調達と購買の違いとは?

 2020.01.17 

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たとえば、製造業において製品を生産するためには原材料や部品が欠かせません。多くの製造業はそれらの資材を別の会社から仕入れて生産に投入します。そうした仕入業務のことを「調達」や「購買」と言いますが、この2つの言葉は意味合いが似ていることから、混同している人も多いのではないでしょうか?本記事では、混同されがちな「調達」と「購買」の違いを明確にしていきたいと思います。業務上のコミュニケーションエラーを起こさないためにも、ぜひ参考にしてください。

「調達」と「購買」の違い

調達の意味は「必要なものを整え、それを要求者に届けること」です。一方、購買の意味は「必要なものを買い入れること」となります。言葉だけ見ても、調達と購買には明確な違いがありますね。では、製造業において具体的にどういった違いがあるかを整理しましょう。

調達

生産計画の中で、生産に必要な原材料や部品を、必要になる時までに仕入れて、供給可能な状態にすることを指します。あるいは人材や設備など生産能力に関わる部分を生産計画に従って整えることを調達と呼ぶこともあります。

つまり、調達は購買を含む広い業務概念であり、特定のものを生産計画までに整えることだけを指しているわけではありません。

購買

購買は文字通り、生産に必要な原材料や部品などの資材を買い入れることを意味しています。JIS(日本興業企画)では購買を「生産活動に当たって、外部から適正な品質の資材を必要量だけ、必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系」と定義しており、調達に比べると限定的な意味を持つ言葉です。

要するに、生産計画に沿って必要な量の資材を必要なタイミングに供給できるように、仕入先から買い入れておくことを意味します。ただし、企業によって購買は資材の買い入れだけに限らず、備品などの間接資材を購入する仕事も含まれます。

参考資料:『Z 8141 : 2001』(https://kikakurui.com/z8/Z8141-2001-01.html

このように、混同されがちな調達と購買には明確に違いがあり、それぞれの意味を正確に理解していないと何らかのトラブルに発展する可能性も考えられます。

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さまざまな業種において、企業は今の経済状況に対応するため、コスト削減やリスク管理の方法を模索しています。この課題に対し、ITテクノロジーへの適切な投資、特に調達部門における取引業務の自動化を行い、取引先との取引ルールを順守しつつ、調達データを集計できるシステムが導入できれば、会社全体の支払総額を抑えて取引先に関するリスクを予見できるようになります。なぜ調達業務を変えることが企業にとって「必要かつ真っ先に取り組むべきこと」なのかをお伝えします。

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「調達」に含まれる幅広い仕事

ここで、調達の仕事内容についてもう少し掘り下げて解説します。前述したJISでは、調達の仕事の中には、さまざまな業務があることを示しています。購買を生産計画通りに進めるための「購買管理」もその中の1つです。では、調達には他にどのような仕事が含まれているのでしょうか?

外注管理

生産活動にあたり、内外製の最適分担のもとに原材料や部品を安定的に外部から調達するための仕事です。自社技術と生産能力の不足分を補完して、要求品質を満足させ、コスト効率が良いことが外注の要件となります。

製造委託

自社の仕様によって資材および製品を、外注先へ製造依頼または加工依頼する仕事を指します。

一貫外注

部品の全工程の加工を外注することを意味します。

購買管理

生産活動にあたり、外部から適切な品質の資材を必要量だけ、必要なタイミングまでに経済的に調達するための手段です。主に仕入先開拓と選定、取引契約、発注管理、価格管理、原価低減活動、納期管理、品質管理、検収支払管理、仕入先管理、リスク管理、購買業務規程の整備など幅広い仕事が含まれています。

購買計画

生産計画と購買方針にもとづき、購入する品目と数量、納期、予算などを決める仕事を指します。

国際購買

生産活動で必要とする原材料および部品について、世界市場から最適な機能、品質、価格および納期で調達する仕事です。

発注

仕入先に対して原材料や部品の納入を依頼する仕事です。事前に、かつ予約的に注文品目や量の概算を知らせることを内示発注と呼びます。

分散発注

同一品目を2社以上に発注する仕事を指します。事故または災害による納期遅延のリスクを減らすと共に、発注先間の競争力強化努力が期待できます。

受入検査

仕入先から資材を受け入れる段階で、受け入れの可否を一定の基準のもとで行う検査のことです。

以上のように、調達には実にさまざまな仕事が含まれています。企業によってはこれらの仕事を分業化しているケースや、調達部門が一任しているケースがあります。

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仕入先の評価基準について

調達でも購買でも、避けて通れない仕事が「仕入先の選定」です。企業の生産計画通りに背生産を進め、かつ高い品質を維持するためにはそれに見合った生産能力を持ち、一定の品質が担保されている会社から資材を仕入れる必要があります。たとえ同じ資材を生産している会社であっても、生産能力や品質は会社ごとに異なるため、自社にとってベストな仕入先を選択する必要があります。その基準となるのが、「QCD(品質・予算・納期)」です。

(1) 品質(Quality)

新しい仕入先を開拓するにあたり、最も重要になるのがやはり品質でしょう。自社に品質基準に達しない資材を調達してしまうと自社製品の品質低下を招くことから、品質基準を参考にしながら慎重に検討していきます。

また、「毎度依頼しているから大丈夫だろう」と既存の仕入先を信頼しきることは、新しい部品の仕入を開始する際に禁物事項です。抽象的な理由で判断するのではなく、部品ごとに品質保証部門と掛け合って、仕様書を作成してもらうことで品質を担保するのがとても重要になります。

仕入先の品質を見分けるには、資材そのものを見るだけでなくどのような生産プロセスを辿っているのか、自社へ届くまでの梱包仕様、品質管理体制など細部まで確認することが大切です。

(2) 予算(Cost)

生産計画を達成するためには仕入先に完璧に近い品質を求めることはもちろん、予算を限りなく抑える必要があります。もちろん、仕入先も慈善事業ではなく営利組織なので、品質に見合った費用を要求することは間違いありません。

ここで重要になるのが、仕入先が価格交渉に応じるか否かです。自社としては可能な限り予算を押さえられる方が製品価格や利益に反映させられるので、積極的に価格交渉を行いたいところです。その際は一方的に条件を突きつけるのではなく、仕入先の条件も聞き入れながら協議を進め、互いの納得がいく形で交渉することが大切です。

(3) 納期(Delivery)

大量生産方式の場合、毎度決まった資材を仕入れるケースが多いため、納期が安定しやすくなります。一方。個別受注生産の場合、扱う部品の種類がその時々で変化するので、慎重に調達・購買の計画を立てなければ納期が間に合わなくなる可能性があります。

そのため、納期に合わせて滞りなく生産が行われるかどうかを仕入先に確認し、自社と連携しながらの生産が可能かどうかも協議します。仕入先の生産能力が不足している場合は、分散発注なども検討していきましょう。

仕入先の評価基準は調達・購買担当者に依存すると、担当者ごとの基準が異なり一定のQCDが保てなくなる危険性が高いことから、調達・購買部門全体で標準化された評価基準を設けるようにしましょう。

これまで調達や購買の違いについて意識していなかった方は、この機会に違いを意識してみてはいかがでしょうか?

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日本を代表する航空会社である全日本空輸株式会社 (ANA)。同社では間接材を中心としたグループ調達業務の可視化とガバナンス強化を図るため、SaaS 型の調達管理システム「Oracle Procurement Cloud」を導入した。

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