企業のキャッシュフローを円滑にし、計画的な資金繰りを実行するためには「売掛金管理(債権管理)」の徹底が欠かせません。いつ?どこから?いくら?入金される予定なのかを徹底管理し、必要に応じて請求業務を行ったりして、経営資金を確保します。これと同じくらい大切な管理業務が「支払管理」です。本稿では、この支払管理について解説していきます。
支払管理とは?
企業が計画的に経営活動を行うためには、それに伴う資金が必要です。しかし、企業の資金は流動的なものなので、必要な資金が自然と整っているという状況はまず在りえません。となれば、資金をコントロールする必要があります。支払管理とはそのコントロールの一種です。
企業が過去の取引においた支払った実績や内容を記録すると共に、今後の支払予定をしっかりと管理することで、経営活動に必要な資金をスムーズに準備できる環境を整えます。支払い管理はいわば「買掛金管理(債務管理)」でもあります。
[RELATED_POSTS]支払管理ができないとどうなる?
企業の資金源ともなる売掛金管理を徹底できていても、支払管理まで徹底できているという企業はそう多くありません。では、支払管理ができないとどういった問題が発生するのでしょうか?
1.支払いが遅れる可能性がある
支払管理では将来的な支払いの金額や期日等も管理します。それによって支払業務を滞りなく済ませることができますが、支払管理ができていないと期日通りに支払いできない可能性があります。
2.取引先からの信用を失う
期日通りの支払いができないと、取引先から信用を失うことに繋がります。場合によって取引を中断されてしまう可能性もあるため、信用を維持するためにも支払管理は欠かせません。
3.将来的に必要な資金が分からない
取引における支払い、設備投資、人材投資など企業には常に経営活動を実行するための資金が必要になります。いつ?どこに?いくらの?資金が必要になるかを把握していないと、肝心な時に支払える資金が無いという状況になります。反対に、支払管理を徹底していれば将来的に必要な資金を把握できるため、計画的な経営活動実行が行えます。
4.取引金額の妥当性が分からない
過去の取引における支払い金額や支払い内容が記録されていないと、新しい取引における取引金額の妥当性を把握できません。特に新規取引先との取引の場合は、相場よりも高い金額設定を受け入れてしまう可能性があります。
5.価格交渉が難しくなる
原価率低減のために取引先と価格交渉をするにあたり、過去の支払い金額や支払い実績がきちんと管理されていないと、価格交渉が不利になることがよくあります。
このように、支払管理ができていないことでの問題はたくさんあり、中には経営活動に悪影響を与えるような深刻な問題もあります。
支払管理のやり方
では、支払管理はどのようにして行えばよいのでしょうか?一般的にはExcelで「支払管理台帳」を作成し、支払管理を行います。支払管理台帳とは、企業が今後行うべき支払い業務についての情報を1つにまとめた台帳です。そこには、下記の項目を記録していきます。
- 管理番号
- 取引先社名
- 取引内容
- 取引区分
- 取引金額
- 支払期日
- 支払方法
- 支払い先
- 勘定科目
- 支払い済みチェック
ひとまずこれらの項目を記録すれば、支払管理台帳を作成して支払管理を徹底することができます。シンプルに管理するためには、「支払い待ち案件」と「支払い済み案件」に分けて2つのシートを作成し、支払い待ち案件シートから支払いが完了した案件を、支払済み案件シートに移動させることで、管理を行いやすくしましょう。
支払管理台帳を活用する上で1番大切なことは、利用ルールを明確にして各担当者がそれを徹底することです。たとえば「取引先社名」を記入するにあたり、「日本オラクル株式会社」「日本オラクル㈱」「OracleJapan」といったように同じ社名でも異なる様式で記入してしまうと、名寄せの際に苦労したり、支払い待ち案件の取りこぼしが起きてしまったり、過去の取引金額把握が難しくなってしまいます。そこで、支払管理台帳を活用するにあたって下記のようなルールを設定しましょう。
- 管理番号のつけ方
- 取引先社名の記入様式
- 取引内容の記入方法
- 取引区分の定義
- 取引金額の記入方法(税込みor税別、消費税表示)
- 支払期日の記入方法
- 支払い先の管理方法
- 勘定科目の仕訳ルール
- 勘定科目の仕訳表作成
- 支払い済み案件の移動
- Etc
支払管理台帳の活用では、徹底してルールを守ることが大切なので、多少ガチガチに固めらえたルールで運用する方が良いでしょう。企業の資金や信用にかかわる部分ですので、慎重すぎるくらいで調度良いのが支払管理です。
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支払管理をシステム化で対応する
企業・事業が成長し、取引数が多くなるほど支払管理は複雑になります。また、毎月大量の支払い業務が発生している状況において、Excelで作成した支払管理台帳のみで管理を実施していると、支払い漏れ等が発生しやすくなり取引先からの信用低下になってしまいます。そこで、支払管理のシステム化について検討する必要があります。支払管理がシステム化されると、どのような効果があるのでしょうか?
1.アラート機能で支払い漏れが無くなる
支払管理をシステム化することにより、直近の支払案件に対するアラートを行うよう設定することで、支払期日通りに支払いを完了することができます。これによって取引先からの信用を維持できるでしょう。
2.ネットバンキング等と連携して自動的に支払いを行う
構築するシステムによっては、ネットバンキングやクレジットカードと連携することによって、支払期日になると自動的に支払いを行うよう設定できます。支払い方法によっては自動化が行えるますので、支払い遅延を防ぐことができます。
3.支払管理ルールを徹底できる
システムで入力する管理項目は、極力ドロップダウンリスト方式で入力できるようにすることで、支払管理ルールの徹底が行えます。勘定科目を自動的に入力するようにも設定できます。
4.過去の取引情報抽出が簡単に行える
支払管理のシステム化によって過去の取引情報を簡単に抽出できます。
5.過去の記録した情報を活用できる
過去に記録した取引情報を抽出することで、それを新しい取引に活用したり、価格交渉時の情報として活用したり、様々な活用方法があります。
支払管理にERP(Enterprise Resource Planning)を
支払管理のシステム化にあたりおすすめするのがERP(Enterprise Resource Planning)です。ERPは、複数の基幹系システムを統合しているため、各システムからの情報を一元的に管理し、支払管理の自動化を実現することができます。ERPによって管理工数が劇的に削減されるため、業務効率アップや滞りない支払業務を行ったりと様々なメリットがあります。支払管理を徹底したいと考える際は、ぜひERP活用をご検討ください。
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