連結決算とは?手順やメリット・デメリットを解説

 2023.05.23 

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連結決算の実施を考えていませんか?業務の効率化が重視される現在において、連結決算は注目を浴びています。連結決算とは、グループ企業全体を通して行う決算のことです。この記事では、連結決算の概要、手順、メリット・デメリットなどについて解説します。実施する際の注意点についても触れるので、読了後は連結決算に関する基礎知識について理解できます。

連結決算とは?手順やメリット・デメリットを解説

連結決算とは?基礎知識を学ぼう

連結決算は、グループ企業を保有する大企業にとって重要な決算方法です。連結決算の概要や、実施する目的について理解しておきましょう。

連結決算とは

連結決算とは、グループ企業全体を通して行う決算のことです。親会社だけでなく、国内・海外の子会社、関連会社などをひとつの組織としてまとめます。これによって、グループ全体の経営状況を把握できます。なお、通常の決算と同じように、財務諸表を作成しなければなりません。

日本ではもともと、連結決算による情報開示は広く実施されていませんでした。しかし、2000年3月におけるディスクロージャー制度の見直しによって、情報開示のメインは個別決算から連結決算へと移行しました。

連結決算を行う目的

連結決算を行う目的は、「グループ全体の経営状況を明確化し、統括的に把握すること」と「株主や投資家に向けて、投資情報を提供すること」です。

グループ会社が単独決算を行うと、数値の操作(土地や有価証券の譲渡や、子会社への販売増加など)によって経営状況の実態が不透明になる点が問題でした。連結決算を行えば、グループ企業内の取引が除外されるため、正確な数値を出すことが可能です。そして、株主や投資家は、こうして提示された適切な情報をもとに投資を行います。

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親会社と子会社・関連会社の判断基準

連結決算を行う際、親会社と子会社・関連会社の振り分け方に悩む人が目立ちます。親会社と子会社の定義や株式保有率による判断基準について知りたい方は参考にしてください。

親会社と子会社の定義

親会社とは、「他の企業の財務及び営業または事業の方針を決定する機関(株主総会とそれに準ずる機関、いわゆる意思決定機関)を支配している企業を指します。一方、子会社とは親会社の定義に記されている「他の企業」ということになります。

株式保有率による親会社・子会社の判断基準

一般に、他の企業の株式を50%以上保有しているとその企業の支配権を握っていると判断され、親会社と子会社の関係が成立します。ただし、株式保有率が50%未満だからといって関係が成立しないわけではありません。上場企業の場合は、株式の保有率が20~30%ほどだとしても、実質的に支配権を持っていると判断する場合が多いです。さらに低い株式保有率でも親会社と子会社の関係が成立するケースがあり、主に次のような要件を設けています。

他の企業の株式の保有率 他の企業を支配していると判断される基準

50%超(過半数) 他の企業の株式を過半数、自己計算において保有している

40~49% 他の企業の株式40~49%を、自己計算において保有している
緊密社の株式や役員関係などの一定の条件に該当する

0~39% 他の企業の株式0~39%を、自己計算において保有している
緊密社とあわせて他の企業の株式を過半数所有している
役員関係などの一定の条件に該当する

このように、他の企業の株式を過半数保有していない場合であっても、他の企業の親会社と判断されるケースはあります。上表内に記してある「一定の条件」を簡単にご紹介します。

条件1. 密着社、同意者の株式
親会社となる企業の役員が所持している当該企業(子会社と判断される企業)の株式数の過半数を占めている

条件2. 役員、使用人の関係
親会社となる企業の経営者や役員が当該企業の役員として在籍しており、経営意思決定機関の構成員の過半数を占めている

条件3. 契約関係
親会社となる企業が当該企業の財務や営業、あるいは事業方針の決定を支配するような契約が存在する

条件4. 資金関係
親会社となる企業が当該企業の資金調達額の総額に対し過半について融資している

条件5. その他の事実関係
その他、他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在する

連結決算の手順

連結決算は、決められた手順に沿って行います。

  1. それぞれの企業で個別財務諸表を作る
  2. 個別財務諸表を合算させる
  3.  親会社が連結修正を行う
  4. 連結財務諸表を作成する

1. それぞれの企業で個別財務諸表を作る

まず、グループ内の企業がそれぞれ個別財務諸表を作成します。個別財務諸表合算後に整合性が保てるように、全会社の会計方針を統一させることが重要です。会計方針とは、企業が使用する会計処理の方法を指します。ちなみに、使用する会計システムが企業ごとに異なっていても問題ありません。

2. 個別財務諸表を合算させる

次に、企業ごとに作成した個別財務諸表を合算します。こうして始まる一連の作業が、連結決算です。各子会社が作成した個別財務諸表を親会社が集め、合算します。もし海外に子会社が存在する場合は、レート換算も行いましょう。

3. 親会社が連結修正を行う

続いて、必要な部分の連結修正を行います。連結修正とは、決算を連結する上で必要な、数値の調整のことです(親子間の内部取引における相殺、未実現損益の消去、のれんの償却など)。親会社が子会社から「連結パッケージ(連結修正に必要なデータ)」を手に入れたあと、データが揃い次第、連結修正が実施されます。

具体的な連結修正の方法は、以下の通りです。ここでは、「親子間の内部取引における相殺」、「未実現損益の消去」、「のれんの償却」を例に挙げます。

  • 親子間の内部取引における相殺
    親会社と子会社の間で売上などの取引が発生していた場合、売上高と売上原価の相殺などを行い、該当金額を消去します。内部取引相殺の目的は、グループ外部との取引状況を明確にすることです。これにより、親会社が子会社へ在庫を売りつけることによる売上の過大計上などを防ぐことができます。
  • 未実現損益の消去
    未実現損益とは、グループ企業間で取引を行った結果、社外に販売されず、在庫として残っている商品の利益のことです。親会社が子会社に商品を販売したものの、当期中に完売しなかった部分については、売上原価に未実現損益にあたる額を加え、それと同じ金額を子会社の商品として計上された金額から差し引きます。この作業によって、利益のかさ増しを防ぎます。
  • のれんの償却
    のれんとは、企業買収などの際に発生する価値のことです。定額法を使って、毎年同額を減価償却します。のれんの償却によって、買収した企業を含むグループ企業全体のパフォーマンス力を把握できます。

4. 連結財務諸表を作成する

連結修正が完了したあとは、連結財務諸表を作成してください。連結財務諸表は、さまざまな書類によって構成されます。

連結財務諸表の種類

連結財務諸表には、以下のような種類があります。

  • 連結損益計算書
  • 連結貸借対照表
  • 連結キャッシュフロー計算書
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結附属明細書

連結損益計算書

連結損益計算書に記載されているデータは、グループ企業全体の経営成績です。連結P/Lとも呼ばれます。企業ごとの損益計算書の合算から、親子間での売上や仕入取引を相殺して計算します。グループ全体の収益や費用について把握できる書類です。

連結貸借対照表

連結貸借対照表は、グループ企業全体の財務状況を表す書類です。連結B/Sとも呼ばれます。親会社と子会社の貸借対照表を合算して、内部取引である資本金や投資金を相殺して計算します。ただし、子会社の分類によって連結方法が異なります。一定条件を満たした子会社はすべて連結しますが、関連会社は持分法で連結しなければなりません。

連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュフロー計算書とは、グループ企業全体の資金の流れを表す書類です。会計年度にあたるキャッシュフロー状況を、営業活動、投資活動、財務活動ごとに分けて作成します。書類の作成方法には、「原則法」と「簡便法」の2種類が存在します。

  • 原則法…グループ全体の個別キャッシュフロー計算書を合算したあと、企業内取引を相殺する方法
  • 簡便法…連結損益計算書と連結貸借対照表をもとにして作成する方法

どちらの方法を選んでも問題はありませんが、実務的な観点から、簡便法がよく利用されています。

連結株主資本等変動計算書

連結株主資本等変動計算書とは、連結貸借対照表において純資産が変動した際の事由を述べる書類です。純資産の中でも、特に親会社における株主資本の変動額の事由を明示するために提出します。「前期末残高」、「当期変動額」、「変動事由」、「当期末残高」といった項目を埋めていきます。

連結附属明細書

連結附属明細書とは、補足事項を記載する書類です。必要に応じて提出するため、必ず作成しなければならないわけではありません。具体的には、以下の内容が例に挙げられます。

  • 有価証券明細表…企業が保有する有価証券について、銘柄、数量、貸借対照表計上額を記載します。
  • 固定資産等明細表…企業が保有する有形固定資産や無形固定資産について、期首残高などを記載します。
  • 社債明細表…企業が発行した社債に関する書類です。発行総額や期首残高などを、社債の銘柄ごとに記載します。
  • 借入金等明細表…借入金の内訳を示す書類です。期首残高や期末残高について記載します。
  • 引当金等明細表…貸借対照表における引当金について、期首残高や期末残高について記載します。期首及び期末に残高がない場合は、作成不要です。

連結決算を行う3つのメリット

連結決算を行うと、グループ全体がさまざまなメリットを享受できます。ここでは、3つのメリットを取り上げます。

  1. グループ会社全体の業績が明確になる
  2. 不正防止につながる
  3. 銀行から融資を受けやすい

1. グループ会社全体の業績が明確になる

1つ目は、グループ会社全体の業績を把握でき、明確な数字を公表できることです。業績が明示されていると、株主や投資家が意思決定をする際に役立ちます。それだけではなく、信ぴょう性のあるデータに基づいて、グループ全体の経営方針を決めることも可能です。広い視野を持って、今後の経営に取り組めます。

2. 不正防止につながる

2つ目のメリットは、不正を防止することです。連結決算を行うことで、飛ばしや利益の不正操作などを防ぎます。

飛ばしとは、企業に悪影響を及ぼす損失(不良資産や株の損失など)を、グループ内の他企業に押し付けることです。本来よりも企業の財政状況や経営成績が良好な状態に見えるように、業績をごまかすことが可能です。

利益の不正操作とは、売れなかった商品在庫などを、グループ内の他企業に売却することです。実際よりも利益をかさ増しして計上できます。

このような不正行為を事前に防ぎ、クリーンな企業経営を目指します。

3. 銀行から融資を受けやすい

3つ目のメリットは、銀行から融資を受けやすくなることです。グループ企業全体の経営状況を明確に証明できるので、銀行からの信頼を得られやすくなります。結果的に融資までの期間を短縮化できるため、競合他社よりもスピード感のある事業展開が実現できます。連結決算を行うことで、子会社の取引実態調査を簡略化できることが理由です。

連結決算を行う2つのデメリット

連結決算にはメリットだけでなく、デメリットも発生します。ここでは、2つの要素をピックアップしました。

  1. 手間と時間がかかる
  2. 監査を受ける必要がある

1. 手間と時間がかかる

連結決算を行うと、膨大な手間と時間がかかります。特に連結財務諸表の作成には、データ収集や相殺処理だけでなく、子会社との連絡作業なども必要です。担当者の負担が激増すると予想されます。子会社数が多い大企業ほど実施しなければならない工程が多いため、多くのリソースを割かなければなりません。

2. 監査を受ける必要がある

監査を受けなければならない点も、大きなデメリットです。連結決算を行うと、任意の場合も監査を受けなければなりません。つまり、ミスは許されないということです。また、小規模な企業が連結決算を行おうとしても、監査に対応できる人員を用意できない可能性があります。

連結決算の前に知っておきたい注意点

連結決算を行う前に、このような注意点に気をつけましょう。

  • スケジュール管理を徹底させる
  • 会計処理の方法を統一させておく
  • 連結パッケージを準備する

スケジュール管理を徹底させる

連結決算の実施スケジュールを管理しなければなりません。なぜなら、上場企業は決算日から45日以内に決算情報を開示する必要があるからです。これは最低ラインの締切であり、本来なら30日以内に開示することが望ましいとされています。もし業務に不備が発生しても、余裕を持って対応できるスケジュールを立てましょう。

会計処理の方法を統一させておく

会計処理方法を統一することも重要です。もし処理方法が企業ごとに異なっていると、相殺を行う上で、会計処理に時間がかかってしまいます。ケアレスミスも発生しやすくなるため、普段からグループ企業全体で処理方法を統一化しましょう。

連結パッケージを準備する

前もって、連結パッケージ(連結修正に必要なデータ)の準備も行いましょう。勘定科目などの統一化されたフォーマットを使って、データを提出してもらいます。この仕組みを選ぶと、スムーズに合算できる上に、ミスも減らせます。なお、連結パッケージのフォーマットは、Excelなどでも作成可能です。

ERP・EPMの導入で連結決算が楽になる!

連結決算は、多くの子会社や関連会社を有する企業が実施すべき決算方法です。しかし、相殺処理をはじめとした業務が煩雑であるというデメリットもあります。

グループ間の取引を相殺するためには、その取引金額を透明化する必要があります。親会社・子会社間ではもちろんのこと、子会社同士の取引においても、相手先別明細で消去対象となる取引金額を把握できなければいけません。さらには、グループ全体で取引金額の全体像を正確にとらえる必要もあります。全体を通じて売上高や売上原価、取引先との関係を表すためのシステムが欠かせません。

こうした連結決算を楽にしてくれるシステムがERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズ・リソース・プランニング)やEPM(Enterprise Performance Management:エンタープライズ・パフォーマンス・マネジメント)です。特にクラウドタイプのERPやEPMはインターネットベースでグループ全体が容易に接続できるため、親会社が子会社や関連会社の会計情報を俯瞰しながら、連結決算に向けた調整が行えるようになります。

連結決算に最適なシステムを導入しよう

連結決算を実施すると、グループ企業全体の経営状況を把握できるなど、多くのメリットが感じられます。実施にあたって業務の負担は増えますが、連結決算を簡略化できるシステムを使用すれば問題ありません。クラウドタイプのERP・EPMを導入することで、グループ企業全体の調整作業が、インターネットベースで行えます。担当者の負担やヒューマンエラーも減らせるため、ぜひ導入してみてください。

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