2019年10月1日より、いよいよ消費税率が8%から10%に引き上げられる予定です。それと同時に施行される「軽減税率」について、知っているようで知らない、という方が多いのではないでしょうか?ERPや会計ソフトなどの担当者だけでなく、賢く買い物をするために、そして小売店等に与える影響を知るためにも、ここで解説する軽減税率についてぜひ目を通していただきたいと思います。
※今回の情報は2019年5月執筆時点での情報になります。今後、内容が変更になる可能性がございますので予めご了承ください。
軽減税率とは?
軽減税率とは、さまざまな商品の消費税率が10%に引き上げられる中で、特定の商品の消費税率を8%のまま据え置くという法令です。「複数税率」とも呼ばれています。消費税率は「低所得への経済的配慮」を目的にして実施されるものであり、具体的には生活する上で必須になる食料品などの消費税率を低くします。
この法令が低所得者に対して有効なのかという点については賛否ありますが、一部の商品の消費税率が保たれることで、生活での出費が抑えられることは確かでしょう。
施行されるのは消費税率の増税時期と同じ2019年10月1日です。軽減税率は経過措置(例外)という位置づけなので、恒久的に施行されるわけではありません。ただし、いつまで行うのか?終了の目安になる社会情勢の状態は?といったことについて、国税庁からは言及されていないため、いつ終了するかはまだ分かりません。
軽減税率の対象品目と、そうでない品目
それでは、軽減税率の対象となる品目についてご紹介します。
(ア)飲食料品
軽減税率が最も広い範囲に適用されるのが「飲食料品」です。これは、商品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)を指し、食品と食品以外の資産があらかじめ一つの資産を形成し、または構成しているもの(一体資産:おまけ付きお菓子など)のうち、一定の要件を満たすものも含みます。
飲料食品は全ての飲食物を指し、「医療品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で規定されている「医薬品」「医薬部外品」、それと「再生医療等製品」を除く、食品衛生法に規定する添加物も含みます。
一方で、軽減税率の対象外になる飲食料品は主に酒類、医療品、医療部外品、再生医療等製品です。さらに、「外食」も軽減税率対象外になります。ここいう外食とは「飲食に用いられる設備(テーブル、椅子など)がある場所において、飲料食品を飲食させる役務で提供する飲食店」を指します。これは言い換えると、テイクアウトや宅配等で購入する飲食料品は軽減税率の対象になるということです。
また、「ケータリング及び出張料理等」についても対象外になります。これは、相手方が指定した場所において行う加熱、調理または給仕等の役務を伴う飲食料品のことを指します。要するにフードコート等で提供される飲食料品も軽減税率非対象になるということです。
(イ)一体資産
一体資産とは「食品と食品以外の資産があらかじめ一つの資産を形成し、または構成しているもの」あるいは「一つの資産の価格のみが提示されているもの」を指します。一体資産の販売は、原則として軽減税率の対象外ですが、以下2つの要件を満たす場合は、飲食料品としてその全体が軽減税率の対象になります。
- 一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下であること
- 一体資産の価額のうちに当該一体資産に含まれる食品に関わる部分の価額を占める割合として、合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること
一体資産に軽減税率が適用される要件を要約すると、「商品価額が1万円以下であり、かつ価額全体のうち食品の価額が占める割合が3分の2以上である」です。たとえば9,000円で販売されている一体資産商品ならば、そのうち6,000円以上が食品の価額でなくてはいけない、ということです。
ちなみに、個々の商品の価額を内訳として提示している一体資産商品や、食品と食品以外の商品を「よりどり3品5,000円」といったように価額を提示し、顧客が自由に商品を組み合わせられるように販売している一体資産商品も対象外になります。
(ウ)新聞
意外と知られていないのが、ある要件を満たすことで新聞も軽減税率の対象になることです。その要件とは、「一定の題号を用いて、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する、週2回以上発行される新聞の定期購買契約に基づく譲渡」を指します。
「週2回以上」というのは、通常の発行予定日が週2回以上とされている新聞を指します。よって、国民の祝日等、休刊日により週1回の発行になる週があったとしても、通常の週において2回以上発行されていれば、週2回以上発行せれる新聞に該当します。
従って、スポーツ新聞や業界紙、日本語以外の新聞等についても週2回以上発行される新聞で、定期購買契約に基づく譲渡であれば軽減税率の対象になります。ちなみにコンビニエンスストア等で購入する新聞に関しては軽減税率対象外です。
この他、細かいところでいえば「学校給食」や「有料老人ホーム等で行う飲食料品」の提供に関しては軽減税率の対象になるので、消費税は8%のままです。
[RELATED_POSTS]企業が軽減税率の対応するためには?
軽減税率は消費者に対する影響ばかりが報道・議論されていますが、企業にとっても法令適用による影響は少なくありません。特に飲食業や小売業の場合は商品によって消費税率を管理しなければいけませんし、その他の業種においても消費税率10%への対応を実施する必要があります。
そこで、軽減税率に対応するために、以下のポイントについてチェックしてみましょう。
Point1.軽減税率精度の内容を確認する
- 軽減税率制度の実施時期、軽減税率の対象品目、仕入税額控除のための帳簿及び請求書等の記載事項、納税事務(税額の計算)
- 事業者の準備を支援する仕組み:「軽減税率対策補助金」
Point2.対応が必要な事項の把握と準備を開始する
- 影響が生じる事務の確認及び業務手順の見直し
- 現行の帳簿及び請求書等の記載の仕方から区分記載請求書等保存方式への対応
- 会計システム等の導入・改修・入替え
- 軽減税率制度に対応したレジの導入・改修及び受発注システムの改修・入替え(「軽減税率対策補助金」の活用の検討)
- 軽減税率対策補助金の交付申請手続き(一部ベンダーなどによる「代理申請制度」の利用が可能です。)
Point3.売上・仕入商品の税率区分を整理する
- 売上・仕入商品に係る税率区分(軽減税率の対象取引の有無)の確認
[SMART_CONTENT]
Point4.業務手順の見直しやPOSレジ・システムの操作確認をする
- 日々の商品管理や販売管理方法の見直し(商品マスタの見直し)
- 税率区分に応じた経理処理の見直し(経理処理マニュアルの整備)
- 納品書や請求書などの帳票の見直し(取引先との連絡・調整)
- 買換え又は改修したレジ・受発注システムの操作確認
Point5.制度の実施に向けた本格的な準備をする
- 商品ごとの税率区分等をシステムに登録(商品マスタの整備)
- 値札の付け替え、価格表示の変更準備
- 従業員への研修(説明会等への参加)、店頭などでの消費者向けの周知(店頭ポスターなど)
軽減税率に正しく対応するためにも、内容確認をしっかりと行った上でさまざまな準備を進めていきましょう!
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