以前に比べて業務効率化や生産性向上のかけ声が、いたるところから聞こえてくる時代です。内閣府は、一億総活躍社会に向けた働き方改革を本格的に推進しており、2019年4月からは働き方改革関連法案が施行されています。
しかしながら、すべての企業が業務効率化や生産性向上で高い成果をあげているわけではありません。そこには様々な問題がありますが、中には「業務効率化と生産性向上の意味を混同し、適切な施策が実施できていない」という企業も多いでしょう。
本稿では、意外と知らないけれど今さら人には聞けない、業務効率化と生産性の違いについて解説します。
生産性向上とは何か?
最初に“生産性”の意味をご紹介します。生産性はビジネスにおける1つの指標であり、投入した労働リソース(インプット)に対してどれくらいの付加価値(アウトプット)を生み出せたかをあらわします。式で表すと下記のようになります。
生産性=アウトプット(付加価値)÷インプット(労働リソース)
「生産性が高い」という状態は、投入したインプットに対してより多くのアウトプットに成功している状態を指します。要するに、生産性向上は「ビジネスに投入するリソースを有効活用して、最大限の価値を生み出すこと」を指します。
では、日本の平均的な労働生産性はどれくらいでしょうか?OECD(Organization for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)の調査によると、2017年の日本の時間あたりの労働生産性は46ドル(約4,975円)となっています。つまり、日本人は1時間あたり平均5,000円弱のアウトプットを生み出しているということです。
一方、米国の時間あたりの労働生産性は日本の71%高い72ドルとなっています。日本は長年主要先進7ヵ国中最下位をマークしており、OECD加盟35ヵ国中でも20位です。1970m年以降、ずっとこの水準をキープしているので、日本の労働生産性は決して高いとは言えないでしょう。
引用:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2017 年版~日本の時間当たり労働生産性は 46.0 ドル(4,694 円)、OECD 加盟 35 ヵ国中 20 位~」
近年、労働生産性という言葉を見聞きすることが多くなったのは、日本の低い労働生産性に危機感を抱く企業が多くなっているから、とも考えられます。
業務効率化とは?
それでは、業務効率化とは何でしょうか?これは文字通り、「業務効率を高めるための施策」です。同じ業務であっても、効率良く行えるか否かで生産性が大きく変化します。要するに生産性向上に向けた具体的な施策が業務効率化です。
業務効率化にはさまざまな方法があり、基本的には時間的・労働的なコストをかけて業務効率アップに向けた施策を展開していきます。たとえばBPR(Business Process Reengineering)を実施した業務遂行にかかる時間を削減したり、専用ツールを導入したりして直接的な効率化効果を得ます。
具体的には、業務の「ムリ、ムダ、ムラ」を排除するのが業務効率化です。これらを業務プロセスの中から排除することができれば、生産性向上へと繋げ、より少ないインプットでより多くのアウトプットを得ることが可能です。
つまり、業務効率化とは生産性向上を成功させるための施策だと言えます。
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業務効率化と生産性向上が必要な理由
業務効率化も生産性向上も、多くの企業にとっての至上命題です。多方面でツール導入やテレワーク等が実施されており、中にはユニークな事例もあります。そこまでして、業務効率化と生産性向上が必要とされている理由とは何でしょうか?
理由1. 労働力不足
みずほ総合研究所の調査から、今から約45年後の2065年には、日本の労働力人口が現在の6割程度の水準まで下がってしまうことが分かっています。2016年の労働人口は6,648万人だったのに対し、4,000万人弱まで減少する見込みです。3,000万人近くもの労働人口が減少すれば、至るところで労働力不足が発生するのは明白です。
この数字に対して「45年後のことだから関係ない」と考えてはいけません。すでに労働力不足の煽りを受けている企業は多く、従業員1人1人の負担が増えることで労働環境は悪化しています。しかし、現状を維持するわけにはいきません。2020年4月からは罰則付きの労働時間規制が中小企業にも適用されるため、早急な労働力不足対策が必要です。
その対策として業務効率化と生産性向上が重要だと考えられています。高度な業務効率化によって生産性が飛躍すれば、労働力不足を解消する一策になります。
理由2. グローバル競争の激化
ECサイトを通じて国境を簡単に超えられるようになった現在、海外企業との競争が激化しています。もはや海外進出に現地法人を設置する必要はなく、海外向けのECサイト(越境EC)を展開するだけで、簡単に海外市場へ参入できる時代です。
日本企業の多くは技術力を生かして海外市場にさまざまな商品を投入していますが、海外企業から見ても日本は大きなマーケットです。日本製商品に対するニーズは飽和状態であり、海外製商品が徐々に受け入れられていく中、海外企業に市場シェアを奪われるリスクが倍増しています。
そうした海外企業にどう対抗すればよいか?課題はより高い商品力を生み出すことと、海外企業には真似できないようなカスタマーサービスを充実させることです。消費者に如何にして「やっぱり日本企業が一番だ」と思わせられるかが、成功のキーポイントになります。
しかし前述のように、日本の労働生産性は主要先進7ヵ国中最下位ですし、OECD加盟35ヵ国で見ても下から数える方が早いのが現状です。激化するグローバル競争を勝ち抜くためには、業務効率化と生産性向上によって新しいリソースを生み出し、より少ないインプットでより多くのアウトプットを生み出すことが強く求められていきます。
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業務効率化と生産性向上には、ツールの導入を!
高度な業務効率化を実施し、高い生産性向上効果を得るためにはやはりツールが必要になります。海外先進企業の多くはツールを駆使し、可能な限り生産性を高めています。日本企業が同じように生産性を高めるには、ツール導入が欠かせません。
ただし、ツールといってもさまざまな種類のものがあるので、業務効率化や生産性向上の目的と目標を明確にした上で、経営課題へピンポイントに作用するツールを選ぶことがとても大切です。
たとえばERP(Enterprise Resource Planning)は、部門ごとに分断的に運用されている基幹系システムを、あらかじめ統合したパッケージソフトウェアです。ERPを導入することで、基幹系システムを1つのデータベースで管理でき、データ連携や業務プロセス連携等が簡単に行えます。全社的な業務効率化と生産性向上を実現するツールです。
このERPも含め、さまざまなツールの導入を検討した上で、自社にとって欠かせないツールを選択して業務効率化と生産性向上を成功させましょう!
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