法定調書とは「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」及び「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定によって税務署への提出が義務付けられている書類のことを指します。後に一覧で紹介しますが、法定調書には相当数の種類があり、企業はそれらの書類を適切に管理し、必要なものを必要なタイミングで税務署に提出する義務があります。
本稿ではこの法定調書について概説し、効率的な管理方法を提示していきます。
法定調書とは?
先に述べた法律にて、法定調書は60種類もの書類が存在します。
では、企業はなぜ法定調書を税務署に提出しなければならないのでしょうか?その答えを簡単に説明すると「税務署がお金の動きを把握するため」です。
たとえば企業がAさんに100万円の報酬を支払ったと仮定すると、企業はAさんに100万円を支払ったという支払調書を税務署に提出します。このとき、Aさんが100万円の事業所得があったと確定申告を行えば、両者の数値は一致して、適正に申告されたものであることがわかります。
しかし、Aさんが確定申告をせず、あるいは50万円しか事業所得を得ていないとして確定申告をした場合は、支払調書の内容と一致しないためどちらかが間違っていることになります。この場合は、税務署は「お尋ね」という問い合わせ文書を送付するか、税務調査を実施して確認を行います。
このように、法定調書の提出を義務づけることによって脱税などの不正行為を防ぐことができる仕組みになっているのです。
法廷調書一覧
企業が適切に保管し、税務署に提出すべき法定調書を一覧でご紹介します。
所得税法に規定するもの
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 動産等の譲受けの対価の支払調書
- 動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
- 子等の支払調書
- 外公社債等の利子等の支払調書
- 当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
- 国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書
- 投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書
- オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
- 配当等とみなす金額に関する支払調書
- 定期積金の給付補てん金等の支払調書
- 匿名組合契約等の利益の分配の支払調書
- 生命保険契約等の一時金の支払調書
- 生命保険契約等の年金の支払調書
- 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書
- 損害保険契約等の年金の支払調書
- 保険等代理報酬の支払調書
- 非居住者等に支払われる組合契約に基づく利益の支払調書
- 非居住者等に支払われる人的役務提供事業の対価の支払調書
- 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書
- 非居住者等に支払われる借入金の利子の支払調書
- 非居住者等に支払われる工業所有権の使用料等の支払調書
- 非居住者等に支払われる機械等の使用料の支払調書
- 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
- 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書
- 株式等の譲渡の対価等の支払調書
- 交付金銭等の支払調書
- 信託受益権の譲渡の対価の支払調書
- 公的年金等の源泉徴収票
- 信託の計算書
- 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書
- 名義人受領の利子所得の調書
- 名義人受領の配当所得の調書
- 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書
- 譲渡性預金の譲渡等に関する調書
- 新株予約権の行使に関する調書
- 株式無償割当てに関する調書
- 先物取引に関する支払調書
- 金地金等の譲渡の対価の支払調書
- 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書
相続税法に規定するもの
- 生命保険金・共済金受取人別支払調書
- 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書
- 退職手当金等受給者別支払調書
- 保険契約者等の異動に関する調書
- 信託に関する受益者別(委託者別)調書
租税特別措置法に規定するもの
- 上場証券投資信託等の償還金等の支払調書
- 特定新株予約権等の付与に関する調書
- 特定株式等の異動状況に関する調書
- 特定口座年間取引報告書
- 非課税口座年間取引報告書
- 未成年者口座年間取引報告書
- 教育資金管理契約の終了に関する調書
- 結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書
国外送金等調書法に規定するもの
- 国外送金等調書
- 国外財産調書
- 国外証券移管等調書
- 財産債務調書
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法定調書の提出義務者とは
上記のように、法定調書にはさまざまな書類が含まれており、提出義務がある者は翌年1月31日までに必要な書類を税務署に提出する義務があります。では、法定調書の提出義務者とは誰が該当するのでしょうか?主な法定調書の提出義務者を以下にご紹介します。
1.給与所得の源泉徴収票
俸給、給料、賃金、歳費、賞与その他これらの性質を有する給与の支払をする者。
2.退職所得の源泉徴収票
法人の役員に対して退職手当、一時恩給その他これらの性質を有する給与の支払をする者。ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合は、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」を提出することになるため、「退職所得の源泉徴収票」は提出する必要はない。
3.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
外交員報酬、税理士報酬など所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20に規定されている報酬、料金、契約金及び賞金の支払をする者。
4.不動産の使用料等の支払調書
不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の借受けの対価や不動産の上に存する権利の設定の対価の支払をする法人と不動産業者である個人の者。
5.不動産等の譲受けの対価の支払い調書
不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の譲受けの対価の支払をする法人と不動産業者である個人の者。
6.不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産、不動産の上に存する権利、総トン数20トン以上の船舶、航空機の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払をする法人と不動産業者である個人の者。
出典:国税庁ホームページ No.7400 法定調書の提出義務者
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法定調書を適切に管理するためには?
税務署に提出義務がある法定調書は、企業によって扱っている書類が違います。そのため60種類すべての書類を提出するというわけではありません。それでも、法定調書の提出作業は毎年大変なものでしょう。その原因は、1年間の中で生まれた法定調書が数種類でも膨大な数になり、管理が難しいからです。
では、法定調書を適切に管理するためにはどうすればよいのか?その答えの1つが「ERP(Enterprise Resource Planning)の活用」です。ERPは複数の業務アプリケーションを統合したシステム製品で、各業務アプリケーションは単一のデータベースで管理されています。そのため、企業のあちこちで生まれるデータを一元的に管理でき、異なる法定調書の管理も効率的に行えるようになります。この他、ERPを活用することで組織全体の業務プロセスが活性化するなど多数の効果があるので、法定調書管理にERPを検討してはいかがでしょうか?
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