コンプライアンスとは?違反事例から対策を考える

 2020.10.22 

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昨今、「コンプライアンス」という言葉を耳にする機会が多くなっています。コンプライアンスとは、企業が社会の信用を維持しながら経営を続けていくうえで欠かせない概念です。本記事では、コンプライアンスという言葉の意味や、コンプライアンスが重要視されている背景、また実際に合ったコンプライス違反の事例、コンプライアンスを守るための対策方法をご紹介します。

コンプライアンスとは?違反事例から対策を考える

コンプライアンスの意味とは?

「コンプライアンス(compliance)」とは、英語で規則や法令、命令に従うことを意味する言葉です。日本語では「法令遵守」と訳されることが多く、企業が法律や社会規範、倫理観に反することなく、公平かつ公正に業務を遂行することを指しています。

主に経営やビジネスの分野で使われており、「コンプライアンスを重視する」、「コンプライアンスに違反する」といった表現で使われることが一般的です。

コンプライアンスを徹底することは、企業の不正防止につながるだけでなく、企業が社会からの信頼を得たり、認知度を上げたりするうえでも重要な意味を持ちます。

コンプライアンスが必要とされるようになった背景

コンプライアンスというワードをメディア等で目にする機会が多くなっていますが、なぜ今になって、コンプライアンスが重要視されるようになったのでしょうか。

背景の1つには、2000年以降に相次いだ企業の不祥事があります。企業によるコンプライアンス違反の例をみると、脱税や粉飾決算、談合、データの改ざん、食品の偽装表示、個人情報の流出、過労死、賃金の不払いなど、枚挙に暇がありません。

さらに、自由競争を促すための規制緩和にともない、企業に自己責任を求める体質が進んだことや、企業の不祥事や海外の動向に鑑み、会社法および公益通報者保護法が改正されたことも、社会的なコンプライアンス意識が高まるきっかけとなりました。

コンプライアンス違反が明るみに出た企業は、社会的な信頼を失うだけでなく、最悪の場合、経営が存続できなくなるケースもあります。

それだけで済めばまだしも、取引先の企業や顧客にまで大きな損失を与えてしまうことも珍しくありません。

そのような事態を避けるため、企業は法令や社会のルールを守り、モラルある活動を行わなければなりません。また、経営陣から社員まで企業活動に関わる全員が、コンプライアンスに関して正しい知識を身につけることも重要となります。

コンプライアンス違反の事例

ここでは、実際に起こったコンプライアンス違反の事例を具体的に紹介します。どのような行動がコンプライアンス違反へとつながってしまうのかを理解する一助となるでしょう。

個人情報の流出

顧客の個人情報が流出した事件の中でも、近年、特に大きく取り上げられたのが、2014年に発覚したベネッセコーポレーションの一件です。

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ことの発端は、ベネッセの通信教育サービスの会員から「全く関係のない学習塾や予備校からダイレクトメールが届く」という問い合わせが相次いだことでした。そこでベネッセが社内調査を実施したところ、個人情報の管理を委託していた企業の派遣社員により、約3000万件の顧客データが持ち出されていたことが発覚しました。この件に関して、ベネッセは被害者の立場でもありましたが、顧客への見舞金の支払いなどで特別損失を計上し、最終的には約136億円もの赤字を被る結果となりました。

情報漏洩は企業だけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼします。情報の取り扱いには細心の注意を払いパソコンのウイルス対策はもちろんのこと、場合によっては社外への持ち出しを禁止するなど規定を定めておくことが重要です。

労働に関する問題

労働問題では、大手広告代理店・電通の新入社員が2015年、過労やパワハラを苦に自殺を図った事件が記憶に新しいでしょう。この件をきっかけに、電通の東京本社では、労使間協定の上限を最大19時間も超える違法残業が行われていたことが発覚します。事件後、電通は労働基準法違反に問われ、東京簡易裁判所から罰金50万円の判決を言い渡されました。

このような長時間労働やさまざまなハラスメントは、企業のイメージを落とし、ひいては業績を悪化させることにも繋がりかねないのです。

不正会計

バブルの崩壊や、リーマンショックによる景気悪化を背景に増加しているのが、不正会計です。不正会計が原因で倒産を余儀なくされた事例としては、非鉄金属の老舗専門商社・藤崎金属の一件があります。

同社の売上高は、2007年8月期に最高の49億円を記録し、その経営は順風満帆に思われていました。ところが、リーマンショックによって主力の自動車向け部品の売上が低迷したことで、経営状態は一気に悪化。2009年8月期の売上高は約24億円と、前期の半分にまで減少してしまいます。その後も10年以上にわたり、円高と売上縮小によって苦しい経営が続いていた最中、2015年に先代の社長が急逝。新社長の就任を機に、先代が会社の利益を水増しして計上していたことが発覚し、最終的に同社は破産へと追い込まれました。対外的な信用を維持しようとして業績低迷を隠すことは、結果として企業価値を損ねる行為に他ならないのです。

不正受給

不正受給とは、本来受け取る資格のない助成金を虚偽の申告によって受け取ったり、受け取ろうとしたりする行為のことです。例としては、福島県南相馬市への工場新設に際し、震災関連の助成金を不正受給した、プリンター製造・販売のルキオのケースがあります。

同社では納入業者に対して、社長自らが虚偽の書類作成を指示し、機会の購入費などを水増しして請求させていました。ルキオのほかにも、訪問介護事業所が介護報酬を水増しして請求していた事件や、新型コロナの影響で収入が悪化した企業に対する持続化給付金を、不正に受給していた事件などがあります。不正受給が発覚すると、補助金の返還を求められるだけでなく、詐欺罪に問われる可能性もあります。結果的に事業停止や破産申立に追い込まれるケースも少なくありません。

コンプライアンス違反を起こしてしまったら?

故意ではないとしても、気づかぬうちにコンプライアンス違反が起こってしまう可能性はあります。その場合、どうすればいいのでしょうか。

まず問題が発覚したら、スピーディに対処していく必要があります。企業が自主的に問題を公表するのと、マスコミに先に報道されてから対処を始めるのとでは、社会に与える心証も大きく異なり、また被害の規模も変わってくるでしょう。ここで事実を隠蔽しようとしたり、責任から逃れようとしたりすれば、事態が余計にややこしくなる危険性があります。

企業のトップがまずやるべきことは、事実関係を正確に把握するべく、調査チームを立ち上げることです。調査を終えたら、事実を詳細に説明するとともに、問題を起こしたことに対して真摯に謝罪します。その後も再発防止に向けて、誠意を見せていくことが企業の信頼回復の鍵となるでしょう。

また、不正を行った社員の処分は慎重に行うことも重要です。該当者を性急かつ安易に処分することは、かえって企業のイメージを悪くしたり、社員からの反感を買ったりすることに繋がりかねません。経営陣などだけで判断せず、外部の弁護士や調査委員会の意見を仰ぐ必要があります。

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コンプライアンスを守るための取り組み

続いては、コンプライアンスを守るために企業が取り組むべき対策を見ていきましょう。

社内ルールを徹底する

コンプライアンス違反を起こさないためには、社内ルールを明確化し、それらを徹底させることが第一です。事業所や部署ごとに発生リスクのある違反行為を洗い出し、行動基準に落とし込むことで、何がルール違反に該当するのかがわかりやすくなります。

一度ルールを作成して終わりではなく、新たな違反事例があれば追加するなど、必要に応じてルールを改訂していくことも大切です。

社内で教育や研修を定期的に行う

コンプライアンスを遵守するには、定期的な教育や研修が欠かせません。そのためには、社内にコンプライアンス担当のチームや部署を設置し、コンプライアンスの浸透に向けた活動を推進していく必要があります。

また、コンプライアンスについての認識は、役職や性別によって差があるのが常です。そのため、経営者や役員、部長職、チームリーダー、新入社員など、グループごとに研修を行うとよいでしょう。

それらに加え、社員にWebラーニングの受講を義務付けたり、外部の講師などを誘致して勉強会を開いたり、社内報や掲示板などでコンプライアンスを啓蒙したりするのも効果的です。

相談窓口の設置

社内に、コンプライアンス関連の相談や通報を受け付ける窓口を設けることも有効です。セクハラやパワハラなど、社員がコンプライアンス問題で悩んだ際に相談できる場所があれば、事態が大きくなる前に対処できるでしょう。その際、通報者が不当な扱いを受けずに済むように、通報者の匿名性を確保できる環境を整える必要があります。

第三者による監査の実施

社内ルールを設けていても、それが守られているかどうか確かめる機能がなければ意味がありません。ハラスメントや不正、不祥事は、発覚を恐れた幹部が揉み消してしまう可能性もあります。そうならないためにも、外部の監査機関などに依頼し、定期的に監査に入ってもらうことをおすすめします。

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まとめ

SNSが普及した今、企業による不祥事やハラスメントは、以前よりも容易に発覚するようになりました。コンプライス違反によるイメージダウンは、企業の業績を左右するだけでなく、取引先や顧客の経営にまで悪影響を及ぼしかねません。

そのためには、社内ルールを明確にし、コンプライアンス違反を生み出さない素地を作っておくことが重要となります。また、コンプライアンスに対する定期的な教育や研修を行い、社員一人ひとりがコンプライアンスを遵守する意識を醸成することも大切です。

法令に従うことはもちろん、社会通念や倫理観に照らし合わせた経営を行うことが、全ての企業に求められているのです。

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