債権債務の相殺消去とは

 2019.08.06 

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ビジネスにおける債権・債務とは一般的に、相手方に対して商品販売やサービス提供を行い将来的に支払われる代金を売掛債権と言い、反対に商品購入やサービスを受けて将来的に支払うべき代金を買掛債務と呼びます。

たとえば会社Aが商品やサービスを500万円で会社Bに提供した場合、AはBに対して500万円の売掛債権が得るため、500万円の代金支払いを請求する権利があります。一方、BはAに対して500万円の買掛債務が発生するため、500万円の代金を支払う義務があります。

このように商品やサービスを提供するタイミングで債権・債務が発生し、実際の金銭のやり取りが後日行われるのを“与信取引”と呼びます。上記の例では、BがAに対し期日通りに代金を支払えば、Aの売掛債権とBの買掛債務が消失します。

ただし、他にも債権・債務が消失させる方法があります。それが“相殺(そうさい)”です。相殺は法律で認められている債権・債務の消失方法で、実際にお金のやり取りを行わずとも消失が可能です。本稿ではその相殺についてわかりやすく説明していきます。

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相殺とは?

相殺とは、自社と相手方との意思表示により、自社が相手方に対して有する債権(自動債権)と、相手が事故に対して有する債権(受働債権)とを、相当額で消し合うことを意味します。

たとえば会社Aが会社Bから500万円を融資され、商品開発を行います。完成した商品をBに対して500万円で売り渡したと仮定しましょう。この場合は、AはBに対して500万円の売掛債権を有する一方で、500万円の貸金返済債務が発生しています。この時、500万円の売掛債権をもって500万円の貸金返済債務を消失させるのが相殺です。

このケースではお互いにお金のやり取りをするのは無意味なことがあるため、「これらの債権を対当額として相殺します」という意思表示があれば、両者の債権を相当額で消し合う効果を認めたことになり、相殺が成り立ちます。

相殺のメリット

上記のケースにて、Aの立場が自社として考えてみますと、相殺によってAは500万円の貸金返還債務(500万円の代金支払い)を免れたことになります。相殺の意思表示と合意のみでAは500万円を返済したのと同じ効果が得られますので、Aは現金の持ち出しが無くなります。 

さらに、Bに代金支払いの能力がなかった場合を想定すると、Aは代金回収ができない一方で貸金返還債務を履行しなければならないという負担があります。このケースでは相殺することにより、Aにとっては500万円の売掛債権を回収したのと同様の利益を得たことになります。

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相殺による債権・債務の消失が可能なケース

実務上の相殺には“法定相殺”と“約定相殺”の2種類があります。法定相殺は、法律にその要件が認められているものを指し、約定相殺は当事者の合意によって行うものを指します。

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法定相殺は法律上規定された条件を満たさなければ実行できません。ただし、相殺をする者の一方的な意思表示によって相殺できる点がメリットです。一方、約定相殺は法定相殺の要件を満たさなくても実行でき、法律上相殺が禁じられている債権や相殺適状にないケースについても相殺できる点にメリットがあります。

法定相殺の要件

法定相殺によって、自働債権と受働債権の対当額による消失、という法定効果を発生させるには、次の要件を満たす必要があります。

A)相殺適状

「2人が互いに」、「同種の目的を有する債務を負担する場合」、「双方の債務に弁済期があること」を相殺適状といいます。

●2人が互いに

相殺をする側とされる側が、互いに債権を有していることを指します。自社の第三者に対する債権や、第三者の有する債権を自働債権として、相殺することは原則としてできないことを意味します。ただし、下記のような例外が定められています。

連帯債務者の求償権、保証人の求償権、譲渡された債権が受働債権となる場合には、第三者に対する債権を自働債権とすることができる

連帯債務または保証債務を負担している場合、第三者の債権者に対する債権をもって相殺することができる

●同種の目的を有する債務を負担する場合

金銭債権であればお金、物の給付債権であれば同一の物といったように、同一のモノを目的とする債権が存在することを意味します。債務を現に負担していることが原則ですが、時効によって消失した債権については例外的に自働債権にすることが可能な場合があります。

●双方の債務に弁済期があること

自働債権および受働債権の弁済期が共に到来していることが原則です。ただし、受働債権は期限の利益を放棄すれば済むため、自働債権の弁済期が到来していれば良いと理解できます。

B)相殺禁止事由

債務の性質が相殺を許さないものであるとき、相殺はできません。たとえば「お互いに競業しない」という不作為債務や、反対に「お互いに協力して実施する」といった作為債務は、債務が現実に履行されなければ、そのような債務が発生した目的が達成できないため、債務の性質が相殺を許さないものと考えられます。

さらに、市版実務上、自動債権に「催告および検索の抗弁権」と「同時履行の抗弁権」が付着している場合にも、原則として相殺することはできない性質だと解釈されています。当事者が反対の意思を表示している場合においても、相殺はできません。契約によって発生する債務については予め相殺禁止特約といった形で表示するのが一般的です。

この他、民法上相殺が禁止されているケースは次の通りです。

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする場合
  • 扶養料や給料など差押えを禁止された債権を受働債権とする場合
  • 差押え・仮差押えを受けた債権を受働債権とする場合

C)相殺の意思表示

債権・債務の相殺は、相殺をしようとする者(自働債権の債権者)からの一方的な意思表示により行えます。この意思表示は条件や期限を付することができないので注意が必要です。

以上のように、法定相殺の要件をすべて満たしていれば、自働債権を有する債権者の意思表示のみで相殺を実行できます。

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相殺以外に債権を消失する方法とは?

いかがでしょうか?相殺は緊急時に適用する債権・債務の消失方法だと考えられがちですが、互いの信頼関係が成り立っている会社同士ならば、相殺によって取引を円滑に進めていけるメリットがあります。

そしてもう1つ、相殺以外で債権を消失する方法があります。それが“ファクタリング”です。ファクタリングは自社が有する売掛債権(自働債権)を別の会社に売買し、売掛金から手数料を差し引いた代金を得るという方法です。

売掛金から手数料が差し引かれるため、回収する代金は通常よりも少なくなりますが即現金化できる点や、代金未回収のリスクが無くなるというのがメリットです。最近ではファクタリングサービスを提供している会社も増えているので、債権消失の方法として利用するケースが増えています。

ビジネスには多種多様な取引方法があるので、この機会に自社にとって最適な取引とは何かを?を再考してみましょう。

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