企業が海外進出し、現地で適切な経営管理を行うのは簡単なことではありません。今後、新たに海外拠点を設けようとしているのであれば、事前に体制を整えておくことが将来の成功のためにも重要です。当記事では、企業がグローバル展開した際によくある課題や、経営管理でポイントになること、そしてその管理を支援するツールなどについて解説します。
グローバル経営とは?
近年ではインターネットの普及により、誰もが日常的にSNSなどを利用するようになりました。世界中の情報へ瞬時にアクセスできるようになったことで、日々触れる情報量はインターネットが普及する以前と比べて激増しています。
このことはビジネスにも大きな影響を及ぼしており、今や国内外のさまざまな地域で多様な活動が可能です。ただ、企業の海外進出が比較的容易になったとはいえ、必ずしも現地でのビジネスが上手くいくとは限りません。エリアによって独自の文化があり、市場の特色も異なるからです。
インターネットを介して世界中が繋がれるようになったため、全世界で共通化されている部分は少なくありません。だからこそ、現地に法人を置く場合には、ローカルに着目することが大切です。現地の商慣習を理解していなければスムーズな取引は望めませんし、法律を理解できていなければ意図せず違法行為に及んでしまう可能性もあります。
そこで重要なのが、多様性への適応です。企業の海外進出を成功に収めるためには、進出先の多様性に対応した判断・企業活動を行わなければなりません。そして、このような経営を一般に「グローバル経営」と呼びます。
グローバル企業の経営管理モデル
グローバル展開における経営管理モデルとしては、大きく分けて「地域分権型」「本国集権型」「グローバル一体型」の3種類があります。
地域分権型は、進出先の現地法人が比較的大きな権限を持つタイプです。現地のニーズに合致した商品・サービスの提供がしやすい反面、本社との調整で苦労することも少なくありません。業務の重複が発生しやすく、グループ全体での管理面においては非効率になる傾向があります。
本国集権型は、現地法人ではなく本社側に大きな権限があるタイプです。全体としての統率を取りやすい反面、現地に即したビジネスが難しいという特徴を持ちます。また、標準化にこだわりすぎるあまり、現地の特色に適応できず業績を悪化させてしまう例もあります。
グローバル一体型は、上記2つに比べると先進的で、それぞれのよいところを取り入れたタイプです。大きな権限は本社側にありますが、現地の状況に合わせた環境構築および商品・サービスの提供を行います。
いずれも従来の経営基盤を見直し、再構築する手間こそかかりますが、企業のグローバル展開には欠かせない手法です。現在では海外進出に伴い、これらの経営管理モデルへの移行を進める企業も増えてきています。
日本のグローバル管理体制が進まない理由
海外進出する場合には、経営管理の手法を変えなくてはなりません。とはいえ、以下のような課題を抱える企業も多く、国内企業におけるグローバル管理体制の導入はなかなか進んでいないのが現状です。
オペレーションの課題
日本に一拠点を置き、その範囲内で管理運用するだけでも簡単なことではありません。これをさらに海外へと展開させ、拠点数も増やすとなれば、調達・製造・販売といった流れを管理する負担はより大きくなります。さらに、意思決定のために要する情報収集も複雑化するうえ、国内拠点と現地法人との方針にずれが起こるなど、オペレーション上の課題も生じます。
海外の企業では、人材に関することやルールに関すること、それらを適切に管理するためのシステムのことなど、グローバル経営に必要なインフラの整備が比較的進んでいます。そのため、こうしたオペレーションにおける問題は、それまで業務や事業単位で最適化を図ってきた日本企業にとって、大きな課題であるといえます。
コントロールの課題
慣例の違いや言語の壁などが影響し、海外子会社のコントロールが難しいという問題もあります。もちろん、子会社の自立を促すことは重要ですが、適切にコントロールできなければ不要な業務が発生したり、グループの成長の妨げとなったりする恐れもあります。海外子会社に対するコントロールは、海外拠点が軌道に乗るほど難しくなるため、できるだけ早期的にグループとしての最適化を図ることが重要です。
[RELATED_POSTS]グローバル経営管理に必要なポイント
適切なグローバル経営管理を行うためには、こうした課題の数々をクリアする必要があります。では、具体的にどのような施策を講じればよいのでしょうか。以下では、グローバル経営管理に必要なポイントを解説します。
グループ全体の基盤作り
グローバル経営管理では、まずグループ全体の共通基盤を作ります。当然、現地の状況に合わせた調整を行う必要はありますが、何より情報共有が円滑にできる状態を作り出すことが大切です。共通基盤がなければ、拠点間での情報のやり取りにおいて、データ加工など余計な手間が生じかねません。そのためにわざわざリソースを割くのも非効率です。スムーズなデータ集計が実現されるよう、ボーダーレスな基盤を設けましょう。
人材教育
当然ながら、国内と国外では言語や文化、ビジネスモデルも異なります。そのため、現地の人材に対する教育を別途行うことも大切です。現地で優秀な人材を確保できれば、本社側とのコミュニケーションもスムーズになりますし、結果としてグローバル経営管理の最適化が図れます。
本社と海外現地法人双方の努力が必要
課題を解決するためには、本社と現地法人のどちらか一方だけの努力では足りません。両者が互いに実態を把握できていることが大切です。
例えば、本社側から現地の実態を把握できず、ガバナンスが効かないケースがあります。正確に把握するためには、現地と本社とで別個に扱うのではなく、上述の通りグループ全体を意識した基盤をデザインしなければなりません。現地の実態もよく理解するように努め、必要に応じて資金や人材といったリソースを提供するなどのサポートも行うべきでしょう。
また、相手方の状況が把握できないのは現地法人も同様です。本社からの要請に応えきれずに悩むケースもあるでしょう。これらの観点からも、双方の理解と改善に向けた努力が重要であるといえます。
移動できないことを前提とした仕組み作り
従来であれば、お金と時間をかければ国内外の行き来は容易でした。しかし近年では、新型コロナウイルスの影響により各国で渡航制限が設けられるなど、海外への移動が難しくなっています。そこで、拠点間を移動できないという前提での仕組み作りが大切です。
例えば、現地でアウトソーシングを活用したり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進したりすることで、コストの削減や業務効率の向上といった大幅な改善が期待されます。経営管理のシステム化に有用なITソリューションも増えていますので、自社に適したものを選定し取り入れていくのも効果的でしょう。
[SMART_CONTENT]
グローバル時代の経営管理を支援するOracle EPM Cloud(旧PBCS)
最適なグローバル経営管理を実現するためには、共通のシステムを導入することが効果的です。例えば「Oracle EPM Cloud(旧PBCS)」は、クラウド上で管理会計や予算管理が実行できるシステムで、各国における基幹システムのデータが自動的に取り込まれるなど、グローバル経営に適した機能を備えています。経営判断の迅速化・差別化が図れるため、多くの企業で導入されています。
Oracle EPM Cloud(旧PBCS)が高い支持を得ている理由
多数の導入実績を持つ「Oracle EPM Cloud」ですが、高い支持を得ているのには、いくつか理由があります。例えば、プロセス対応の柔軟性が高く、拠点ごとの違いに対応しやすいことが上げまれます。また、Excelとの親和性にも優れており、多彩な集計およびレポーティング方法に対応しています。さらに、現地とのやり取りもシステム上でスムーズに行えるうえ、その履歴を残すことも可能です。クラウド型のため利用場所を選ばず、スマホやタブレットなどのモバイル端末からでもアクセスできます。
まとめ
今回は、海外現地法人の経営管理の難しさや主な課題、そして改善においてはどのようなことがポイントになるのかをご説明しました。特に重要なのは、情報基盤をグループ全体で整備することです。部分的な最適化だと余計な作業を生むことになりますし、現地とのやり取りもスムーズにはいきません。そこで「Oracle EPM Cloud」など、グローバル経営に役立つツールの利用なども検討しつつ、改善を図るとよいでしょう。
- カテゴリ:
- 経営/業績管理
- キーワード:
- 連結決算