客運賃・電気料金・請負工事など一定の契約について経過措置が実施され、税率引き上げまでに取引された案件に関しては基本的に前税率が適用されるようになっていました。

そして2019年10月1日より施行される消費税率10%への引き上げでも、前回同様に経過措置が実施されることになる予定です。ただし、今回初めて設けられた経過措置や軽減税率の導入に伴い、経過措置の内容が一部修正されているものもあるため、注意が必要です。

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各カテゴリにおける経過措置の詳細

それではさっそく、経過措置の詳細について1つ1つ解説していきます。

1.旅客運賃等

施行日以後に行われる電車や航空機等にかかわる旅客運賃、映画完、競馬場、競輪場、美術館、遊園地等への入場料金のうち、2014年4月1日から2019年9月30日までの間に領収されるものについては旧税率が適用される。

2.電気料金等

継続供給契約にもとづき、施行日前日から継続して供給される電気、ガス、水道、電話、灯油にかかわる料金等で施行日から2019年10月31日までの間に、一定期間における使用料を把握し、これにもとづき料金が確定するものについては旧税率が適用される。

3.請負工事等

2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した工事等や製造にかかわる請負契約にもとづき、施行日以後に行われる建物や完成品の引き渡しについては旧税率が適用される。工事や製造の他に、測量、地質調査、ソフトウェア開発など請負や委任にかかわる契約で、仕事が完了するまで長期間を要するのが通例であり、かつ目的物の引き渡しが一括して行われるもののうち、仕事の内容につき相手方の注文が付されているものも対象になる。

4.資産の貸付

2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した資産の貸付にかかわる契約にもとづき、施行日前から引き続き貸し付けを行っている場合、施行日以後に行う資産の貸し付けは旧税率が適用される。

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5.予約販売に係る書籍等

2019年4月1日前に締結した不特定多数の者に対する定期継続供給契約にもとづき、譲渡する書籍その他の物品にかかわる対価の全部または一部を、2014年4月1日から施行日前に領収している場合は、施行日以後に行われる書籍その他の物品の譲渡について旧税率が適用される。

6.特定新聞

不特定多数の者に週、月その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞で、発行者が指定する発売日が施行日前であるもの(特定新聞)を、施行日以後に譲渡した場合については旧税率が適用される。

7.通信販売

通信販売の方法により商品を販売する事業者が、2019年4月1日の前に販売価格等の条件を提示した場合において、施行日前に申し込みを受けて提示した条件に従って施行日以後に商品を販売した場合については、旧税率が適用される。

8.家電リサイクル

家電リサイクル法に規定する製造業者等が、特定家庭用機器廃棄物の再商品化等にかかわる対価(リサイクル量)を施行日前に領収している場合については、再商品化等が施行日以後に行わる場合でも旧税率が適用される。

以上のように、経過措置は各カテゴリで条件が細かく決まっているので、事前にしっかりと確認した上で自社商品を整理し、経過措置が適用されるものを特定しておくことが大切です。

軽減税率制度とは?

軽減税率とは、さまざまな商品の消費税率が10%に引き上げられる中で、特定の商品の消費税率を8%のまま据え置くという法令です。「複数税率」とも呼ばれています。消費税率は「低所得への経済的配慮」を目的にして実施されるものであり、具体的には生活する上で必須になる食料品などの消費税率を低くします。

前回の税率引き上げにはなかった新しい経過措置の一種であり、施行されるのは消費税率の増税時期と同じ2019年10月1日です。恒久的に施行されるわけではありませんが、いつまで行うのか?終了の目安になる社会情勢の状態は?といったことについて、国税庁からは言及されていないため、いつ終了するかはまだ分かりません。

ちなみに軽減税率が施行されることで、税率の内訳は以下の通り変更となります。

区分

適用時期

旧税率

新税率

軽減税率

標準税率

 

消費税率

6.3%

6.24%

7.8%

地方消費税率

1.7%

(消費税額の17/63)

1.76%

(消費税額の22/78)

2.2%

(消費税額の22/78)

合計税率

8.0%

8.0%

10.0%

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軽減税率対象品目について

軽減税率の対象になる品目については、基本的に「所得に関係なく一定の価額を支払う必要がある品目」です。大きく分類すると「飲食料品」「一体資産」「新聞」となります。

(ア)飲食料品

軽減税率が最も広い範囲に適用されるのが「飲食料品」です。これは、商品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)を指し、食品と食品以外の資産があらかじめ一つの資産を形成し、または構成しているもの(一体資産:おまけ付きお菓子など)のうち、一定の要件を満たすものも含みます。

飲料食品は全ての飲食物を指し、「医療品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で規定されている「医薬品」「医薬部外品」、それと「再生医療等製品」を除く、食品衛生法に規定する添加物も含みます。

(イ)一体資産

一体資産とは「食品と食品以外の資産があらかじめ一つの資産を形成し、または構成しているもの」あるいは「一つの資産の価格のみが提示されているもの」を指します。一体資産の販売は、原則として軽減税率の対象外ですが、以下2つの要件を満たす場合は、飲食料品としてその全体が軽減税率の対象になります。

  • 一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下であること
  • 一体資産の価額のうちに当該一体資産に含まれる食品に関わる部分の価額を占める割合として、合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること

ちなみに、個々の商品の価額を内訳として提示している一体資産商品や、食品と食品以外の商品を「よりどり3品5,000円」といったように価額を提示し、顧客が自由に商品を組み合わせられるように販売している一体資産商品も対象外になります。

(ウ)新聞

ある要件を満たすことで新聞も軽減税率の対象になります。その要件とは、「一定の題号を用いて、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する、週2回以上発行される新聞の定期購買契約に基づく譲渡」を指します。

「週2回以上」というのは、通常の発行予定日が週2回以上とされている新聞を指します。よって、国民の祝日等、休刊日により週1回の発行になる週があったとしても、通常の週において2回以上発行されていれば、週2回以上発行せれる新聞に該当します。

いかがでしょうか?今年10月1日から施行される消費税率の引き上げでは、前回同様の経過措置と同時に、新しい制度の導入も実施されます。それらの内容を事前に確認しておき、正しく対応できるよう準備していきましょう!

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