2014年頃からビッグデータというワードが流行してから「分析」はビジネスパーソンにとって身近なものになり、今ではBI(Business Intelligence)ツール等の登場によって気軽にデータ分析ができる時代になっています。ビジネスは常にデータを活用することが前提で、それは顧客を理解する上でも組織の現状分析を行う上でも変わりありません。
本稿では、今すぐ使用できる現状分析のためのフレームワークと、それを成功させるためのポイントについて紹介します。
現状分析のフレームワーク9選
1. 3C
3C(分析)とは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)という3つの“C”を軸にして、自社ブランドの立ち位置や強み・弱み等を把握するためのフレームワークです。ターゲットとなる顧客を明確にして、競合の強みと弱みを把握、さらにそれと比較した自社の強みと弱みを把握します。4Cの場合はこれにCo-operator(協力者)を加えます。
新規プロジェクトの立ち上げ、新商品の販売方法・販売経路の検討といった局面で使用することが、ビジネスに登場する利害関係者それぞれの視点や立ち位置を明確にすることで、自社が置かれている状況が明確になります。
2. 4C
「マーケティングの4C」とも呼ばれ、Customer value(顧客にとっての価値)・Cost(顧客が負担するコスト)・Convenience(顧客の利便性)・Communication(顧客との対話)という4つの軸から物事を分析します。この中でも重要なのがCustomer value(顧客にとっての価値)です。自社製品やサービスが顧客にとってどういった価値を提供できているかによって、今後の販売戦略が大きく変わります。
このフレームワークの具体的な使いどころは自社の強みや弱みを整理したり、競合分析を行うときです。たとえば競合他社が提供するWebサービスについて分析する際に、4つの“C”を用いて情報収集することで顧客視点から見た客観的な分析が可能になります。
3. MECE分析
MECE分析は「Mutually Exclusive Collectivery Echausive(漏れなく、ダブりなく)」という意味の分析フレームワークです。何か新しい施策を展開するにあたって、そこに必要な具体的な要素をいくつもあげて漏れや重複が無いかを確認することで、有効的な施策を展開できるようにします。
4. PDCA
多くのビジネスパーソンにとって馴染みのあるPDCAは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(確認)・Act(改善)という4つのサイクルで現状分析を行いながら物事を改善に向けていきます。
PDCAで大切なことはPlan(計画)の段階で施策の効果測定が可能になる指標を用意しておき、Checkにてその指標を分析してその結果に応じて改善を加えていくことです。実はPDCAに取り組む企業の中にはPlan(計画)とDo(実行)を繰り返しているだけで、改善に向かった取り組みが行えていないケースが多々あります。
さらに大切なのはPDCAを継続して行い、細かい改善を徐々に加えていくことです。
5. PEST分析
「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」という4つの軸で経済情勢を捉え、市場における自社商品やサービスの展望を予測するための分析手法です。
「Politics(政治)」では法改正や政権交代、「Economy(経済)」では景気動向やGDP成長率、「Society(社会)」では文化や教育の変遷、「Technology(技術)」では技術革新や技術衰退などを基本的に把握します。
6. SWOT分析
SWOT分析はStrength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)という4つの軸から、組織が今置かれている状況を整理するためのフレームワークです。3Cに似ているようにも思えますが、直接的に自社の強みと弱み、ビジネスチャンスと将来発生し得る脅威を整理することでより具体的なアクションを導き出すためのものです。
Strength(強み)で他社と差別化できるポイントを、Weakness(弱み)で自社の課題を、Opportunity(機会)で現在または将来のビジネスチャンスを、Threat(脅威)で自社ビジネスに影響し得るリスクを整理します。
7. 決定木分析(ロジックツリー)
決定木分析は現在直面している問題点を解決するために用いるフレームワークです。問題点を起点にして「どうやって(How)」解決していくかをどんどん掘り下げていきます。その際に1つの考えに固執して深堀していくのではなく、いくつかの選択肢を枝のように広げて、それぞれの選択肢に対してさらに深い問いを投げかけていくことで、全体として抜け漏れのない検討を行うようにします。
さらにHowではなく「なぜ(Why)」を掘り下げて要因分析を行うことも可能です。ここでもやはり大切なのはいくつかの選択肢を枝分かれしていき物事を考えることです。
8. デシル分析
デシルとはラテン語で「10分の1」とう意味でこれを語源としています。既存顧客全体を特定のテーマで10のグループに分類して、自社への影響度や関係性を把握するためのフレームワークです。たとえば「売上」というテーマでデシル分析を行うと、次のようになります。
購入金額合計 |
購入金額比率 |
累積購入金額比率 |
1人あたりの 購入金額平均 |
|
デシル1 |
200万円 |
40.0% |
40.0% |
20万円 |
デシル2 |
100万円 |
20.0% |
60.0% |
10万円 |
デシル3 |
80万円 |
16.0% |
76.0% |
8万円 |
デシル4 |
50万円 |
10.0% |
86.0% |
5万円 |
デシル5 |
30万円 |
6.0% |
92.0% |
3万円 |
デシル6 |
15万円 |
3.0% |
95.0% |
1万5,000円 |
デシル7 |
10万円 |
2.0% |
97.0% |
1万円 |
デシル8 |
8万円 |
1.6% |
98.6% |
8,000円 |
デシル9 |
5万円 |
1.0% |
99.6% |
5,000円 |
デシル10 |
2万円 |
0.4% |
100.0% |
2,000円 |
合計 |
500万円 |
100% |
- |
5万円 |
この表から上位4グループの顧客で売り上げ全体の86%を占めていることが分かります、ここから分析を広げたり考えを巡らせることで、顧客ごとの特徴を把握したり集中的に投資するためのグループを把握することができます。
9. バリューチェーン
顧客に製品やサービスの価値(バリュー)が届くまでの、一連のプロセスを鎖(チェーン)のように見立ててどこで付加価値が生まれているかを把握するためのフレームワークです。製品やサービスの提供は、原材料の調達などに始まり消費者の手元に届くまですべて鎖のように一連のプロセスとして繋がっているため、プロセスごとに生まれる価値が集合して最終的な顧客提供価値に反映されます。
このバリューチェーンを分析することで、他社と差別化すべきポイントが見えてきます。
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現状分析を成功させるポイント
これらの現状分析のフレームワークはただ取り入れればよいというわけではなく、成功のためにはいくつかのポイントがあります。
1. 明確なゴールを持つ
これから行おうとしている現状分析が一体何のためにあるのか?これを整理しておくことは基本中の基本ですが、できていないことが案外多いでしょう。現状分析のゴールが明確になっていないと、何のための分析なのかわからず、結果的に何の知見も見出せないまま終わります。
そもそも現状分析を行うという背景には「経営課題を解決したい」など何らかの問題や課題に直面しているということなので、それに沿ったゴールがあるはずです。ゴール無き現状分析は必ず失敗するので、今一度現状分析の目的について整理しましょう。
2. 戦略を考えるのはあくまで自分自身
現状分析とはあくまで組織や部門、個人の現状を把握するためのものなので現状分析を行ったからといって経営戦略が自然と出てくるわけではありません。現状分析を踏まえて新しい経営戦略や課題解決策を立案するのはあくまで自分自身です。これを理解していないと現状分析を行うだけで終わってしまうので注意しましょう。
現状分析はどんどんフレームワークを取り入れて、積極的に実行することでその精度が次第に増していきます。この機会にフレームワークを活用して色々な現状分析を行ってみてください。
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- データ分析/BI