販売管理費は、企業の営業活動に必須となる経費を指します。商品・サービスの提供に関係して発生する費用で、その特徴から販売費と一般管理費に分けられます。販売費と一般管理費にはそれぞれ何があたるのか、その勘定科目と内容、また販売費率の計算方法や活用方法などを解説しています。
販売管理費とは?販売費及び一般管理費とは?
販売管理費は正しい名称を「販売費及び一般管理費(はんばいひおよびいっぱんかんりひ」と呼びます。また、もっと短く「販管費(はんかんひ)」と表現することもあります。
具体的にどういった費用かといいますと、「商品の製造・販売にかかった費用のうち、販売活動に必要な費用や企業全体の管理活動にかかる費用」が販売管理費です。
販売費とは
分かりやすくパン屋さんに例えてみましょう。
パンを作って売る(製造・販売)ためには、大まかに次のような費用がかかります。
- パンの材料になる小麦粉の仕入れ費用
- 店舗経営するためのテナント賃貸費用
- 店舗の水道費用と光熱費
- パンを作る人の給与
- パンを売る人の給与
このうち「販売活動に必要な費用や企業全体の管理活動にかかる費用」は最上部に紹介したパンの材料費以外ということになります。
さらに販売活動にかかる費用のことを指す販売費に該当するのは、上記のうちでは「パンを作る人の給与」です。商品・サービスの販売に大きな影響を及ぼす販売費には、ほかにも広告手数料、商品の発送費、営業を目的とした業務に必要な交通費などが分類されます。
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一般管理費とは
一般管理費は、「販売管理費」のうち、企業の一般管理業務にかかわる費用を指します。企業が利益を得るために費やした金銭のなかで、販売に関係しないさまざまな費用が一般管理費に該当します。
販売費の場合は販売に直接関連する費用に限られるため、景気や業績などに左右されて毎月金額が変動します。対して一般管理費の金額は、販売状況に影響を受けません。同じ人件費でも管理業務に携わる総務や経理部門にかかわるもの、賃借料、水道光熱費など、一般管理費には多くの費用が含まれ、企業の営業活動を滞りなく進めるための費用として一定の金額が毎月必要になります。
例えば建設業などの工事の場合、工事価格は工事の原価と一般管理費などの費用を合わせた金額が設定されます。ここでいう一般管理費とは、事務所建物や備品の減価償却費、給与や水道光熱費など管理業務にかかわる費用のことです。
建設業者の中には、入札しやすくするため一般管理費を下げて工事価格(入札価格)を抑える企業があります。ところが、一般管理費を下げ過ぎてしまうと作業員の労働条件が悪化するのは明らかです。国土交通省はそういった問題を防ぐために、工事費を計算する場合に一般管理費等の比率を一定以上にしなければならないと定めています。
具体的な販売管理費販売管理費の内訳・勘定科目一覧
商品を製造するために、直接的にかかる費用の多くは販売管理費には該当しません。そのため原材料や部品の仕入れ費用というのは、「仕入」の科目に入ります。では、具体的な販売管理費とはどういった費用でしょうか?販売費と一般管理費に分けて解説します。
【販売費】
販売費の主な勘定科目と内容には以下のものがあります。
- 給与手当:営業部門の従業員の給料や手当
- 法定福利費:営業部門の従業員給与手当に関係する社会保険料
- 販売手数料:委託業者や販売代理店などに支払う手数料、販売時に用いる決済システム利用料
- 広告宣伝費:テレビCM、WEB広告、チラシ発行代、DM料金などの広告にかかる費用
- 旅費交通費:営業のためにかかる交通費、ガソリン代など
【一般管理費】
一般管理費の主な勘定科目と内容は以下の通りです。
- 給与手当:経理など管理部門の従業員の給料や手当
- 法定福利費:管理部門の従業員給与手当に関係する社会保険料
- 採用費:新入社員を雇入れる際に人材紹介業者などへ支払う手数料
- 通信費:インターネット通信料、社内ネットワーク通信料、電話代、郵便料など
- 消耗品費:文房具代、コピー用紙代など業務に使用する消耗品にかかる費用。使用可能期間が1年未満もしくは取得価額が10万円未満の備品代など
- 地代家賃:事務所・工場などの家賃、駐車場の地代
- 減価償却費:建物、備品などの減価償却費用
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人件費は売上原価に区分される場合もある
1つ注意していただきたいのは、販売管理費のうち人件費にあたる給与・賞与・法定福利費・福利厚生費などについてです。役員や従業員に対するこれらの費用は、会計ルールでは対象となる従業員などの業務に応じて費用項目が異なります。
製造業を例に挙げてみると、工場などの製造部門に従事している従業員の人件費は「製造費用」に区分され、製品の製造原価に含められて最終的には「売上原価」として処理されます。また、売上原価に集計される人件費は通常「労務費」に分類されるので販売管理費ではありません。
これに対し、営業部門など販売活動に従事している従業員の人件費は販売管理費に分類されますし、企画部門・総務部門・経理部門などの本社部門に従事している従業員の人件費も販売管理費に分類されます。ちなみに役員の人件費は「一般管理費」に計上されますが、販売管理費と一般管理費は損益計算書上「販売及び一般管理費」として表示されます。
では、1人でいくつかの役割をこなしている従業員の人件費はどう分類されるのでしょうか?たとえば製造業務・研究開発業務、それと本社部門に従事している従業員を想定すると、理論としてはそれぞれの活動に従事した割合(時間基準など)に応じて人件費を売上原価または販売管理費に配分することになります。ただし、基本的には製造業務に従事しているか、稀に研究開発などを行うというケースでは、実務上は全額を売上原価に分類することもあります。
販売管理費は何を示す?販売費及び一般管理費は何を示す?
決算書の中で販売管理費が出てくるのは「損益計算書」です。これは、「会社が儲かっているか?損しているか?」を表す決算書であり、以下のように販売管理費が出てきます。
このうち「本業の販売活動から得て利益」を表すのが営業利益であり、販売活動で得た収益(売上高)から売上原価と販売管理費を引くと、営業利益が算出されます。つまり、販売管理費は「会社がいくら儲かったか?」を示すために欠かせない費用項目なのです。
また、営業利益に対して販売管理費がどれくらいかかっているかを見ることで、企業が適切に投資しているかどうかを判断できます。たとえば広告宣伝費をより多くかければ売上高は増えるかもしれませんが、売上高に対する営業利益の比率(利益率)は下がってしまうかもしれません。
なので、販売管理費をいくらかけてもよい、というわけではないのです。営業利益に対して販売管理費が高いと感じれば、その企業は無駄なコストを支払っている可能性があります。
販売費率の計算・分析方法
販売費率とは、売り上げに対する販売費および一般管理費の比率です。販売費率から現在の売り上げを出すためにどれだけの費用がかかっているのかを明確にできます。販売費率の数値が小さいほど経費の無駄をなくして効率よく利益を出していると判断できます。販売費率の数値は、利益向上のため経費を見直す際に利用できます。
【販売費率の計算方法】
- 販売費率(%)=販売費および一般管理費÷売上高×100
※一般管理費を除く販売費のみの場合 - 販売管理費率(%)=販売費÷売上高×100
販売費率は上記の計算方法で算出が可能です。
例えば、A社の売上高が3000万円、販売費が600万円の場合、販売費率は20%と算出できます。仮にB社が売上高1000万円で販売費に100万円費やしていれば、販売費率は約10%となり、B社のほうが効率的に費用を回していると判断できるのです。
販売費率の平均値は業種によって大きく異なります。2020年でいえば、最も高い業種で医薬品の573.4%、最も低い業種として陸運の9.7%と大きな開きがあります。また、サービス業の場合には人件費や広告宣伝費が多くかかるため、販売費率は高い傾向にあります。対して製造業では商品製造に必要な仕入れなどのコストの比重が大きくなるため、販売費率は低くなります。
さらに、従業員の人数が多い規模の大きな企業ほど販売費率は低い傾向にあります。このことから規模の大きな企業のほうが経営効率化を進めていると見ることもできます。
上記のことから、他の企業と比較する場合には同じ業種・規模の企業と比較することが大切です。また自社の二期間(前期・後期など)の数値を比べることでも、販売管理費における問題点や課題、改善点などの分析が可能です。
会計処理を楽にするERP(Enterprise Resource Planning)とは?
販売管理費について知ると、決算書を見るだけで企業の経営状況を把握したり、それによってさまざまなことを判断できたりするため、この機会に販売管理費に対する理解をぜひ深めてください。
会計処理の観点から考えると、費用項目が多く複雑な販売管理には、会計の際の仕訳・集計・加工・レポートが大変な区分でもあります。この会計処理を効率化することで、決算書作成期間を短くし、より正確な決算書作成に向かうことができます。
ここでおすすめするのは、そんな会計処理や販売管理費をリアルタイムに算出できるERPについてです。ERPとは、企業の経営活動に欠かせない基幹系システムを統合し、さらに複数の情報系システムも統合した総合的なシステム環境です。ERPのパッケージ製品またはクラウドサービスを導入することで、大規模なシステム環境を短期間で構築することができます。
ERPのメリットは、各基幹系システムと財務会計システムが密に連携されているため、会計処理に必要な情報をあらゆる場所から収集し、それを自動的に加工してレポートとして発行できるという点です。そのため、従来はExcelや個別の会計ソフトで行ってきた会計処理を大幅に効率化し、決算時期に訪れる繁忙期の忙しさをかなり削減することができます。
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もちろん、タイムリーに会計情報を収集・加工・レポートすることが可能なので、リアルタイムに経営状況を可視化することもできます。ERPを活用することで正確な情報にもとづいて経営活動を行っていくことができます。
会計処理効率化について考える際は、ぜひERPをご検討ください。その際にはクラウドERP であるOracle ERP CloudやOracle NetSuiteなどをご検討ください。
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