新聞やテレビを見ていると「○○株式会社が東証一部に上場しました」といったニュースを見かけます。多くのスタートアップ企業などが今現在でもこの上場を目指し日々の事業を運営しています。この「上場」とは何か?なんとなくは知っているけれど詳しくは知らないし、今更人には聞けないという方も多いでしょう。本稿では、上場の基礎知識と、メリット・デメリットをまとめました。
上場とは何か?
製品やサービスを販売して利益を得ること以外に、企業が経営資金を調達するための方法は2つあります。それが「銀行などの金融機関や投資家、あるいはVC(Venture Capital)からお金を借りる」という方法と、「会社の株式を発行して購入してもらい資金を調達する」という方法です。しかしながら、後者の方法で資金調達を行うためには様々な条件をクリアする必要があり、その条件を満たし、株式発行による資金調達が可能になることを「上場」と呼びます。
たとえば会社の株式を100株100万円で購入した場合、その購入金額は会社の資産として経営活動に消費されます。その会社の経営が軌道に乗っており、購入時よりも時価総額が向上した時点で株式を売却すれば、その分の差額が利益になります。こうした取引を「株取引」と呼び、株を保有している人や組織のことを「株主」と呼びます。
株式市場には種類がある
上場に関するニュースを見ていると、「東証一部に上場」や「東証マザーズに上場」といったように、企業によって上場する場所が違うことに気づきます。株式が流通する市場を「株式市場」と呼び、この株式市場にはいろいろと種類があるのです。さらに、株式市場によって上場の条件が異なります。
東証一部
大企業と呼ばれる企業が上場する株式市場であり、トップ企業の株式が流通しています。そのため上場審査基準が非常に厳しく、どんな企業でも上場できるというわけではありません。時価総額は250億円以上、株主数が2,500人以上などの条件があり、上場までに2年以上の期間を要するケースが多いでしょう。
東証二部
時価総額20億円以上、株主数800人以上など東証一部より条件は緩和されており、一般的に中堅企業が上場する市場です。
東証マザーズ
ベンチャー企業などの新興組織が上場する市場であり、東証一部と東証二部に比べて条件が緩和されており、「組織の成長性」が審査基準に含まれているため、必ずしも売上高が多ければよいというわけではありません。
JASDAQ(ジャスダック)
ベンチャー企業、ならびに中小企業が中心に上場している株式市場です。革新性、信頼性、地域性、国際性をコンセプトにしており、株式市場としては新興部類になります。しかしながら、有名企業も上場しており注目市場の1つです。
この他にも、地域ごとに株式市場は存在し、それぞれに異なる審査基準や条件を持っています。
上場のメリット
企業が株式市場へ上場するためには多額の費用と労力がかかります。上場後も維持費用として年間50~450万円程度のランニングコストが発生しますし、東証一部に上場した企業では年間平均5,000万円~1億円ほどの維持費がかかることも。なぜそうまでして、上場を目指す企業が多いのでしょうか?
1.資金調達を容易に行える
銀行などの金融機関や投資家からお金を借りて資金調達を行う場合、まずは銀行の審査に通過する必要があったり、投資家に事業内容についての理解を得たりと、いろいろなステップがあります。そうしてようやく調達した資金には利息が付きますので、返済額は借りた額以上になるのが当然です。
上場企業はどうかというと、株式売買によって資金調達が行えるためお金を借りるよりもスピーディに資金調達が行えますし、利息もつかないので急激に変化するビジネスニーズへ迅速に対応できます。
2.取引先や金融機関などからの社会的信用が増す
「上場している」ということは、各株式市場の厳しい条件を満たすほどの経営力のある企業だということを周囲にアピールすることにもなります。そのため、取引先や金融機関などからの社会的信用が増し、これまで取引できなかった企業との取引が可能になることも少なくありません。
上場企業は年次決算ごとに財務諸表を作成し、経営状況を外部に公開する必要があるため、本当に利益を創出しているかどうかの証明にもなります。
3.企業の知名度が向上する
上場は新聞やニュースで取り上げられることが多いため、企業の知名度を一気に向上させることができます。知名度が上がれば、製品やサービスの安心性にもつながり販路拡大にもなります。
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4.優秀な人材が集まりやすくなる
上場企業には自然と優秀な人材が集まりやすくなります。求人情報にも上場企業なのかどうかの情報が記載されるため、人材不足問題が深刻化している中でも、効率良く優秀な人材を確保できるでしょう。
5.企業ガバナンスが強化される
企業(コーポレート)ガバナンスとは「内部統制」という意味で、企業の信用問題に発展するような不祥事の発生を防いだり、法令を遵守するための管理体制です。上場基準の中には企業ガバナンスに関する評価項目があり、コンプライアンスマニュアルの作成が必須なため、自然とガバナンスが強化されます。
6.創業者利益による資産作りができる
企業が株式市場に上場すると、上場時は株価が跳ね上げることで創業者利益を得て、多大な資産を得ることができます。これによって、より幅広いビジネス展開が可能になります。
7.社員のモチベーションが上がる
良い企業かどうかは、売上高によって決まるわけではありません。上場企業の中にも「ブラック企業」と呼ばれるところはありますし、非上場企業の中には「ホワイト企業」が多く存在します。ただし、上場によって社員のモチベーションが向上するのは事実です。上場前から従事している社員については、団結力が強化されるでしょう。
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上場のデメリット
株式市場に上場することはメリットばかりではありません。デメリットもあるため、その点もしっかりと理解しておくことが大切です。
1.上場には費用と労力がかかる
企業が株式市場へ上場するためには、長い準備期間と投資が必要になります。
2.上場継続に費用がかかる
前述のように、上場を維持するためには時価総額に応じた維持費用がかかります。
3.情報開示義務がある
上場企業には財務諸表による情報開示義務があるため、企業にとって不都合になる情報も開示しなければいけません。
4.短期的な利益へ走りがちになる
継続的な利益創出、企業価値のアップへ圧力がかかり、短期的な利益へ走りがちになり長期視点での経営が難しくなります。
5.経営スピードが落ちる
株式市場へ上場後は経営者の思惑を経営に反映させることが難しくなり、経営スピードが落ちることもあります。
6.買収リスクがある
株式を公開している以上、他社からの買収リスクがあります。
いかがでしょうか?上場とは企業にとって大きな利益をもたらすこともあれば、企業にとって不利になる状況が発生することもあります。しかしながら、上場することのメリットはやはり多いので、皆さんの企業でも上場を目指してみてはいかがでしょうか?
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