DXが重要であるという認識が社会全体で認識されつつありますが、実際にはDXが進んでいない企業も少なくありません。具体的にどの程度進んでいないのか、またどのような課題を抱えているのかといったことは「DX白書2021」にて確認できます。
この記事では、DX白書2021の内容をわかりやすく解説するので、DXに関心のある企業の方は参考にしてください。
IPAの「DX白書2021」とは
「DX白書2021」とは、IPA(情報処理推進機構)が公表するIT人材に関する調査内容や技術動向がまとめられたものです。それぞれ「IT人材白書」「AI白書」として発刊されてきた調査内容ですが、近年のDX進展に伴って人材や技術、戦略を統合したDX白書を発刊するに至ったのです。
その内容としては、DXへの取り組みに関する現状やデジタル時代における人材に関すること、DXにとって重要な技術などが幅広く記載されています。また、2021年の大きな話題である新型コロナウイルスの流行と企業の動向に関しても分析されています。
なお、IPAとはサイバー攻撃への対策強化やIT人材育成に取り組む独立行政法人で、経済産業省が所管しています。ここではDX白書に言及しますが、同機構ではその他情報セキュリティに関しても多様な取り組みを行っています。
DX白書2021の内容まとめ
以下では、DX白書2021の具体的内容として、DXの取り組みに関する現状やDX戦略、そしてその推進に必要なデジタル人材、さらにはDXで欠かせない技術等についてまとめて解説します。
https://www.ipa.go.jp/files/000093705.pdf
1. DXの取り組み状況
DX白書2021では、最初に日本とアメリカ企業におけるDXの現状を示しています。
日本企業では、DXに取り組んでいるのが55.8%で、そのうち全社的に進めているのは21.7%にとどまっています。
他方、アメリカでは企業の79.2%がDXに取り組んでおり、全社的に進めている割合も36.6%に上ります。
このように日本とアメリカでは状況が大きく異なっており、業種別に見ると特に情報通信業、サービス業で差が大きいということもわかっています。例えば、日本の情報通信業では65%と国内の平均と比べれば少し大きな割合となっていますが、アメリカの製造業では98.9%とほとんどの企業でDXに取り組んでいるというデータが得られています。また、サービス業に関しては日本では42.3%と低水準であり、アメリカでは65.7%という値になっています。
日米双方で業種ごとの傾向は似ていますが、実際の取り組みでは大きな差をつけられている状況です。
2. DX戦略の策定と推進
DXの推進、とりわけ全社的な取り組みを推進するためには、経営陣やIT部門、事業部門などがDXに向けた戦略や危機感に関して共通の認識を持つことが大切であると示されています。
そこで、経営戦略を打ち立てる上層部のみが前向きになるのではなく、IT戦略、事業戦略とも統合したDX戦略の策定が欠かせません。部門間でのコミュニケーションを通して共通理解を形成し、改革に向けたコンセプトを共有しつつ推進施策に取り組む必要があるのです。
しかしながら、経営者やIT部門・業務部門との協調について調べた結果を見てみると、「十分にできている」と回答したのはわずか5.8%です。「まあまあできている」の回答を含めても、協調ができていると認識しているのは39.9%でしかありません。
この点、アメリカの企業であれば40.4%もの割合で「十分にできている」と回答し、「まあまあできている」も含めると86.2%も協調できているという認識を持っているのです。
こういった部門間の協業・協調はDXを進めていく上での前提となるため、部門をまたいだコミュニケーションの活発化も日本企業の課題になっていることがわかります。
3. デジタル人材
企業に改革をもたらすには、これを推進するリーダーが必要です。
ただ、このリーダーに求めるスキルやマインドにも日本とアメリカで大きな違いがあります。
企業変革を推進する上でリーダーにあるべきスキルやマインドを尋ねた結果、日本の企業だと「リーダーシップ」が最も多い割合で50.6%でした。その他「実行力」や「コミュニケーション能力」、「戦略的思考」を重視する傾向が表れています。
一方、アメリカの企業だと「顧客志向」が最も多い割合で49.3%でした。他に割合が多かったものとして「業績志向」、「変化志向」、「テクノロジーリテラシー」が挙げられています。
他の調査結果も見比べた結果だと、DXを推進するリーダーに求める資質として日本では個人の能力を重視しているのに対し、アメリカでは成果と直接関連がある項目を重視しているという違いがあることがわかっています。
また、人材の確保はDX推進においてとても重要な課題であると認識されていますが、日本では「量も質も不足している」という認識を持っている企業が多いと示されています。人材の量が不足していると回答したのが76%、質が不足していると回答したのは77.9%に上ります。
そこで特に日本においては「リスキル」の重要度が増していると評価されています。これは、DXを推進するための社員の学び直しを意味する言葉です。とりわけAIやIoT、データサイエンスなどの領域についての学び直しが特に重要と考えられています。
4. DXを支える手法と技術
DX人材は欠かせませんが、ビジネス環境の変化に迅速・柔軟に対応できるITシステムも必要です。
しかしながら、ITシステムに必要とされる「変化に対応して安全に更新できること」「柔軟性があり外部サービスとの連携が取れること」「必要な情報をタイミングよく取りだせること」「部門をまたいで標準化した分析基盤であること」に対する日本企業の達成度は、いずれもアメリカと比べて低い水準にとどまっています。
日本ではどの項目についても達成度が3割に満たないのに対し、アメリカではどの項目も6割程度にまで達しています。
そこで、日本企業は経営者等がITシステムに対するニーズを明確化するとともに、ビジネスニーズに整合するシステムの構築を目指すことの必要性があると評価されています。
また、DXを支える重要なIT基盤の構築や運営効率向上のためにクラウドが注目されています。
コンテナやマイクロサービスなど他の技術と比べると、クラウドの活用は日本でも普及しつつあるとされていますが、ハイブリッドクラウドに関しては活用割合が相対的に低いです。
このことから、複数クラウドによる効率的運用はまだできていない可能性があると示されています。
なお、コンテナやマイクロサービスに関しても迅速なシステム更新への対応のためには重要な技術であるため、今後これらの活用も視野に入れるべきとされています。
DX実現に求められる企業変革
DXを実現するために必要なこととして、経産省がまとめた「DXレポート2」にて、「業務環境をオンライン化」「業務プロセスをデジタル化」「従業員の安全・健康管理をデジタル化」「顧客接点をデジタル化」することが挙げられています。
近年はクラウドの利用も進んでいますが、SaaSを活用すれば上記アクションのうち、業務プロセスをデジタル化させることに特に効果的とされています。
ただし、クラウドサービスも盲目的に導入してはサイロ化という大問題を引き起こすおそれがあります。そのため、脱サイロ化の視点も持ってサービス選定を行うことが大事です。オラクルのSaaSであれば、業務プロセス全体を網羅した一つのデータモデルとして確立させられるので、フロントからバックオフィスまで、広い領域をカバー可能です。くわえて、企業の現状におけるニーズや企業体力に応じた段階的な導入ができるため、将来の拡張を見据えたスモールスタートにも対応できます。
まとめ
DX白書2021では、日本企業とアメリカ企業を比較しつつ、DXの推進具合や課題などが示されています。DX白書2021を用いて日本全体の状況と自社の状況を比較すれば、DXの進捗について、国内における相対的な評価も行えるでしょう。
なお、DXに資するITシステムの導入も重要であると示されていますが、上で紹介したようにオラクルのSaaSであればサイロ化の解消も図りやすいためおすすめできます。財務と管理会計の両立が図れる上、企業環境に応じた段階的導入も可能なため、一度検討してみると良いでしょう。
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