2018年ごろから盛り上がりを見せたRPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)市場。大企業では80%以上の企業がトライアルも含めて何らかの形で導入に踏み切っているという情報もあり、今現在もRPAがIT業界のホットトレンドになっています。
RPAといえば自動化処理を実行するロボットを開発し、業務効率化を実現するためのソフトウェアです。業務効率化は日本企業が長らく取り組んできた永遠の課題でもありますが、RPAは具体的にどういったアプローチで業務効率化を成功させるのでしょか?
本稿ではRPAによる業務効率化について、他の業務効率化手法と比較しつつ解説していきます。
RPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)とは?
RPAは平たく言えば「パソコン上の処理を自動的に行うためのソフトウェア」です。名称に“ロボット”が入っていますが、工場の生産ラインで働くロボットのように実体はなく、あくまでサーバーやパソコンにインストールする“ソフトウェア”となります。
サーバーまたはパソコンにインストールしたRPAは、事前に定義・設定したプログラムに沿った自動化処理を行います。それを利用するユーザーは特定の業務において、パソコンをまったく操作することなく処理を終えることができるのです。一般的には今まで人手を介して行っていたような繰り返し作業が多い処理に対して、RPAを適用することで自動化による工数削減が可能となるため注目されているのです。
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従来の業務効率化手法と比べて、RPAにはどのような違いがあるのでしょうか?1つ1つ解説していきます。
システム構築との違い
業務において必要な事務処理をシステム要件や仕様書としてまとめ、ハードウェアやプログラムの納入などをシステム開発会社に発注するようなシステム構築では、情報処理量が多い基幹業務を効率化する目的で採用されます。大規模なシステム構成、高度な要求にも専門的な知識・技術を持つシステムエンジニアが対応するため、特別な知識・技術は不要です。
ただし、システムエンジニアは外部開発者であることが多く、システム構築する背景や現場の実情を知らないことから、意思疎通が難しく完成までに期間と費用が膨らみます。それでもシステム構築のコストに見合うのは、基幹業務では情報処理量が多く業務効率化効果が非常に高いからです。
一方、粒度の小さい業務に関してはシステム構築かによる効率化から除外されるケースが多く、一定以上の業務効率化効果が得られないという問題もあります。
これに対しRPAは、既製のソフトウェアとして導入するため既存システムへの連携やカスタマイズ等は不要で、プログラミングの専門知識も要りません。業務を熟知している現場の従業員が自ら導入・運用を行うことで、システム構築よりも素早く、かつ安価に業務効率化を実現できます。
Excelマクロ機能との違い
パソコン上の作業を気軽に自動化できるツールといえば、マイクロソフトが提供するExcelのマクロ機能です。ビジネススタンダートなアプリに搭載されているこの機能は、Excelシート状の処理を記録し、自動的に実行できるようにVBAというプログラミング言語に落とし込まれます。使い方次第では高度な処理もできることから、基幹系システムに近い仕組みをマクロ機能で構築するケースもあります。
RPAとExcelマクロ機能には“自動化”という面では共通する部分が多く、違いが分かりにくいという声もあります。明確な違いとして、RPAはパソコン上のあらゆる処理を自動化できるのに対し、Excelマクロ機能はExcel上でしか機能しません。
たとえばRPAを使用すると、受信したメールに添付されているファイルを自動的にダウンロード、さらにそのファイルをクラウドストレージにアップロードする等の自動化処理が可能になります。Excelマクロ機能はあくまでExcelシート状に限定した機能なので、その点が大きな違いです。
もう1つの違いは、Excelマクロ機能ではVBAとうプログラミング言語を使用しているのに対し、RPAはプログラミングを必要とせず、実際の操作画面を記録することで自動的にロボットを作り出します。だからこそ現場スタッフ自身が自動化処理を作成したり、運用したりでき、誰が見ても分かりやすい構造になっているので担当者が変わってもメンテナンスを継続できます。
AIとの違い
RPA以上のホットトレンドとして知られるAI(Artificial Intelligence:人工知能)は、一部の業務において人間が行う知的作業を代替するコンピューターのことです。「本来人間が行う操作をコンピューターが代替する」という点でRPAに共通した部分がありますが、2つの技術は競合するものではなく、補完し合う関係にあります。
RPAはパソコン上でクリックした場所や選択したファイル等を記憶し、自動化プログラムを自動で作成するツールです。一方、AIは画像を認識するものや音声を聞き取って明文化するものなど、人間の頭脳や感覚器に相当する機能を備えています。また、大量のデータの中から知見を生み出す能力にも長けています。
「AIによる情報処理で判断した事柄を、RPAで実行する」というソリューションも登場しており、今後はRPAとAIの融合が新しいビジネス価値を生み出すと考えられています。
非常に高度な判断能力を持つAIなどは、大量のデータから時間をかけて学習させる工程が必要になります。RPAは技術的・費用的なハードルが低いため、高度な判断を必要としない定型業務の自動化処理から始めることをおすすめします。
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RPAのメリット
RPA導入にあたっていくつかの課題はあります。ただし難しい課題ばかりではなく、しっかりと対策を立てることでRPA導入・運用を促進できます。そして導入課題よりも着目すべきメリットがRPAにはあります。
人材不足解消に効く
現代の日本社会では労働力不足問題が叫ばれています。2065年には現在の6割以下の水準まで労働力が落ちるという調査報告もあり、今後はいかにして労働力を確保するかが企業としての至上命題になっていくでしょう。
特に中小企業では、すでに人材不足が浮き彫りになっており、多くの業界が人材の不足感を訴えています。
RPAはこうした状況下において、“デジタルレイバー(仮想労働者)”として貢献する存在になりつつあります。すでにRPAによって従業員数人分の労働力を確保したケースもあり、今後はその活用幅に拡大が期待されています。
労働生産性向上になる
RPA導入が活発化している金融業界は、定型処理的な業務が多いことから広範囲にRPAを活用しています。一部の企業では年間数万時間単位での作業量削減に成功しており、RPAの成果が実証されています。
中小企業においても年間数千時間単位の作業量削減は難しくないため、労働性生産性向上の一手として働き方改革の中心になるかもしれません。
いかがでしょうか?RPAはどの業務効率化手法とも違い、さまざまなメリットを合わせ持っています。これまでRPAに着目してこなかったという方は、この機会に利活用を検討してみてはいかがでしょうか?
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