NetSuiteのみならずERPの導入に際して、導入の手順やその時に纏めるべき資料や作業内容などを「導入方法論」としてプロジェクトの方向を規定しているものがあります。
NetSuiteの導入方法論は「One Methodology」で、7つのフェーズで構成されています。
各フェーズではプロジェクトを推進するために必要なドキュメントの作成をする必要があります。NetSuiteのコンサルタントが顧客に提出してきたドキュメントのテンプレートを使うことにより作成効率と情報の網羅性が確保されています。フェーズにはタスクが設定されており、事前定義されたタスクを担当者が着実に実施していくことによりプロジェクトが進んできます。
今回は次のようなプロジェクトでの役割を規定しています。
ロール |
一般的な役職(部門) |
主なタスク |
---|---|---|
監督者 |
経営層 / 経営企画 / 管理部門 |
経営判断 |
プロジェクトマネージャ |
プロジェクト推進責任者 |
プロジェクトを統括 |
プロジェクトメンバー |
プロジェクト推進担当者 |
プロジェクトを推進 |
部門担当者 |
部門長もしくはその代理 |
部門所見を統一、部門タスクを管理 |
ユーザー |
一般従業員 |
プロジェクトから割り当てられたタスクを実施 |
開発者 / 設定者 |
情報システム部門 / 導入業者 |
決定事項に基づいて設定を実施 |
導入プロジェクトを考えるとき、最初に考えること
プロジェクトの開始から終了までの7フェーズとして定義しています。こちらは「プロジェクト開始」からのフェーズですから、プロジェクトを開始する前の段階があります。
どのようなパッケージを使って業務の改善を図っていくのか?導入をする際に自社リソースだけで行うのか、導入業者を使うのか?大まかな予算は?期間は?などのプロジェクトを開始するにあたっての骨子を考え、決定できる項目は決定して、文書化しておくことをお勧めします。
業者とともに導入プロジェクトを進める際には、製品の選択から導入プロセスまでをまとめたRFPを作成する必要があります。
RFPとは、情報システムの導入や業務委託を行うにあたり、発注先候補の事業者に具体的な提案を依頼する文書。 システムの目的や概要、要件や制約条件などが記述されているもの
ホームページのデザインの依頼などであれば依頼する内容がわかりやすいのですが、全社で使うERPに対するRFPを作成する場合にはその内容は多岐にわたり複雑になります。そのため、現在のシステムやプロセス、データを基本情報として作成することが多いのですが 「現在のシステムをERPで再現すること」 がゴールではありません。
現在のシステム、プロセスの情報を纏めて現状を把握して将来目指す理想像を提案してもらうRFPであることが重要です。RFPを纏めることはとても難しいように感じますが、難しいのではなくて情報が多岐にわたるため「手間がかかる」だけです。
一般的に纏めるべき内容を上げていきます。参考にしていただければと思います。
後述しますが、担当者の作業責任分掌の所在を定義する「作業範囲定義書」もRFPの一部として定義することもあります。
概要
- RFP文書の目的
一般的な文書説明を記載します。ここが重要ではありませんので何でも構いません - システム導入に至った背景
なぜ導入プロジェクトを開始することにしたのかを記述、端的にまとめてください - 導入をすることで解決したい問題
経営視点で見た「何を解決したいのか?」を記述します、詳細の業務を含めません - プロジェクトのゴール
問題すべてを解決することが重要ですが、ゴールを規定して着地点を示します。導入範囲が広い場合や時間の制約がある場合は複数段階のプロジェクトとして定義してもよいでしょう。重要なのは「これを実現したい」という項目を端的に挙げることです。導入自体がゴールではありません。 - プロジェクトの範囲
社内システム全体の見直しであってもしっかり範囲を指定します(商談管理と見積、受注処理から請求回収まで などと具体的に)社内の言葉と業者の言葉が違って齟齬がないようにシステム構成範囲を図式化すると理解が早いです - 会社情報組織図プロジェクト体制
プロジェクト範囲に対してどのような部署が関連し、全体像も一緒に説明します - 現在のシステム構成
現在どのようなシステムで業務を行っているかを全体像で説明、更に「システム+使用部門」のリストがあるとさらに理解しやすいパッケージなどではなく、手作りであればその概要説明が必要です。入力画面と帳票のイメージがあれば理解しやすい見積を依頼するためには情報が必要で、取扱商品数XXXX点、在庫数量XXXX点 などの情報を拠点ごとに年間の請求書発行数 XXX 年間の発注書 XXX取引会社数 顧客 XXX社 仕入先 XXXX パートナー契約 XXXX 従業員 XXXXなどの情報を昨年の実績をもとに提示します。店舗数や拠点も記載してください。想定されるユーザー部門とその従業員数も記載します、ライセンスの見積にかかわります。取引の中で使っている伝票の種類も提示したほうがいいです。業務の流れはほとんどの会社で変わりがありませんが。複数の取引のやり方がある場合考慮すべき情報が増えます。請求書発行のプロセスが4つ(一般官公庁パートナー代理店)あり、それぞれ伝票が違う など
提案依頼内容
提案に盛り込んでほしい情報を記載します。提案に外せない情報もきっちりと明記してください- 会社情報 / 担当部門情報
提案を行った会社の基本情報とその部門の情報 - プロジェクト体制図
- プロジェクトマネジメント方法
- プロジェクト進捗管理方法
- 提案システム概要
- 提案システム構成
- 運用保守に関する提案
- ユーザー教育に関する提案
- 納品物一覧 / ドキュメントのサンプル
- 概算費用
- 契約内容
- 導入に関する制約事項
参考資料
- 導入事例
- 製品カタログ もしくは 参照できる資料のリスト
このような情報を受け取り、製品や業者の選定に入ります。
[RELATED_POSTS]それぞれのフェーズの概要と関係者について
フェーズ |
フェーズ概要 |
フェーズ参加者 |
---|---|---|
開始 |
プロジェクト全体の全体像を確定します。対象導入範囲や時間軸、予算とその配分、マイルストーンとタスクの担当者をアサインします。また、導入対象範囲が確定した後、プロジェクトメンバーや従業員に対するトレーニング計画も策定します。 |
■監督者 |
分析 |
業務要件の分析定義を実施します。現在のシステムの状況とビジネスプロセスを分析して、将来目指すシステムを最終確定します。分析フェーズの最終確定を目標として後続フェーズが進行します。後続フェーズでプロセス変更などがあった場合には分析フェーズに戻ることがあります。後続フェーズで変更が発生した場合の「戻りルール」の策定をすることもあります。 |
□監督者 |
設計 |
最終的な業務要件に適応するためのアプリケーションの機能範囲や設定範囲、および追加開発を行うための設計を行います。設計フェーズで策定した範囲での環境構築や追加開発が行われます。後続フェーズで設計の変更が必要になった場合、このフェーズで作成された仕様書を変更する必要があります。 |
□監督者 |
構築 |
業務要件に対応するために設計フェーズにて作成した仕様書に基づいて環境設定と追加開発を行います。構築フェーズにて作業を行う過程で更なる仕様の追加や仕様に不具合がある場合には「仕様を変更した後」に設定や開発をすることが理想です。システム導入後の追加開発や仕様変更、不具合の発生時に設計フェーズの仕様書を確認します。変更管理が重要です。 |
□監督者 |
テスト |
「分析フェーズ」で定義された実現要件が実装されているかを確認します。開発者や管理者のテストではシステムの「ロール(業務分掌)」や人事構成によって操作可能な機能や閲覧可能なデータが制限されています。実際の業務を行うようなシナリオでユーザーがテストをする「ユーザー受入テスト」を行います。結果をフィードバックして完成形に近づけます。 |
□監督者 |
移行 |
「分析フェーズ」で定義された実現要件が実装されていることを確認後、新システムにて必要なデータを移行します。商品やサービスなどのアイテムデータ、顧客や仕入先、従業員データなどのマスターデータだけではなく、過去の取引や仕分けなどのデータも移行する必要があります。以前のシステムからデータを抽出、洗浄して新システムにインポートします。 |
□監督者 |
最適化 |
関係者間で導入プロジェクトが完了したことを確認します。その後、分析フェーズで今回導入できなかった部分や見送った部分を新プロジェクトとして開始するかどうかを検討します。 従業員からの機能改善や問い合わせなどの処理方法の確定と、プロジェクトメンバーから保守サポート担当者への引継ぎを完了することが必要です。 |
□監督者 |
プロジェクト担当や体制が確定すると、プロジェクト作業に突入します。
ただし、社外のリソースと共にプロジェクトを進める際には、作業範囲を定義する最終的な作業範囲定義書(SOW: Statement of Work)を考えておく必要があります。
-SOWとは、複数の主体が共同で進める事業業務プロジェクトなどにおいて、そのプロジェクトの目標や、成果物の定義や仕様、スケジュール、作業工程、作業内容、各主体の役割、分担、権限などを定義した文書。
SOWは導入プロジェクトのゴールに対して、どのような作業内容を誰が行うかを明文化するものです。制約条件や依存関係、作業プロセスやそれに対するリスク、責任の所在と権限、承認ルートや作業受入基準、業績判断基準などが盛り込まれます。プロジェクトメンバー全員、つまり社内リソースと社外リソースのすべてに対して設定することもありますが、少なくとも社外メンバーに対して同意のもとで策定する必要があります。一方的に作成しても同意がなければ意味がありません。
プロジェクトでは意図しなかった変更やトラブルがつきものですが、それに対して対処する担当者を同意のものとで任命しておくことにより、初期対応の時間が短縮され大幅なプロジェクトの遅延が発生する可能性が少なくなります。
作業範囲を曖昧にすることは避けて担当者設定する際に「やること」だけではなく、「やらないこと」も定義してください。責任の所在を明らかにするためです。もし、プロジェクトの中で発生したタスクに対して担当者が明記されていなかった場合、プロジェクト内で合議の上で担当者を確定して「作業範囲定義書」に追加して承認する必要があります。
[SMART_CONTENT]
開始フェーズ
開始フェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
■監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
■部門担当者 |
□ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
|
|||
フェーズのために準備するもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
分析フェーズ
分析フェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
□監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
■部門担当者 |
□ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
NetSuiteで実現する導入対象範囲と業務要件を文書化します
業務要件定義書(BRD - Business Requirements Document ) 業務要件定義書は、NetSuite アプリケーションの機能での実装範囲及び業務要件とのギャップの概要を記述した⽂書です。
業務要件定義書には、ユーザー側と導入担当会社側での同意をして同意のサインを行います。業務要件定義書にサインされたものが確定仕様書です。 業務要件定義書を基準にデータ移行計画や他システムとのインテグレーション計画、後続のフェーズで策定すべき文書が作られます。 BRD 策定時点で、導入プロセスのユーザー側、導入担当会社側で同意した「作業範囲定」の変更が発生した場合には コスト面、期間面の見直しが必要になる場合があります。 |
|||
フェーズのために準備するもの/過程で作るもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
設計フェーズ
設計フェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
□監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
■部門担当者 |
□ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
業務要件を満たすためのアプリケーションの設定、追加開発およびインテグレーション計画の設計を行います
|
|||
フェーズのために準備するもの/過程で作るもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
構築フェーズ
構築フェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
□監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
□部門担当者 |
□ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
業務要件を満たすためのアプリケーションの設定、追加開発およびインテグレーションを実装
|
|||
フェーズのために準備するもの/過程で作るもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
テストフェーズ
テストフェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
□監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
■部門担当者 |
■ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
テスト(UAT: User Adoption Test)の実施
|
|||
フェーズのために準備するもの/過程で作るもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
移行フェーズ
移行フェーズ |
|||
---|---|---|---|
担当者 |
■監督者 |
■プロジェクトマネージャ |
■プロジェクトメンバー |
■部門担当者 |
■ユーザー |
■開発者 / 設定者 |
|
タスク詳細 |
|||
エンドユーザートレーニング実施(ユーザー受入テスト終了後)
アプリケーションへのデータ移行実施
アプリケーション本番稼働最終準備 |
|||
フェーズのために準備するもの |
フェーズのアウトプット |
||
|
|
- カテゴリ:
- ERP
- キーワード:
- erp導入