皆さんは、何のために予算管理を実施していますか?もしも「予算編成を組み、期中の予算目標を決めるため」と考えているならば、すぐにでもその考えを改める必要があります。なぜならそれは手段であり目的ではないからです。予算管理の目的はいたってシンプルであり、それは「予算目標を達成するため」です。
従って、「前年実績と比較した予算目標を10%アップする」などの短絡的な予算管理では、いつまでたっても達成可能な予算目標は立てられません。だからといって、簡単に達成できそうな予算目標を立てるのも、経営陣が納得しません。では、どうすればちょうよい予算目標を立てられるのでしょうか?
本稿では、予算管理の目標の立て方についてご紹介します。
予算目標を立てる時にやってはいけない3つのこと
最初に、予算目標を立てる際にやりがちな過ちから、やってはいけないことについてご説明します。それが以下の3つです。
- 予算目標=売上高という単一的な目標の設定
- 前年対比だけに偏ってしまう
- 数値の平均化から予算目標を立てる
「これの何がいけないの?」と考える方も多いでしょう。いずれの方法も予算目標を立てるにおいて一般的に使われています。しかし、これらの方法には問題があり、達成可能な予算目標を立てることが難しくなってしまうのです。
1.予算目標=売上高という単一的な目標の設定
営業が予算目標立てる際に、重視しがちなのは売上高です。確かに、売上が無ければ利益は確保できませんし、営業最大の使命は「より多くの売上を確保すること」になります。
しかし、この売上高という単一的な目標設定だけ行うと、「売上が高ければよい」という考え方が浸透し、利益は薄くても売上の大きい商品から積極的に売り込むようになってしまいます。当然です。売上で評価される世界ならば、効率よく売上が取れる商品を販売したくなるものです。
利益が上がらなければ持続的な経営は不可能ですし、新しい投資もできません。こう言うと「利益が確保できていれば売上の絶対額は低くてもよいのか」と考える方も多いでしょうが、その通りです。本質的なことを言えば、会社にとって必要なのは売上ではなくて利益です。
営業の予算目標に利益予算を加えたり、その他にもさまざまな指標を加えることで、より達成可能で現実的な利益目標が立てられるようになります。
2.前年対比だけに偏ってしまう
次年度の予算編成を行うにあたり、前年対比という基準で予算を考えることが多いでしょう。前年対比は非常に明快で扱いやすく、重要な指標であることは変わりありません。しかし、そこにはあくまで「自社」という視点しか含まれていないことに注意が必要です。
たとえば、会社が積極的に投資している主力事業において、市場全体が大きく成長している場合、自社が設定した予算目標を達成したとしても、競合他社に負けているという事態が少なくありません。予算目標は達成したものの、市場シェアは低下しましたでは冗談にもなりません。そうなると、そもそも何のために予算管理があるのかという意義が失われます。
さらに、前年対比では直近1年間の結果だけを基準にすることになるので、これもまた正確ではありません。予算管理のために過去の予算実績を見る際は、少なくとも5年間は遡って数字を見る必要があります。
過去5年間にわたった予算実績の流れと、市場規模の拡大性などを含めて考えることが、予算管理においてとても大切です。
2.数値の平均化から予算目標を立てる
予算目標を立てる際に、何らかの数値を平均化することが多いでしょう。そうして算出した平均値は特定の事象を知るのには便利な反面、使い方を間違えると思わぬ落とし穴があることを忘れてはいけません。それは、多様性に富んだデータを1つの数値に集約させることで、各データの個性が埋没することです。
たとえば、全国でチェーン展開している飲食貨車において、店舗ごとの地域格差を考慮せずに全国一律のノルマを設定したらどうなるでしょうか?あるいは、顧客が持っている潜在需要などを試算せずに、会社の規模だけで売上予測を立てたらどうなるでしょうか?
適切な予算目標を立てることはできませんし、機会損失という大きなダメージを受ける可能性もあります。従って、平均化した数値をもって予算目標を立てることは、絶対にやってはいけないことの1つです。
[RELATED_POSTS]予算目標の立て方
それでは、具体的な予算目標の立て方についてご紹介します。
複数の指標を用いて予算目標
予算目標を大まかに分類すると「利益予算」「売上予算」「原価予算」「経費予算」の4つに分類されます。
①利益予算
期中において達成すべき利益目標を指します。たとえ売上予算を達成できなくても、高い利益率をただき出して利益予算を達成すれば結果オーライなので、細かい利益予算計画が欠かせません。
②売上予算
会社が利益予算を達成するためには、1つの指標として売上予算が欠かせません。会社にとっての主な収入は商品やサービスを販売した際に発生する売上であり、売上予算とは売上目標と討議です。予算管理では、売上予算を達成するための進捗管理が欠かせない上に、市場動向などの影響を強く受けるため柔軟性も必要になります。
③原価予算
商品を製造・販売するのと、サービスを提供するのには必ず原価がかかります。たとえば製造業では売上予算を達成できるだけの商品を製造する必要があり、それに応じて原価予算も変動します。さらに、原価予算を低く設定し、達成することで利益予算の達成に貢献するため、とても重要な予算項目です。
④経費予算
会社が売上を上げるためには原価以外に経費もかかります。主に人件費、交通費、その他人材にかかわる諸々の費用や、オフィス賃料や光熱費など、会社を運営するために必要な費用も含まれます。経費は利益や売上に間接的に関係するものなので、中長期目線での計画が欠かせません。
予算目標を立てる際は、まずこれら複数の予算項目を決定して、総合的な予算編成を行うことが大切です。
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トップダウン方式とボトムアップ方式の組み合わせ
予算目標を立てる際は、経営陣が総合予算を決定した部門ごとに配賦していくトップダウン方式と、部門からの積み上げによって総合予算を決定するボトムアップ方式があります。どちらも一長一短あるため、一般的には2つの方式を組み合わせることが大切です。
大まかな総合予算を経営陣が決定し、部門責任者等がボトムアップで予算目標を調整する。時間と手間はかかりますが、適切な予算目標を設定するのに欠かせない工程です。効率化を図るには、予算管理ツールを使ってみましょう。
単一システムで予算情報を入力することで、各部門が入力した情報を瞬時にシステムへと反映できますし、予算目標の調整も素早く行えます。そうして予算目標を素早く立てることで、より現実的な予算目標を立てることができるでしょう。
予算目標は会社の経営を決定するほど重要な指標です。これまで単純に考えていた予算管理に対して、より慎重に考えて予算目標立ててみてはいかがでしょうか?
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- 経営/業績管理
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