オフコンの歴史は1961年、カシオが開発した「TUCコンピュライター」、日本電気が開発した「パラメトロン計算機NEAC1201」から始まったとされています。1974年には「特定電子工業及び特定電子工業振興臨時措置法」が制定され、それまで超小型電子計算機と呼ばれていたコンピューターが「オフィス・コンピューター(オフコン)」として正式な名称が誕生しました。それ以降、国内外の様々なメーカーがオフコンを開発し、多くの企業のビジネスを根底から支えてきました。
時代が変わり、1990年代よりオープン化が加速します。Unix、Linuxといったオープン系OSからWindowsやMacに発展し、ソフトウェア開発の技術もどんどん標準化されていったことで、今ではオフコンを見かける機会がめっきり少なくなりました。しかし現在でも、オフコンを使い続けている企業は一定数存在します。
本記事でご紹介するのは、現在もオフコンを使っている企業がリプレース先としてクラウドを選択するメリットは何か?です。オープン化の最先端とも言えるクラウドの利点とは何なのか。その概要と合わせて解説していきます。
そもそも、クラウドとは何か?
クラウドとは「クラウド・コンピューティング(Cloud Computing)」の略です。この言葉が一般化されたのは2006年当時、GoogleのCEO(最高経営責任者)を務めていたエリック・シュミット氏の発言がきっかけとされています。その後、NIST(米国立標準技術研究所)によってクラウドは次のように定義されています。
“クラウド・コンピューティングとは、ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービスなどの構成可能なコンピューティングリソースの共用プールに対して、便利かつオンデマンドにアクセスでき、最小の管理労力またはサービスプロバイダ間の相互動作によって迅速に提供され利用できるという、モデルのひとつである。このクラウドモデルは可用性を促進し、5つの基本特性と、3つのサービスモデルと、4つの配置モデルによって構成される。”
引用:The NIST Definition of Cloud Computing
要約しますと、クラウドとは企業がITシステムを構築するにあたって必要となるネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション(ソフトウェア)、それらに付随するサービスをインターネット経由で利用できる製品のことです。
たとえば、皆さんは普段何気なくインターネットにアクセスして色々なサービスを利用していますが、そのほとんどはクラウドという形態で提供されているものです。マイクロソフト社のOffice 365、グーグル社のGmailなどインターネット上で利用できるサービスはすべてクラウドと言えましょう。
ちなみに前述したようなサービスは、本来ソフトウェアとしてサーバーやパソコンにインストールする製品をネット経由で提供しています。そうしたクラウドのことを「サービスとしてのソフトウェア」と称して「SaaS(Software as a Service)」と呼びます。これ以外にも「PaaS(Platform as a Service)」と「IaaS(Infrastructure as a Service)」と呼ばれる、大きなカテゴリが存在します。
PaaS=サービスとしてのプラットフォーム
アプリケーション(ソフトウェア)の開発やシステム運用に必要なOS・ミドルウェアといった基盤(プラットフォーム)をインターネット経由で提供するサービスです。
IaaS=サービスとしてのインフラストラクチャー
すべてのシステム環境の基礎となるネットワーク、サーバー、ストレージといった基礎(インフラストラクチャー)をインターネット経由で開発するサービスです。
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長年オフコンを運用してきた企業では、膨大なノウハウや情報資産がそこに蓄積されています。さらに、基幹業務がオフコンに依存しているケースが大半であり、既存の業務プロセスにおいて使い勝手のよい状態が維持されていることから、オフコンのオープン化を決断するには大きな勇気が必要かもしれません。昨今ではセキュリティ事件が多発していることからも、閉じられた世界で運用可能なオフコンを使い続けたいというニーズは少なからずあります。
しかし、オフコンとはメーカー独自に開発されたCPU・OS・ソフトウェア・ハードウェアなどで固められているため、昨今のICT(情報通信技術)の急速な発展と大きくうねりを上げるグローバル化に対応できないという難点があります。つまり、拡張性と柔軟性が著しく低いのです。
これに加えてオフコンで使用されるCOBOLやRPGといった開発言語を扱えるIT人材が徐々に少なくなっています。このためシステムメンテナンスが属人化している企業が大半で、場合によっては内部構造を理解しているIT人材がおらず、システムメンテナンスを完全にメーカーに依存しているケースもあります。そのメーカーですら、オフコン開発から手を引きつつあり、古い技術がどんどん淘汰されています。
メーカーによるサポートや技術革新が期待できない以上、オフコンを使い続けることは慣れ親しんだ環境を手放すことよりもビジネスリスクが非常に高いのです。
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オフコンからクラウドへ移行するメリット
オフコンのリプレース(刷新)としてさまざまな選択肢が用意されています。その中でクラウドを選択するメリットは何なのでしょうか?そこにはオフコンや一般的なオープン化にはない大きな利点があります。
メリット1. システムが非常に高い柔軟性を手にする
クラウドはネット経由でソフトウェア・プラットフォーム・インフラストラクチャーを契約し、利用できます。すべてのリソースはユーザー企業の思いのままです。ビジネスの成長に合わせて拡張することも、衰退に合わせて縮小することも可能です。また、その柔軟性の高さにより最新のデジタル技術を簡単に実装して、オフコンからは考えられないAI導入もグッと近づきます。
メリット2. IT管理費の削減で戦略的な投資を実現する
クラウドは提供事業者が運用するシステムをネット経由で利用するサービスです。
従って、ユーザー企業は物理的なシステムメンテナンスに係わらなくても、オフコン以上に高度なシステム環境を実現できます。IT管理にかかる費用を削減すれば、戦略的なIT投資に予算を割くことが可能で、先進的なデジタル企業へと変貌できます。
メリット3. BCP(事業継続計画)の一環として利用できる
災害・事故・テロなどの不慮な出来事はいつ起こるかわかりません。そうした中でも事業を継続させ、従業員や企業自体を守るためにはBCP策定が必要です。クラウドはシステムやデータが遠隔に保管されているので、BCPの一環として機能します。クラウドを選択するだけで、自然とBCP策定やセキュリティ対策になるのです。
以上のように、クラウドにはさまざまなメリットがあります。もちろんクラウドを選択することでのデメリットもありますが、それらを解決するための対策もまた用意されています。現在もオフコンを使い続けている場合は、この機会にクラウドへの移行を検討されてみてはいかがでしょうか?
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