システムインテグレーター(SIer)のプロジェクト原価について

 2019.12.24 

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製造業において原価管理が重要であるように、SIer(システムインテグレーター)でも原価管理が重要です。ただし、SIerではものづくり企業のように原料や部品調達にかかるコストはありません。プロジェクト原価にかかるコストといえば労務費や外注費、それと経費です。本稿ではこのプロジェクト原価について、その基礎と最適化に向けた方法をご紹介します。

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プロジェクト原価の重要性

経済活動を行う上で管理すべき要素として、売上・原価・利益の関係が欠かせません。それぞれの要素は「売上-原価=利益」という式が成り立つため、企業の利益を上げるには「売上を上げる」もしくは「原価を下げる」という2つの方法があります。

SIerにおいて売上の向上には顧客との折衝が必要になるため、多くの企業はまず原価管理活動に時間を割きます。原価管理活動は売上を上げるための施策より一見地味な作業に思えますが、実は非常に利にかなった利益向上の施策です。

たとえば、年間売上高100億円で平均利率が3%の会社では、年間3億円の利益があります。もし売上が10%増加すると売上高は110億円になり、利益は3億3,000万円になります。では原価を10%低減するとどうなるか?利率は13%に上がるので、年間利益は13億円になり、売上を10%増加するよりも圧倒的な利益の確保が可能になります。

これはあくまで一例ですが、売上を上げようとするよりも、プロジェクト原価を低減する方が楽な気がします。

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プロジェクト原価の要素

では、SIerが管理すべきプロジェクト原価の要素とは何でしょうか?大きく分類すると直接費と間接費に分けられます。

直接費

プロジェクト原価の中心になる要素は労務費・外注費・経費です。直接費とは、プロジェクトに直接かかわるこれらの費用を指します。

労務費

プロジェクトに直接参画する従業員の人件費(基本給与、割増手当、賞与手当、退職金、法定福利費など)

外注費

プロジェクトの協力会社や協力人材に委託する外注費用

経費

プロジェクトに直接参画する従業員の交通費や通信費など

製造業等では直接費の原価要素として材料費が加わりますが、SIerにおいてその割合はかなり低いものになります。

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間接費

プロジェクトに直接的なかかわりはないものの、間接的にかかる費用を間接費といいます。それらの費用は原価部門の間接費用として、各プロジェクトに一定に配賦されるものです

間接労務費

開発部門要員の研修時間、部門会議時間などで、各プロジェクト開発に直接関与しない人件費や間接部門の人件費

共通費

開発部門(原価部門)で共通に発生する家賃、水道光熱費など

一般的なプロジェクト原価は以上となります。経営全体で見るとそれ以外にも発生する費用は販管費(販売費および管理費)などがあります。

プロジェクト原価の計算方法

次に、SIerがプロジェクト原価を計算する上で欠かせない、原価計算軸についてご紹介します。

個別原価計算

個別生産品ごとに製造指図番号やプロジェクト番号を割り当てて原価を求める方法です。SIerなどのサービス業全般でも採用されており、プロジェクト別個別原価計算とも呼ばれます。

総合原価計算

大量生産品1単価あたりの原価を求める方法であり、大量生産を行う多くの製造業で採用されています。

 

全部原価計算

製造にかかった費用をすべて原価として含める原価計算方法です。

標準原価計算

社内管理目的で製造にかかった費用の一部だけを原価として計算する方法です。

 

実際原価計算

製品やサービスの原価を実際原価で計算する方法です。

標準原価計算

製品やサービスの原価を標準単価で計算する方法です。単位あたりの標準直接労務費に設定しておき、生産量や工数をかけて計算します。

プロジェクト原価を管理するメリット

プロジェクト原価を管理することでSIerが得られるメリットについてご紹介します。

メリット1. プロジェクト収支をコントロールする

プロジェクトにおいて、どれくらいの収益があっていくらコストがかかるのか?これを明確に把握されているプロジェクトは決して多くありません。赤字プロジェクトを生み出す原因であり、プロジェクト原価を管理することで収支バランスを把握し、プロジェクトの採算性を把握できます。プロジェクト収支をコントロールすることで、利益率の高いプロジェクトを目指すことができます。

メリット2. プロジェクト原価に応じたプロジェクト運用

プロジェクト原価を管理することで、プロジェクト収支を把握できます。原価状況に応じたプロジェクト運用が可能になることで、プロジェクトの採算が危うくなったとしても、すぐに修正し対策を立てられます。

メリット3. 業務とプロジェクト原価の関連性を把握する

プロジェクト原価管理を実施していると、プロジェクトにおける業務と原価の深い関係性が見えてきます。プロジェクトでは労務費が原価の大部分を占めるため、どの業務にいくらの原価がかかっているかを把握することで、システム構築等を展開する企業にとって適正コストを把握するきっかけになります。

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SIerのプロジェクト計算のやり方

SIerにおけるプロジェクト計算のやり方は、「費用別計算→部門別計算→プロジェクト別計算」の順に行います。

Step1. 費用別計算

一定期間中に部門で発生した原価要素を労務費、外注費、経費などの費用別に分類し計算する方法です、各プロジェクトにおける直接の原価か否かにより、直接費または間接費に分類します。

Step2. 部門別計算

原価要素を原価部門別に分類して計算します。先ほどの表別計算で間接費に分類された原価は、当該の原価部門に固有の費用(部門個別費)か、すべての原価部門に共通する費用(部門共通費)なのかを判断します。部門個別費はそのまま当該部門へ集計し、部門共通費は一定の標準ルールにもとづき各部門に配賦します。

Step3. プロジェクト別計算

費用別、部門別のプロジェクト計算を実施したらプロジェクトごとに原価を集計します。プロジェクトにかかる原価はそのまま集計し、間接費は一定の基準で各プロジェクトに配賦していきます。

プロジェクト原価管理にERPを!

いかがでしょうか?SIerではプロジェクト原価をしっかりと管理することで、プロジェクトにかかる収支バランスをコントロールしたり、赤字プロジェクトを排除することが可能です。ただし、プロジェクト原価を管理することは容易ではありません。

そこでおすすめするのがERP(Enterprise Resource Planning)です。ERPはプロジェクトに欠かせない基幹系システムが統合されており、それらのシステムから生成されるデータを一手に集約した上でプロジェクト原価を管理することができます。プロジェクト原価管理をERPによって効率化することで、リアルタイムで収支バランス等をコントロールし、その情報をプロジェクトに反映できます。

プロジェクトの運用状況及び経営状況をリアルタイムに可視化することで、プロジェクト利益率の拡大と情報管理をもとにした経営促進を図りましょう。

原価管理システムの選び方

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