ERPはクラウド型が登場したことで、大企業だけでなく中小企業でも導入が進む大規模なITシステム基盤です。経営上不可欠な基幹システムを取り揃え、会社全体の資源を一元管理します。
しかし、製品ごとに提供される機能は異なります。そのため「ERPの全体像がうまく掴めない」という方も多いのではないでしょうか?
本稿では、ERPで提供される機能について詳しくご紹介します。ERPについてもっと知りたい、という方はぜひ参考にしてください。
ERPが提供する基本機能
ERPが提供する基本機能を紹介する上で、ここでは「NetSuite」というERPを参考にします。NetSuiteは世界でSaaS型(クラウド型)No.1の製品であり、世界4万社以上で稼働しており、2015年には調査会社のガートナー社から世界の財務会計システムにおいて最も成長している企業とされています。現在はオラクル社に買収されてOracle NetSuiteとして提供されています。
そんなNetSuiteが提供する代表的なERP基本機能は次の通りです。
≪NetSuiteが提供するアプリケーション≫
- 財務会計管理
- 生産管理
- 注文管理
- サプライチェーン管理
- 倉庫管理
- 人事管理
一つずつ説明していきます。
財務会計管理
NetSuiteは数あるERPの中でも、とりわけ財務会計管理に強い製品です。企業の健全かつ成長的な経営は、正確な財務情報をもとに計画にした経営戦略から生まれます。「営業力強化」など一見して改善効果の高そうな部分から経営のテコ入れを行う企業も多いでしょう。しかし、まずは足元を固めるためにも正確な財務情報を一元的に管理して、それに応じた経営戦略が会社の指針を決めます。
財務会計管理では大まかに次のようなことができます。
- 基本的な会計機能と財務情報のリアルタイムな可視化
- 財務情報のレポート機能による素早いデータ分析
- 営業と連携した請求管理機能
- 会計基準に適合しつつタイムリーに会計報告ができる
- 予算の管理、計画、予測ができる
- 経営意思決定のための判断材料をダッシュボードに表示
- 迅速な決算とコンプライアンス維持を実現
生産管理
製造業にとって欠かすことのできない基本機能が「生産管理」でしょう。従来の生産管理現場では、システム同士が分断されていることで、データ連携において様々な問題が発生しているかと思います。それに対してERPが提供する生産管理は、その他の機能と相互連携が取れているため、データ連携に関する問題は解消されるでしょう。そのため、製造業では生産管理に重点を置いてERPを選択するケースが多いかと思います。
そこで、着目すべき点は注文管理機能との連携です。注文管理機能とシームレスな連携が取れていると、受注から生産までのリードタイムを大幅に短縮でき、従来に比べて短納期を実現できます。そうすれば、顧客満足度も向上し、利益拡大に繋がる取り組みが行えます。
NetSuiteの生産管理では基本的な機能の他に、従来型のバーコードスキャナーに基づく操作画面と革新的な双方向タブレットアプリの両方を提供しています。これを活用して、生産状況をどこからでも確認でき、現場や機器に発生した問題なども迅速にフィードバックされます。
「生産管理とは」について調べてみよう!
注文管理機能
注文管理機能は先述の通り、製造業が生産管理機能に着目するのと同じくらい重要な機能です。もちろん、注文管理機能は製造業だけのものではありません。近年事業展開されることが多い、Eコマースでも存分に活用できるものです。
NetSuiteではオムニチャネルを通じた価格設定やプロモーション展開により、常に最適な価格での製品提供が可能です。オムニチャネルとは、複数のチャネルを一つに統合し、チャネルごとの垣根をユーザーに意識させない販売戦略です。たとえばEコマースと実店舗の在庫を一元管理したり、SNSなど別のチャネルからも購入ができるよう販売計画を設計するものです。
こうした機能では、システム上で価格情報を改定するとすべてのチャネルでその情報が共有され、一貫した価格提供ができます。チャネルごとに情報を変更する必要もないため、手間を大幅に削減できるでしょう。
この他注文受付や承認など、受注から出荷までのリードタイムを短縮する機能が備わっており、製造業だけでなくあらゆる小売業で納期短縮を実現します。
[RELATED_POSTS]サプライチェーン管理機能
サプライチェーン管理とは、原材料や商品の仕入れから出荷、納品に至るまでの一連の物流を「供給連鎖」と考え管理する機能です。これら一連の連鎖を正確にコントロールできれば、品質を落とさずに短納期が可能で、顧客をとどめることができます。
NetSuiteのサプライチェーン管理機能は需要管理と供給管理が基本です。需要管理では過去の需要分析から販売予測を立て、需要に対して素早い供給を可能にします。供給管理では計画上の注文と実際の注文を対比した分析したり、複数の場所の供給計画を立てるなどが行えます。
この他関連会社と連携できる購買管理機能なども備えています。
倉庫管理機能
製造業や小売業において、正確な在庫把握や効率の良い保管はビジネスの生命線です。在庫とは現金化を待つ会社の資源であり、在庫を処理してこそ利益が生まれます。その反対に、不良在庫をいつまでも抱えていたり、余剰在庫があると収益は低下していき、キャッシュフローは悪化し、次第に経営が圧迫されます。
NetSuiteではビジネスや倉庫の規模や複雑さにかかわらず、ニーズを満たすソリューションがあります。ネイティブの在庫管理からモバイルオプション、本格的な先進のWMSシステムにいたるまで、場所ごとに展開するロケーションベースの在庫管理機能を提供します。
人事管理
継続的に成長できる企業体質を作り上げるために、人事戦略の見直しに取り組む会社が増えています。人材のスキルや才能などに着目したタレントマネジメントなど、人事はこれまでになく経営戦略に絡む部署として位置づけられています。
NetSuiteが提供する人事管理のコア機能は組織設計、職務/職位管理、ワークフォース/コンプライアンス管理機能などが含まれています。全ての従業員データはマスターデータより提供され、一環したデータ管理と最高レベルの人事業務を支援します。
さらに人材分析機能では、部門や拠点、従業員のクラス、子会社ごとにセグメントして、組織の人数や増加/離職傾向を簡単に可視化できます。
企業の労働生産性は、会社と従業員のエンゲージメントの深さに関係があるとされています。エンゲージメントとは言わばビジネス上での会社との繋がりを示す数値であり、エンゲージメントが高い社員ほど仕事に対してエネルギッシュで、付加価値の高い仕事を遂行します。
ちなみにエンゲージメントは頻繁な飲み会や社内行事などで高まるものではなく、あくまでビジネスパートナーとして信頼し合えるかなどが関係します。
[SMART_CONTENT]
ERP各製品の機能の違いに着目しましょう。
ここまでNetSuiteを中心にERPの基本機能についてご紹介しました。
一点注意していただきたいことは、製品ごとに同じ機能を提供していても、その適用範囲やできることが違うということです。たとえば同じ財務会計管理機能でも、NetSuiteと他製品ではその適用範囲が異なる可能性があります。ですので、ERP選定時は製品ごとの機能の違いに着目して、自社に最適なものを選んでください。
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