管理会計を実施しても、そこから得られる指標を理解できなければ、会社の意思決定に活用することはできません。では、経営指標にはどのようなものがあるでしょうか?一般的には以下のような指標があります。
<経営指標の例>
- インタレスト・カバレッジレシオ
- キャッシュ・コンバージョン・サイクル
- 限界利益率
- 固定長期適合比率
- 固定比率
- 在庫回転率
- 自己資本比率
- 自己資本利益率(ROE)
- 総資本回転率
- 総資本利益率(ROA)
- 損益分岐点売上高
- 当座比率
- 売上高利益率
- 売上債権回転率
- 流動比率
- 労働生産性
- 労働分配率
以上の経営指標をすべて追っていけば、より正しい経営判断を下せるようになります。しかしながら、こんなにたくさんの経営指標を日常的に確認することは、現実的ではありませんね。そこで本稿では、管理会計において最も重要な4つの指標をご紹介します。
管理会計の代表的な指標を理解すれば、会社は必ず成長します。まだ管理会計に取り組んでいない方は、取り組んでいるが効果を実感できないという方は、ぜひ参考にしてください。
管理会計の代表的な4つの指標
前述した経営指標のすべては、会社にとって重要な情報です。しかしながら、それらの指標をリアルタイムに追うことは難しいので、ここでは4つの指標に限定してご紹介します。その指標とは以下の通りです。
- 限界利益率
- 損益分岐点
- 労働分配率
- キャッシュ・コンバージョン・サイクル
①限界利益率
限界利益というのは、売上高から変動費を引いた数値を指します。管理会計では経費を「変動費」と「固定費」に分類します。前者は売上に連動して増減する経費であり、後者は売上に連動しない固定的な経費のことです。仕入や外注費などは売上に応じて変化するので、変動費に分類されます。
一方、人件費や家賃などはたとえ売上がゼロでも発生するものなので、固定費に分類されます。たとえば小売業界やなどは売上原価と変動費はイコールなので、売上総利益も限界利益も同じになるはずです。ただし、製造業などは仕入れた原料だけでなく、製造や建設にかかわって人件費や減価償却費などの固定費も売上原価に含める必要があります。なので、売上原価と変動費はイコールで繋がりません。売上総利益も限界利益も異なります。
そこで、どちらの指標を追えばよいかというと、売上総利益よりも限界利益の方がより迅速に経営予測が行えます。
そして限界利益率は「(売上高-変動費)÷売上高×100」で計算することができます。この限界利益率の動きを月次で確認し、それらが想定外に変化しているケースでは売上単価の下落や変動経費単価の上昇などの問題が起きている可能性があります。さまざまな要因が考えられますが、その状態が長期化すると売上から十分な利益が取れなくなっていることを意味します。
②損益分岐点
損益分岐点は、営業利益がゼロになる地点を表しています。有名な指標なので、知っている方も多いでしょう。損益分岐点を計算するための式は「固定費÷限界利益率」となります。損益分岐点とはつまり、会社が利益を出していくために最低限必要な売上高です。
たとえば、原価20円(変動費10円、固定費10円)で、販売価格100円のチョコレートを1,000個作った場合、何個目から利益が出るのでしょうか?答えは「111個目から」です。このように、損益分岐点を理解すると、商品やサービスをどれくらい販売したら利益が出るのか?を理解できるため、管理会計においてとても重要な指標です。
会社は経営状況を正確に把握し、販売戦略を立て直すことができるのですから、事業ごとに常に損益分岐点を把握することがかなり大切です。
[RELATED_POSTS]③労働分配率
労働分配率とは、ビジネスで生じた付加価値に占める人件費の割合を示したものです。会社の生産性を測るには、会社が生み出した付加価値がどこで使われているかを見ることが大切です。そこで活用されるのが労働分配率であり、付加価値の何%が人件費に分配されるかを分析することができます。
労働分配率は「人件費÷付加価値×100」で計算できます。たとえば、会社が生み出した付加価値が1億円、給与が4,000万円、法定福利費が600万円、厚生費が200万円だとすると、労働分配率は「4,800万円÷1億円×100」で48%ということになります。この会社では、付加価値に人件費が占める割合は48%ということです。
では、労働分配率はどれくらいが適正数値なのでしょうか?中小企業庁が発表したデータによると、全業界における労働分配率は平成26年で68.62%、平成27年で68.32%。平成28年で68.58%となっています。
参考:中小企業庁『平成29年中小企業実態基本調査速報(要旨)(平成28年度決算実績)』
業界ごとに労働分配率の平均は異なりますが、おおむね70%前後というのは適正だと言えるでしょう。会社にとって、労働分配率は低ければ低いほどよいのかといえば、そうではありません。この値が著しく低い場合は、従業員に対して十分な給与を還元できていない可能性が高く、現場に不満が溜まっていることが少なくありません。
株主や投資家はそうした数値も十分に確認した上で投資可否を決定するので、低すぎるのも問題です。逆に、労働分配率が高過ぎると利益確保が難しく、従業員に還元はできているものの、新しい投資を行うことが難しくなります。
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④キャッシュ・コンバージョン・サイクル
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)というのは、会社が商品や原材料などを仕入れることによって発生した支払債務を支払ってから、その後の売上により発生した売上債権が回収されるまでにかかる日数を表します。計算式は「売上債権回転日数÷棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数」です。
たとえば商品を仕入れて30日後に代金を支払い、仕入れから40日後に販売でき、その販売代金がその30日後に振り込まれたと仮定します。この場合、商品を仕入れてから販売代金を改修するまでに70日間かかっています。商品を仕入れてから代金を支払うまでが30日間なので、支払いから入金があるまでの40日間、回収までのライムラグが生じます。会社はその分だけ、資金繰りが難しいということです。
こうしたタイムラグを表すキャッシュ・コンバージョン・サイクルを短くすることができれば、その分だけ回収までの時間が短くなりますから、資金繰りが改善されます。キャッシュ・コンバージョン・サイクルを計算してみて長いようであれば、会社のキャッシュフローが悪化している可能性があるので注意しましょう。
いかがでしょうか?管理会計を実施するにあたり、以上4つの重要指標に着目してみてください。これらを十分に理解すれば、必ず会社の成長に繋がるような何かが見えてくるはずです。
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