業務効率化を実施して高い効果を得るためには、ERPやRPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)などITツールを導入する必要がある。そんなことを考えている経営者や実務担当者は多いかもしれません。
しかし、ITツールを導入する前に実施できることも多数存在します。もちろん、一定レベル以上の業務効率化を実現するにはITツールが必要ですが、それ以前に取り組めることはたくさんあります。
本稿では業務効率化の手法について解説していきますので、「業務効率を向上させたいけれどITツールを導入するほどではない」、「まずはITツールに頼るのではなく、自分たちの力だけで業務効率化に取り組みたい」という方はぜひ参考にしてください。
ステップ①課題を見つける
闇雲に業務効率化へ取り組んでも成功しないことは、火を見るより明らかなことです。業務効率化を実現するためには、課題を見つけてから施策を考案し、集中的に実施するのがポイントです。ただし課題を見つけるにあたって、従業員から業務効率化案を集めるという方法はおすすめしません。それでは組織の視点から業務を俯瞰して、課題を発見することができませんし、定期的に業務効率化案を集めようとすると次第に義務化し、本当に施策効果のある案は出てこなくなってしまうからです。
やはり、業務効率化へ取り組むには専門のチームを作成して、彼らが主体になり施策を考案していくのがベストなやり方です。各部門から代表者を選出すれば、組織の業務全体を俯瞰しつつ課題を見つけることができます。
その際は“ブレインストーミング”という方法で課題を見つけてみましょう。
ブレインストーミングのやり方
- 司会進行役、書記係を設ける
- ホワイトボードか大きめの紙、たくさんのカードを用意する
- アイディアを創出する時間は挙手か順番で自由に出していく
- 出たアイディアは書記係が書いていく
- アイディアをまとめる時間は、似たアイディア同士を近い場所に移動させて、見た目で分かりやすくする
- アイディア同士に順序や相関関係がある場合は、分かりやすいように整理する
- どのアイディアが重要か実行可能な順番を付ける
<ブレインストーミングのルール>
- 批判しない
- 自由に発言する
- 質よりも量を重視する
- アイディア同士を結合する
- 適正なメンバーを選ぶ
- 目的を明確にする
- 制限時間を設ける
ステップ②課題の優先付け
ブレインストーミングを実施すると、業務効率化へ取り組むにあたっての課題をたくさん見つけることができます。次のステップとして、各課題をどのようにクリアしていくかを考えていくわけですが、現実的にすべての課題を一気に解決することはできません。
業務効率化へ取り組むメンバーは限られていますし、労力や時間も有限です。大切なのは「施策効果が高い課題へ集中的に取り組み、業務効率化効果を最大化すること」なので、各課題に対して優先順位を付けていきます。
何を基準に優先付けを行うかはチームによって異なります。早期段階で施策効果が狙えそうな課題へ優先的に取り組むチームもあれば、長期目線で重要度の高い課題へ取り組むチームもあるでしょう。
初めて業務効率化へ取り組むチームの場合は前者の基準を採用するのがベターでしょう。早期段階で施策効果が出やすい課題を選出して、成功体験を積み上げていき最終的に大きな課題へチャレンジしていきます。ゲームのような感覚で楽しみながらやってみるのも良いかもしれません。
ステップ③“ECRS”で改善案を考える
課題ごとに優先付けをして、これから取り組むべき課題を明確にしたら“ECRS”に従って改善案を考えていきます。
●“ECRS”とは?
“ECRS”はEliminate(排除)、Combine(統合及び分離)、Rearrange(入替及び代替)、Simplify(簡素化)の頭文字を取ったもので、業務効率化を効率的に行うためのフレームワークの1つです。
Eliminate(排除)
業務そのもの、または業務で作成する成果物を無くすことが可能であればコストも手間もかからず、素早く実行できることから施策効果が高くなります。無駄な報告を無くす、誰も参照していない資料作成を無くす、会議を無くなどなど排除できるものはたくさんあります。
Combine(統合及び分離)
排除が難しい業務は次にCombine(統合及び分離)を検討します。類似の業務を結合して集中化することで、必要な設備や工具、備品等を削減することができ、業務担当者が必要とするスキル数も減少します。Eliminate(排除)同様に実行の手間が少なく、容易に業務効率化できます。
Rearrange(入替及び代替)
業務の結合及び分離が難しい場合は、次にRearrange(入替及び代替)を検討します。業務の作業順序、作業場所、担当者等の入替を検討することで、業務を小さく再設計し、工程順序・ハンドリング・スペース等の適正化に繋がります。基本的には小規模な変更になるため、改善の困難性は低いでしょう。
Simplify(簡素化)
最後に検討するのがSimplify(簡素化)です。業務実態を測定及び分析し、動作・要素・作業・工程単位で本来あるべき姿を設計し、導入することで業務の簡素化を実行します。
以上のように改善案を打ち出していくことで、効率良く施策効果の高い案を出し、取り組んでいくことができます。
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ステップ④PDCAサイクルを回す
最終ステップは、業務効率化で取り組んでいる1つの課題に対してPDCAサイクルを繰り返し回していくことです。
●PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)という4つのプロセスで業務効率化を持続的に実施していくためのフレームワークです。
Plan(計画)
業務効率化へ取り組むための計画を立案し、それに必要なプロセスを明確にしていきます。前述した“ECRS”を取り入れつつ改善案を打ち出しましょう。加えて施策だけでなくそれを評価する指標を設定しておくことも大切です。
Do(実行)
Plan(計画)で計画した内容を実行に移します。実行段階では計画通りにいかないこともありますが、施策を都度修正していくと次第に計画から乖離していき、PDCAサイクルを適切に回せない可能性があるので注意しましょう。
Check(評価)
このプロセスでは実行結果を評価します。Plan(計画)で設定した指標をもとに評価することで、計画通りに施策が進んでいるかを判断できます。
Act(改善)
Check(評価)の結果、高い施策効果が得られなかったと判断すれば新しい改善案を打ち出していきます。施策効果があった場合でも「改善の余地はないか?」と考え、更なる改善案を打ち出して次のサイクルを回していきます。
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業務効率化は1日にして成るものではありません。本稿で紹介したステップを踏み、中長期的な目線で取り組んでいくことが大切です。そして、それらを実施した上でOracle ERP CloudやOracle NetSuiteなど高度に効率化できるITツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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