会計業務を効率化するために、会計ソフトを導入することが一般化されています。現在は日本国内においてさまざまなソフトが販売されており、企業の特性に合わせて選択することができるようになりました。会計ソフトの導入を検討中で、同時に海外進出や現地法人の設立を考えているのであれば、現地の商習慣などを考慮する必要があるだけでなく、多言語・多通貨に対応している会計ソフトの選択が必須になるでしょう。ここでは多言語・多通貨に対応した会計ソフトの必要性についてお伝えし、いくつかの海外対応の会計ソフトをご紹介します。
多言語や多通貨に対応できる会計ソフトの必要性
グローバル化が進み、多くの企業が海外進出を実現しています。海外における企業活動は、さまざまな問題に対応していかなくてはいけません。そのひとつに会計業務が挙げられます。企業は正しい会計を行う必要があります。
なぜ企業にとって正しい会計業務が必要なのか、確認してみましょう。企業が正しい会計業務を行う理由には大きく分けて2点あります。
まずひとつめは、納税のために日々のお金の流れを記録していく、ということです。法律として正しい申告をすることが義務付けられているため、適切な会計処理ができていなければ、脱税などの疑いをかけられることになりかねません。企業に対する信頼問題にも発展していきます。基本的に企業が支払う税金は利益に対してかかるため、常に正しい決算処理をする必要があります。
もうひとつは、企業の成績表を作成し、健全な企業運営を行うためです。企業経営者は会社の状況を常に把握していなければなりません。企業を成長させるためには、業績が今どのような状態になっているのか、お金の流れを目に見える形にして問題を洗い出し、今後の方向性を決定していかなくてはいけません。会計処理をするということは企業の"今"を数値化するものであり、健全な企業運営のための道しるべとしての役割を担うことになるのです。
以上の理由から正しい会計処理をしていくにあたり、会計ソフトが大きな力となります。会計ソフトを使うことで、その重要な決算処理を円滑に行うことができるようになり、企業は効率的に会計処理を行うことができます。
しかし、会計ルールは国によって異なります。また、その国の言語や通貨にも対応しなければ正しいお金の流れを把握することはできず、行政への申告もきちんと行うことが困難になります。海外進出や海外取引が発生する企業にとっては、多言語や多通貨に対応できる会計ソフトの導入は必須となるでしょう。
英語など多言語・多通貨に対応できる会計ソフトの例
会計ソフトは多種多様です。その中でも今回は多言語・多通貨に対応しているいくつかのソフトをご紹介します。それぞれ異なる特徴を持っていますが、今の企業を取り巻く環境に柔軟に対応している会計ソフトとして、検討材料のひとつとしてお考えください。
インフォア サンシステム多通貨・外貨会計システム
オンプレミス型またはクラウド型で展開できる会計システムです。優れた2元基準通貨の機能を持っており、最大第5通貨まで対応することができます。この機能があることで、例えば外貨取引の場合、本社の通貨が円、支社の通貨がウォンという2元基準通貨を設定し、取引通貨を米ドルなどの違う通貨に設定して処理することができます。また多通貨会計による支払いや入金なども問題なくスムーズに行うことができます。
さらに、包括的な財務報告機能によって、基準通貨、取引通貨、第2基準通貨またはレポート用通貨および第4通貨など、それぞれ任意の組み合わせでレポート作成ができます。異なる事業単位、異なる通貨を統合してレポートを作成することもできます。
多通貨会計の要件を完全に自動化することで、入力エラーをなくし、正確な為替損益を算出します。これにより税務署や本社に対し精度の高い報告をすることができ、企業の信頼性を強固なものにすることができます。
言語は日本語や英語、中国語などを含む20以上に対応しています。また日本語のUIにおいて英語や中国語の会計レポートが同時に生成でき、業務効率を図ることができます。
さくら会計
比較的小規模の企業でも導入できるパッケージ型の財務会計ソフトです。小~中規模企業でグローバル市場でのビジネス展開をサポートするために多言語・多通貨・複数帳簿・多地域に対応しています。日本以外でもアメリカやロシア、中国、イギリスなど、世界中で広く使用されています。
日本語、中国語、英語のUIが選択でき、対応している言語は英語、中国語、ロシア語など10か国以上、自動翻訳機能も搭載されています。国外の会計基準や、日付・時刻、金額や符号など、国や地域によって異なる書式にも対応しています。
多言語や多通貨に対応できるというだけでなく、本来の機能として、本格的な財務会計も充実しています。帳簿や伝票には豊富なカスタマイズが可能で、集計処理には多様な条件が指定でき、企業ごとに異なる書式を作成することもできます。
multibook
中小企業向けの、低価格のクラウド型ERPというのが最大の特徴です。「本社と現地法人との情報の見える化が必要」、「支社の予算では大型のERPは難しい」、「現地の言語で報告された会計の詳細が本社に伝わりにくい」、という課題からこのソフトが生まれました。
会計ソフトとしても多言語・多通貨対応しているため、インターネット環境があれば世界中どこからでも決算、財務状況をリアルタイムで閲覧することができます。日本語や英語、タイ語、ベトナム語、韓国語、ドイツ語での操作が可能で、各国の会計基準に則した仕訳入力・財務諸表出力ができます。月額使用料は3万円~、と圧倒的な低コストを実現しています。
[RELATED_POSTS]会計ソフトのクラウド化
近年、企業はソフトウェアを導入する際に、クラウドファーストで考えることが一般的です。旧来、会計ソフトを含む業務ソフトは自社のパソコンにインストールする形で使用していましたが、近年ではクラウドに対応した会計ソフトが多く存在します。それは、クラウド型の方が柔軟な働き方ができ、場所や端末に関係なく機能が活用できるというメリットがあるからです。また、システムの運用管理という従来の企業業務ではない作業自体をベンダーに任さられるというメリットがあります。コストパフォーマンスの面においても初期費用の低さや導入期間の短さなどの利点があるため、今後クラウド型会計ソフトは拡大していくと見られています。
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導入する会計ソフト候補を挙げたあとは細かいニーズで選ぶ
海外進出をする企業は、多言語・多通貨対応した会計ソフトの導入を考えなくてはなりません。どの会計ソフトにするのか検討する際、まずはこの多言語、多通貨の機能が備わっていることが最低条件となるでしょう。
いくつか候補が挙がれば、その中から細かいニーズを考慮し選択するようにしましょう。例えばどの程度の言語数、多通貨対応しているのか、といったことは重要です。多種多様な国に拠点を置くのであれば、なるべくたくさんの言語に対応しているものを優先し、拠点が限られていて使用する言語も決まっているのであれば、会計ソフトとしての機能や使い勝手に注目しましょう。
クラウド型の会計ソフトを考えてみるのも良いかもしれません。今後クラウドサービスの活用は増えると見られ、新しく導入するのであればこのタイプの導入を検討されてはいかがでしょうか。クラウド型ソフトは導入期間が非常に短く、コストも削減できます。
クラウドERPも検討してみる
会計ソフト導入企業は、業務のための別アプリケーションを運用しています。例えば、注文が発生した際にはあらゆる社員が別シス テムで入力した同じような情報を会計ソフトに再び入力しなければならない事態が多く発生していま す。そして、生産性が低下するだけでなく2重打込みによるミスも発生しがちです。このように会計機能単体だけを考えるのではなく企業の業務システム全体を見直すことで強い経営基盤が手に入ることも考えられます。
もしあなたが会計ソフトを検討しているのであればさまざまな部門のデータをすべて統合できるERPの導入も検討すると良いでしょう。
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まとめ
今後会計ソフトを選ぶ際には、言語や通貨に多様性についてどうするのか、必ず考慮しなければなりません。将来的に異なる地域との関係を持つのであれば、あらかじめ広域に対応した会計ソフトを選んでおいた方が良いでしょう。会計ルールも国によって変わるため、具体的な性能をよくチェックするようにしましょう。たいていのソフトは購入前に試用することができます。そのサービスを利用して、いったん使い勝手を確認してから導入することをおすすめします。また、業務全体の効率化やガバナンスの強化などを目指すのであればERPの導入も検討すると良いでしょう。
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