DXの第一人者に聞くデジタルトランスフォーメーションの本質

 2020.05.25 

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昨今のビジネスシーンにおいて最もホットなトレンドになった「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。企業はデジタル技術の採用を前提として改革を推進することで、今までにないビジネス価値を手に入れられます。しかしながら、「DXとは単なる情報化・デジタル化ではない」ということを理解している人は少なく、経営そのものや文化の変革を伴うものだと理解し、「DXの本質」という名の手綱を握りながら取り組みを進めていくことがとても大切です。

本記事では、より多くの方にDXの本質を理解していただくために、日本のDX第一人者である東京通信大学の前川教授のインタビューより、現代企業が知るべきDXについてご紹介します。

詳細の資料はこちらよりダウンロードいただけます。

デジタルトランスフォーメーションの本質とは?【特別インタビュー】

DXの第一人者に聞くデジタルトランスフォーメーションの本質

DXで破壊的イノベーションを達成した世界の先進企業たち

1990年代から多くの企業が業務プロセスのシステム化に取り組み、競争力を高めてきました。しかし、DXとはそれらの取り組みとは一線を画したもので、これまでにないビジネスを数多く生み出し、市場に破壊と再構築(デジタル・ディスラプション)を引き起こしたことは、皆さんもご存じでしょう。

世界大手のSNS企業であるFacebookは自らコンテンツを生み出さずに世界最大のメディアに成長し、Airbnbは不動産を一切保有せずに世界最大の宿泊サービス事業を展開し、Alibabaは在庫を一切持たずに世界最大の小売事業者へと成長しています。同業に属するビジネスパーソンならば、それがいかに異常なことかを理解できるはずです。

前川教授はDXの現状について、「DXは、単なるデジタル化ではありません。過去のビジネスの情報化、デジタル化の延長で考えてはいけないのです。効率を追求するだけでなく、イノベーションを興す“攻めのDX”として考えなければなりません。商品・サービス・プロセスの情報化ではなく、 組織・ビジネス・企業文化の変革が必要なのです。この現代では、 変化できないことはリスクになりえます」と述べています。

DXによって変化すべき項目とは、経営者の役割、ビジネスの目標、組織文化など多岐にわたっており、文字通りデジタル技術を前提として企業そのものの変革を意味します。対して従来のデジタル化は既存の役割やプロセスを強化するにすぎず、DXとは全く違った取り組みということを理解しなければいけません。

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<DX推進前とDX推進後の変化>

 

DX推進前

DX推進後

経営者の役割

指示、命令、管理

ビジョン、リーダーシップ

目標

売上、利益、効率

市場創造、顧客満足

業務遂行方法

PDCAサイクル中心

OODAループ中心

開発タイプ

ウォーターフォール開発

アジャイル開発

組織文化

リスク回避、正確、確実

チャレンジ、変化、柔軟

DXによって業界形態そのものが変化した事例

デジタル・ディスラプションは、デジタル技術と革新的なビジネスモデルを融合することで市場に破壊的イノベーションを起こし、既存のプレイヤーを巻き込んで市場の破壊と再構築が行われる現象です。多くの場合は、高い技術力と創造的なアイディアによってビジネスを生み出せるベンチャー企業やスタートアップが市場に参入し、デジタル・ディスラプションを引き起こします。

その最も身近な例をご紹介します。

音楽ビジネス業界では古くからアナログのレコードからCDへとデジタル化が進み、CD-Rによる記憶メディアの普及、MDによる小型化などへと発展していきます。さらに、人と音楽との関わりを決定的に変えたのが2001年10月に発表されたアップル社のiPodです。音楽をデータ(MP3)として持ち歩くことや、インターネットで音楽を配信することが主流となるデジタル化がさらに促進します。ここまでの変化はあくまでも「メディア(器)の変化」に過ぎず、ここからDXが大きなうねりをあげて突き進んでいきます。

近年の音楽ビジネス業界で人気が高いのは、音楽を所持するのではなく、月々の定額料金を支払うことで膨大な量の音楽が聴き放題になる「定額ストリーミングサービス」です。iPodの登場とメディアの進化により、数万曲の音楽をポケットにしまったまま外出できる世界になりました。一方で、DXが推進されたことで今では数千万曲の音楽を好きな場所へと持ち出せるようになったわけです。

「所有から利用へ」、パッケージ販売からサブスクリプションビジネスへの変革はDXの典型例と言えます。

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DXが市場にもたらす7つの変革

DXの本質を掴みながらデジタル技術の搭載と革新的なビジネスモデルを発案することは、ビジネスを確実に大きく変化させます。企業ごとの特徴や事業内容によってその結果は様々なものの、前川教授はDXが市場にもたらす効果として7つの変革を示しています。

1. サイド・プラットフォーム

2サイド・プラットフォームの具体例を挙げると、1999年に開設された「@cosme(アットコスメ)」が挙げられます。日本最大級のコスメの口コミサイトである@cosmeは、口コミ投稿者が増えるほど閲覧者も増え、閲覧者が増えるほど口コミもまた増えるという2つのサイドからプラットフォームが支えられており、さらに実店舗との連携が強化されたことで化粧品業界共通のマーケティングプラットフォームへと成長しています。

2. シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーとは人・もの・場所・移動手段・お金といった個人や法人が所有する資産を、インターネットを介して貸借・売買・交換することで成り立つ経済の仕組みです。Airbnbはその好例であり、2サイド・プラットフォームの側面を持ちながらシェアリングエコノミーを取り入れたことで爆発的に市場を拡大しました。

3. 分解と組み換え(デフレーミング)

デフレーミングとは「伝統的なサービスや組織の枠組みを超え、内部要素を組み合わせたりカスタマイズしたりすることで、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供すること」だと東京大学の高木聡一郎教授が定義しています。DXによって市場を一度分解し、組み換えることでユーザーの想像や期待を遥かに超えるようなサービスが誕生します。

4. 個別最適化(デフレーミング)

もう一つのデフレーミングが個別最適化です。消費者一人ひとりに適した商品やサービス、コンテンツを届けることでビジネスに高い付加価値を生み出します。文部科学省が2018年5月に発表した「Society 5.0に向けた人材育成」では、「児童生徒一人一人の能力や適性に応じて個別最適化された学びの実現」という文言が記されており、これもデフレーミングの一種だと言えます。

5. サブスクリプション

前述した音楽ビジネス業界の定額ストリーミングサービスなど、本来モノとして提供していた商品をコトとしてサービス提供するビジネスモデルです。ただし、単に商品を月額化することではなく、商品が持つ価値に注目したサービタイゼーションを目指すことが重要です。

6. データドリブン

IoTが発展したように、今や膨大なモノがインターネットに接続され、この仕組みを活用した新しいビジネスがどんどん登場しています。さらに、IoTなどから収集したデータを起点として経営分析により、様々なデータドリブンの形が生まれています。

7. オートメーション

デジタルレイバー(仮想労働者)とも呼ばれているRPA(Robotic Process Automation)は現在、注目の高いDXです。一般的なオフィスの事務処理において、ミス無く休むことなく動き続けられることで、人が注力すべき分野を創造性が高い部分へとシフトしてくれます。

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DXの本質を掴もう!

いかがでしょうか?DXとは単なるデジタル化にあらず、デジタル技術と革新的なビジネスモデルを融合させ、新しい価値を世界にもたらし、既存のビジネスを大きく飛躍させる取り組みです。我々はまさにその真っ只中に立たされており、DXを積極的に推進できない企業は時代から淘汰されていく可能性があります。この機会に、自社のDXについて深く考えてみていただきたいと思います。

デジタルトランスフォーメーションの本質とは?【特別インタビュー】

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