労働生産性を確認するための生産性分析

 2019.04.16 

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「労働生産性」というキーワードが、何かと注目されています。政府主体で推進している働き方改革では、必ず労働生産性という言葉が使われますし、企業の中にも「労働生産性の向上」をスローガンに掲げているところも最近多くなっています。

その背景にあるのは、働き方改革および海外諸国と比較した際の日本の労働生産性の低さです。OECD(Organization for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)が毎年発表している、OECD加盟36ヵ国の労働生産性ランキングにおいて、日本は長年低い水準にあります。

時間当たりの労働生産性はOECD加盟36ヵ国中20位、就業者1人あたりの労働生産性はOECD加盟36ヵ国中21位となっており、データが取得可能な1970年以降、主要先進7ヵ国中では最下位の状況が続いています。

参考:労働生産性の国際比較 2018 - 公益財団法人日本生産性本部

本稿では、この労働生産性を企業独自に確認する方法についてご紹介します。労働生産性を把握することにより、会社が投資に対してどれくらいの付加価値を生み出せているかが把握できますので、経営事業計画に盛り込むことで、より付加価値の高いビジネスを推進できるようになるでしょう。

労働生産性とは?

労働生産性とは、事業に投じた労力に対してどれくらいの付加価値が生み出せたかを表す指標です。ちなみに、設備投資によって生まれた付加価値を測る指標を「資本生産性」と呼びます。

労働生産性=ビジネスに生まれた付加価値÷投入した労力

資本生産性=ビジネスに生まれた付加価値÷投入した資本

では、先ほどから度々用いている「付加価値」という言葉の意味は何でしょうか?

付加価値とは、企業の中で新しく「生み出された価値」「追加された価値」のことです。

製造業では仕入れた原材料を加工するなどして、新しく製品を創り出します。仕入れにかかった金額よりも、製品として販売する金額が高くなるのは、単に利益を創出するためではなく、そこに「加工」「製造」「組み立て」といった新しい価値を生み出すための労力がかかっているからです。これにより、原材料は製品として生まれ変わり企業の中に付加価値が生まれたことになります。

より少ない労力で、より多くの付加価値を生み出す、それが「労働生産性が高い」という状態です。

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会社の労働生産性を知ろう

労働生産性は当然ながら企業によって異なります。自社がどれくらいの労働生産性かと測定してみて、現状を知ることから始めてみましょう。労働生産性は前述のように[ビジネスに生まれた付加価値÷投入した労力]で計算できます。

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時間あたりの労働生産性を測定したい場合は[付加価値÷総労働時間]で、就業者1人あたりの労働生産性を測定したい場合は[付加価値÷従業員数]で計算します。その前に、まずは付加価値を計算する必要があります。付加価値の計算方法は、引き算で行う「控除法」と足し算で行う「加算法」があります。

1.控除法

控除法で付加価値を計算するには、商品の販売金額と仕入れや外注などで取引先に支払った金額の差額を付加価値であると考え、計算します。

付加価値=売上高-外部購入費

外部購入費とは、材料費、部品購入費、運送費、外注加工費などを指します。

2.加算法

加算法で付加価値を計算は、「付加価値は製品やサービスの生産過程で積み上げられていくもの」という考え方に基づいています。

経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用(支払い利息)+租税公課

売上高

外部購入価値

付加価値

経常利益

人件費

賃借料

減価償却費

金融費用

(支払い利息)

租税公課

ちなみに、売上高に占める付加価値額の割合を「付加価値率」と呼びます。

付加価値率=付加価値額÷売上高×100

付加価値率が高いほど、その企業で新しく生み出された価値の割が大きいことになります。

付加価値を計算することができたら、労働生産性を測定することができます。たとえば控除法によって付加価値を計算した場合の、労働生産性の測定方法は次のようになります。

売上高400,000,000円

外部購入価値280,000,000円

従業員数20人(内フルタイム12人、パートタイム8人)

パートタイム従業員の平均労働時間はフルタイム従業員の0.5を平均とする

従業員数=12+8×0.5=16人

付加価値=400,000,000円-280,000,000円=120,000,000円

付加価値率=120,000,000円÷400,000,000円×100=30%

従業員一人あたりの売上高=400,000,000円÷16人=25,000,000円

労働生産性①=120,000,000円÷16人=7,500,000円

労働生産性②=25,000円×30%(0.3)=7,500,000円

この設例から算出された「就業者1人あたりの労働生産性」は高いのか?低いのか?

OECDが発表したデータと比較してみると、日本の就業者1人あたりの労働生産性は84,027 ドルとなっています。日本円に換算すると現在のレートでは約9,270,000円となっているので、平均よりも低いと考えられます。

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労働生産性の何が重要なのか?

ここまでの解説の中で、「そもそも、労働生産性って何で知る必要があるの?会社が問題無く経営できていれば、わざわざ知る必要はないんじゃない?」と思われた方も多いかと思います。確かに、わざわざ労働生産性を測定しなくても健全に経営している企業は存在しますし、労働生産性を知ったからといってすぐに職場環境が改善されたり、経営課題が明確になるわけではありません。

しかし、会社の労働生産性について知り業界平均や競合他社と比較することで、投入した労力に対してどれくらい効率良く付加価値を生み出せているかを把握できます。「商品力はある、営業も優秀な人材が揃っている、それなのになぜあの会社より利益率が低いのだ!?」といった疑問があれば、それは労働生産性が低いことに起因しているかもしれません。

労働生産性を知るメリットは他にもあります。たとえば中小企業等経営強化法にもとづく日本の制度には「経営力向上計画」という様式があります。この様式に沿って経営力を向上させるための計画書を作成し、経済産業局等に申請し認定を受けることで、固定資産税の軽減措置や各種金融支援などを受けることができます。

この「経営力向上計画」では、労働生産性の伸び率を企業の業績向上を表す主要指標の1つとして位置づけているため、労働生産性を知ることで国からの支援を受けられるというメリットがあるのです。

また、現状として労働生産性が低い場合、なぜ低いのか?と問題を突き詰めていくことで、結果的に重大な経営課題に気づくことになり、効率良く経営改善を進めていくことができます。労働生産性という言葉が注目されているのは、単に日本の労働生産性に低さが話題になっているだけではなく、多くの企業が労働生産性を知ることの重要さに気付き始めているからなのです。

皆さんの会社でも、この機会に労働生産性について知ってみてはいかがでしょうか?

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