2018年9月に経済産業省が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表して以来、多くのメディアがDX推進に関する話題を取り上げ、また、企業もDXを推進しています。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用したビジネスモデル・製品・サービスの創出や、企業の風土・習慣・組織構成などを変革するための取り組みです。
DXレポートでは、2025年までに日本企業のDXが進まない場合、2030年までにかけて年間12兆円の経済的損失が発生すると試算されています。また、同年12月には「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン (DX 推進ガイドライン)」が発表されましたが、企業のDXはまだまだ進んでいないのが現状です。
本記事でご紹介するのは、2019年7月に経済産業省が新たに発表した「DX推進指標」です。これは何のための指標で、どう活用すればよいのか?分かりやすく解説しますので、DX推進を検討している方はぜひご一読ください。
DX推進指標とは?
DXが注目されるようになったから、多くの企業がデータおよびデジタルの活用による変革を重視しています。しかしながら、以下のような課題が指摘されていることもまた事実です。
- どんな価値を創出するか?ではなく、AIを使って何かできないか?といった発想に偏りがち
- 将来に対する危機感が全社的に共有されておらず、DXに対する関係者の理解が得られていない
- DX開始の号令はかかるものの、それを実現するための経営としての仕組みや構築が伴てっていない
これらの課題を乗り越えるためには、経営者、経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などの関係者がDXで何を実現したいのか?DXをめぐる自社の現状や課題、次に取るべきアクションは何か?などの認識を共有することと、その上で具体的なアクションに繋げていくことが重要です。
これを具体的に示した「DX推進ガイドライン」では、「(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み」「(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」という2つの柱があります。経営者や社内関係者が自社の取り組みの現状や、あるべき姿と現状のギャップ、あるべき姿に向けた対応策について認識を共有し、DX推進に向けたアクションを取っていくための気づきの機会を提供するものとして、DX推進指標が策定されています。
DX推進指標の使い方
DX推進指標の活用方法は、自己診断を基本として経営層以下の関係者(経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門など)がDX推進にあたっての課題に対する気づきになる機会を想定しており、以下のような使い方を想定しています。
① 認識共有・啓発
「DX推進のための経営仕組み」と「その基盤となるITシステムの構築」に関して、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者が集まって議論しながら、関係者間での認識の共有を図り、今後の方向性の議論を活性化すること。なお、関係者が集まって議論する前に、関係者個々に自己診断し、関係者間でのギャップを明らかにする。
② アクションにつなげる
自社の現状課題や認識を共有した上で、あるべき姿を目指すために次に何をするべきか?というアクションについての議論を行い、実際のアクションにつなげること。各項目に点数を付けるだけでなく、アクションについて議論し、実際のアクションにつなげることが重要。
③ 進捗管理
翌年度に再度診断を行い、アクションの達成度合いを継続的に評価することにより、DXを推進する取り組みの経年変化を把握し、自社のDXの取り組みの進捗を管理する。一度診断を行っただけでは持続的なDX実行につながらず、年次ではなくより短期的なサイクルで確認すべき指標・アクションを自社のマネジメントサイクルに取り込んで管理することが重要。
[RELATED_POSTS]DX推進指標の構成
次に、DX推進指標の構成をご紹介します。まずは大きな枠組みとして「①DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」と「②DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」があり、さらに以下のような中分類があります。
① DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
- 「DX推進の枠組み」(定性指標)
- 「DX推進の取り組み状況」(定量指標)
② DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
- 「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)
- 「ITシステム構築の取り組み状況」(定量指標)
これらの指標にはそれぞれ「クエスチョン」が設定されています。キークエスチョンは経営者自らが回答することが望ましいものであり、サブクエスチョンは経営者が経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などと議論をしながら回答するものとなります。
<DX推進指標の構成>
このうち、定性指標に関してはDX推進の成熟度を6段階で評価します。最終的なゴール(レベル5)となるのは「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」とし、成熟度評価を利用することで自社が現在どのレベルにいて、次にどのレベルを目指すかを認識するとともに、次のレベルに向けて具体的なアクションに繋げることが期待されています。
<成熟度レベルの基本的な考え方>
続いて定量指標の評価では、意思決定のスピード向上や新規顧客・サービスの拡大に関する指標など、DXの実行によって経営にもたらされる変化を反映できるものを設定します。自社がDXによって伸ばそうとしている定量指標を自ら選択して算出するとともに、たとえば3年後に達成を目指す当該指標に関する数値目標を立て、進捗管理を行っていくといった活用方法を想定しています。
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DX推進指標活用のポイント
最後に、DX推進指標を活用するにあたり重要なポイントを簡単にご紹介します。
ベンチマーキング
競合他社をベンチマークとして、自社と他社のDX推進を比較します。その中でさまざまな知見が創出され、自社にとって今後の課題や取るべきアクションは何か?が明確になります。
先行事例活用
DX推進に関する連行事例を積極的に参考にしながら、自社に最適なDX推進指標の取捨選択を行います。ただし、先行事例をそのまま施策として取り入れるのではなく、あくまで参考にします。
アドバイザー活用
ITコーディネーター協会やコンサルティングファームなどに相談し、DX推進の現状について意見をもらうことも大切です。
いかがでしょうか?DX推進を目指すにあたったり、経済産業省が策定したDX推進指標を活用しながら自己分析と仮説検証を繰り返し、自社にとって最適なDX推進を目指していただきたいと思います。
参考資料:「DX 推進指標」とそのガイダンス(https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf)
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