日本が主要先進7ヵ国(G7)の中で47年連続、労働生産性が最下位になったというニュースが大きく注目されました。この状態が続くと、東京オリンピックが開催される2020年には50年連続で労働生産性が低い国として、非名誉なレッテルが貼られてしまうかもしれません。
本稿では経済産業省等が発行している資料から、中小企業の生産性に関する実態とその対策について解説していきます。
中小企業における生産性の実態
経済産業省が発行した「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」では、中小企業の生産性が製造業と非製造業において、ともに減少傾向にあることを紹介しています。1996年から2016年の11年間にかけて、製造業では3.2%減少し、非製造業では9.2%減少しています。
その一方では、大企業は製造業で13.4%、非製造業では8.1%増加しています。
そもそも「生産性」とは何か?
今回の主題である「生産性」とは具体的にどういう意味なのか?生産性とは経済学において生産活動に対する生産要素の寄与度、あるいは資源から付加価値を生み出す際の効率の程度のことを指します。
生産性を料理に例えると、如何に効率良く同じ味、同じ見た目の料理を完成させるかという指標です。同じ材料を使った同じ料理でも、それを作る人によって完成までのスピードと味に違いが生じます。その中でより早く、より良い味の料理を完成させることが、生産性が高いということになります。
ビジネスでは業種によってそこに投じる資源が異なるため、生産性は「従業員1人あたりに生み出す利益」で表されることが多くなっています。
[RELATED_POSTS]しかし、生産性が高い中小企業も…
業界全体として中小企業の生産性は減少傾向にありますが、その中でも生産性を向上させて利益を伸ばしている中小企業も存在します。生産性が減少しているとされている中小企業でも、製造業では約1割が、非製造業では約3割が大企業平均以上の生産性を実現しています。では、生産性の高い中小企業の特徴とは何でしょうか?
それは、成長投資に積極的に取り組んでいるという特徴です。生産性の高い中小企業は、設備投資/情報処理・通信/従業員一人あたりの人件費においていずれも大企業平均以上の数値をマークしています。つまり生産性の高い中小企業は、設備投資やIT投資等に積極的であり、一人あたりの賃金が高い傾向にあります。
その中には大企業以上の高収益体質を実現している企業も存在し、中小企業だから生産性が低くなるというわけではなく、現状の課題を正確に捉え、解決に向けて積極的に成長投資している中小企業の生産性が大きく向上していることになります。
中小企業のIT投資について
中小企業の生産性を向上させるためのカギが成長投資だとすれば、その中で特に重要なのが「IT投資」でしょう。近年、IT技術の発展によって新しいビジネスモデルが続々と誕生していたり、それによって新興企業等があらゆる市場で大きな破壊を生み出していたり、IT技術のインパクトを日々肌で感じていることかと思います。
日本の中小企業は世界に比べてIT投資に遅れを取っていると言われており、やはりIT投資の課題が浮き彫りになっています。では、中小企業はどういったIT技術に投資していくべきなのでしょうか?
これを理解するために中小企業のITシステム老朽化/不足感について説明します。
IT投資に積極的ではない中小企業では、現在老朽化が著しく進んでいます。何年も前に導入したITシステムでは当然、現代のビジネス問題を解決することが難しく、日々変化するビジネススピードに対応することも難しくなっています。しかしながら、中小企業にはITシステムをメンテナンスするための技術者が不足しており、ITシステム運用をアウトソーシングするにも多大なコストがかかるため、IT投資を積極的に行えないという大きな問題があります。
こうしたIT投資問題を解決するには何が必要なのでしょうか?
中小企業に必要なクラウドとERPとは?
中小企業のIT投資先として、今注目されているのが「クラウド」と「ERP(Enterprise Resource Planning)」です。
クラウドとはいわゆる「クラウドコンピューティング」のことであり、インターネットを通じてシステム構築に必要なインフラを調達したり、システムそのものを利用したりすることを指します。
クラウドを採用する利点はITシステムの運用負担を大幅に軽減できることと、IT技術者のいない企業でもエンタープライズ級のシステムを構築できるという点にあります。クラウド型の業務システムは、クラウドベンダーが運用しているシステムをインターネット経由で利用するため、利用企業がかかわる運用業務はありません。
システムアップデートやセキュリティ対策はクラウドサービス提供事業者が行いますし、ITシステムのアカウント管理等を実施するだけで大規模なシステムも構築できてしまうため、特別な知識やスキルを持ったIT技術者は不要です。
一方、ERPとは「統合基幹システム」と呼ばれており、経営活動に欠かせない基幹システムや情報系システムの数々を統合した総合的ITシステムです。会計/生産/販売/在庫/調達/人事/顧客といったそれぞれの情報を総合的に管理し、1つのデータベースで情報を扱うことで、各システムでの情報活用を得意としています。
たとえばERPがあることで今まで発生していた2重のデータ入力業務を排除したり、企業のビジネスプロセスを、組織全体を俯瞰しながら設計し、業務効率を大幅に向上したりと、中小企業の生産性を向上するための要素が詰まっています。
近年では、マルチチャネル化が進みBtoB企業でもEC事業に参入する中小企業が多いことからECシステムを統合したOracle NetSuiteなどのERPも多く、企業のビジネスプロセス全体を再設計することが可能になっています。
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中小企業に人気のクラウドERP
中小企業のIT投資先として注目されているのが、クラウドとERPを統合した「クラウドERP」です。もちろん業務の効率化を考えた場合には、ERP以外の投資も考える必要がありますが業務の効率化や見える化を推進することを考えるとERPでしっかりと事業基盤を整えることが重要であると言えます。
クラウドERPは、クラウドベースでERPを導入し、システムの導入障壁を下げつつ運用負担を大幅に軽減しているため、クラウドERPは中小企業にとって生産性向上の大きな武器になります。
さらに、クラウドERPはユーザーベースでの月額料金体系が基本なので、投資費用が見えやすく、予算計画が立てやすいという特徴もあります。中小企業が抱える生産性問題を解決するためにも、IT投資先としてクラウドERPを検討してみましょう。
その際は、中小企業の商習慣に合ったクラウドERPを選択し、信頼のおける導入パートナーと共にERPを設計していくことをおすすめします。
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