企業にとって、在庫は現金化されることを目的とした棚卸資産です。製品を在庫として保有し、市場に供給・販売することで企業は利益を得ます。しかし、過剰に在庫を抱えればキャッシュフローを悪化させ、企業の資金繰りを圧迫します。反対に在庫不足に陥れば、欠品による機会損失を招くでしょう。つまり、在庫は多すぎても少なすぎても企業の資産に影響を及ぼすのです。当記事では、在庫を抱えることによるリスクや、企業に与える影響について詳しく解説します。
在庫を持つ意味
企業は、自社の製品やサービスを開発・販売することで利益を得ています。それはすなわち、市場に何らかの価値を提供することであり、規模の違いこそありますが、製品の在庫を保有することと同義です。そこで、まずは在庫を持つことの意味を確認してみましょう。
対応力の向上
在庫を確保することは、顧客や市場に対する対応力の向上を意味します。十分な在庫を確保することで、受注後に即時納品が可能となり、機会損失を回避できます。また、納期の短縮にもつながり、顧客満足度の上昇も期待されます。もしも在庫が不足していたなら、受注機会の損失や顧客満足度の低下につながっていたでしょう。
急激な需要変動に対応できるのも大きなポイントです。例えば、何らかの要因により、自社製品の需要が急激に拡大したと仮定しましょう。もし、そのような事態が起きたとしても、適正な在庫を確保しておけば、機会損失を最小限に抑えることができます。このように、必要十分な在庫を保有することで、さまざまなトラブルに対して柔軟に対応可能です。
仕入れコストの抑制
製造に必要な材料や部品などは、大量購入によって購買単価を下げることが可能です。製品は1つ作るのにも莫大なコストがかかります。例えば、自動車は何千億円という開発費用を必要とするにも関わらず、数百万円で購入することが可能です。これは大量生産・大量販売によって実現できる販売価格です。
材料や部品の卸メーカーも原理は同じで、大量購入してくれる顧客がいれば、大量生産することによって製造コストを大幅に下げられます。つまるところ、大量購入をすることと引き換えに、仕入れコストを抑制できるのです。
安心感の提供
在庫を確保することで、顧客は製品を確認してから取引に応じることができます。実際に目で確認してもらうことで、安心感を提供するとともに、クレームを未然に防ぐことにもつながるでしょう。また、品切れは顧客満足度を大きく低くださせます。顧客に不安を与えないためにも、適正在庫を確保して品切れを防ぐことは重要な要素となります。
[RELATED_POSTS]在庫を抱えることによるリスク
製品を在庫として保有し、市場に供給・販売して利益を得るのが事業活動です。しかし、在庫を抱えることには相応のリスクも存在します。ここでは、在庫を抱えることによって、どのようなリスクが発生するのかを解説していきます。
管理コスト増大
在庫を多く抱えるほど、それに比例して管理コストも増大します。倉庫や工場といった保管場所・人件費・光熱費・固定資産税・保険料など、その他諸々の管理・維持にかかる費用を必要とします。在庫管理の最適化は、こういったさまざまなコストの最適化につながるため、今後の重要な課題と言えるでしょう。
品質・価値低下
少なすぎる在庫は機会損失を招きますが、逆に多すぎる在庫も、保存期間が長くなるほど品質の劣化につながります。特に賞味期限のある食品などは、より顕著に影響を受けるでしょう。IT技術の発達とともに、商品やサービスのトレンドは目まぐるしく移り変わり、それに伴って製品ライフサイクルも短くなっています。そのため、過剰な在庫確保は、製品の廃棄や値引き販売を余儀なくされるリスクを内包しているのです。
作業発生
過剰在庫はそのまま保管するにせよ、廃棄するにせよ、必ず何らかの作業が発生します。例えば、販売店から返品された製品の運搬作業や廃棄作業などが該当するでしょう。こういった作業は、企業価値を生まない非生産的な業務でしかありません。在庫が増えるほどに倉庫スペースを圧迫し、人的リソースも必要とします。在庫の最適化ができれば、こうした無駄な業務にかかる管理費や人件費の削減につながるでしょう。
キャッシュフロー悪化
在庫には「販売用に仕入れた製品」と「製造用に仕入れた部品や原材料」の2つがあります。この2つは、いずれも現金化されることを目的とした棚卸資産です。つまり、在庫は貸借対照表上では資産として計上されるものの、流動性が低いため、企業のキャッシュフローは減少します。したがって、在庫を多く抱えるほど企業の資金繰りは圧迫されてしまいます。
キャッシュフローは企業の生命線です。キャッシュフローの悪化は、支払いや返済に充てる現金を不足させ、黒字倒産の引き金になりかねません。仮に利益が出て順調に見えても、手元に現金がないことで事業が行き詰まるケースは、決して珍しいことではないのです。
税金増加
前述したように、在庫は棚卸資産として勘定されるため、経費として計上することができません。在庫は売上原価から除外されるので、在庫を経費として計上できるのは販売するか廃棄した場合です。つまり、在庫が多ければ多いほど、税金負担も増加してしまいます。
在庫がなければ、販売機会の損失によって収益を生み出せません。しかし、在庫が多すぎても、税金や管理費用の増加によって収益を圧迫します。在庫は多すぎても少なすぎても、企業の経営資源を浪費させてしまうのです。
ここまで見てきたように、在庫は利益を生む側面を持つ一方で、さまざまなコストを発生させるという側面も持っています。このことから、在庫管理の最適化は早急に取り組まねばならない重要な課題と言えるでしょう。
[SMART_CONTENT]まとめ
企業は製品を設計・開発し、顧客や消費者に社会的価値として提供することで利益を得ています。事業活動を通じて社会に貢献していくためには、自社製品を在庫として保有する必要があります。しかし同時に、在庫を抱えることは大きなリスクを伴うのです。
多すぎる在庫は品質の低下を招くとともに、管理コストを増大させます。また、在庫が少なすぎれば販売機会の損失につながるでしょう。ゆえに、社会に必要とされる価値を提供するためには、在庫管理の最適化が必須事項だと言えます。
在庫を過不足なく適切に管理することは、企業価値を高めることに直結します。そこで「NetSuite(ネットスイート)」のようなクラウド型ITシステムの活用が鍵となります。NetSuiteは、在庫管理はもちろん、財務会計や顧客管理といったデータ管理業務に特化したITシステムです。在庫管理を最適化し、企業価値を高めるためにも、ぜひNetSuiteの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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