予算管理は企業の経営管理のひとつです。企業が利益を上げていくためには、売上予算や原価予算、経費予算、利益予算をしっかりと管理することが大切です。本記事では、予算管理の意味や目的などの基本知識に触れながら、業務の流れやおすすめのツールなどをご紹介します。予算管理業務を効率的に進めたい人は、ぜひ参考にしてください。
予算管理とは
予算管理とは、年度ごとに策定される企業の予算計画のことです。予算には売上予算や原価予算、経費予算、利益予算などの種類がありますが、これらを月次単位で管理し、実績と比較しながら予算達成を目指していきます。過去の売上や市場の傾向、顧客・発注データなどに基づいた正しい予算計画を立てることはもちろん、「利益が出ない原因は何か」「予算達成の進捗はどうか」などを分析し、企業の現状を把握することも大切です。
予実管理・見込み管理との違い
予算管理には、「予実管理」「見込み管理」の2つの業務が含まれます。予実管理とは、目標として作成した予算と実績を比較し、予算通りに実績が上がっているかどうかを確認することです。一方、見込み管理とは途中経過の実績数値を把握し、「最終的な数値はこうなるだろう」と予測をすることです。
予実管理と見込み管理は似た意味で使われることもありますが、明確な違いがあります。予実管理では、達成したい予算の目標値を立てるのに対し、見込み管理では現在の実績をもとにした予測値を立てます。そのため、見込み管理では年度ごとに数値を立てるのではなく、月次など予算達成の進捗を確認するために立てられることが多いでしょう。特に昨今は、不確実性の高い世の中でもありますので、従来以上に見込み管理の重要性が増してきており、月次を隔週や週次などに切り替えて運用したいという企業も多いようです。
予算管理では、予実管理・見込み管理のどちらも欠けてはならず、2つを並行しながら行動を修正していく必要があります。「最初に作成した予算に対して、現状の見込みはどうか」を確認することで、現在の経営活動が正しいかどうかを判断できるからです。
予算管理を行う目的
予算管理は、会社の目標を予算として数値化し、従業員に対してゴールまでの道筋を示す役割もあります。「月ごとにどの程度の利益を上げればよいのか」「何を目標に業務を進めるべきなのか」などが明確になるため、従業員はそれぞれの業務計画を作成しやすくなるでしょう。
また、企業の実績を把握して分析することで、経営指針を判断する目的もあります。予算が達成できない場合はその原因を突き止め、改善するために行動を見直すといったPDCAサイクルを回すことで、企業の成長につながるでしょう。
予算体系と種類
予算は以下の3種類に区分され、これらをすべて合わせたものを「総合予算」といいます。
- 損益予算:販売予算、原価予算、本部予算を合わせたもの
- 資金予算:現金収支予算、運転資本など。資金繰りにまつわる予算
- 資本予算:設備予算、研究開発費など。長期的な収益にまつわる予算
そして、これらの総合予算から貸借対照表予算や損益計算書予算、キャッシュフロー計算書予算などの予算財務諸表が作成されます。
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予算管理の流れ①予算編成を行う
予算編成には、「トップダウン」と「ボトムアップ」の2種類の方法があります。トップダウンとは「上から割り当てられる予算」という意味があり、企業の上層部が決定した経営計画や利益目標を逆算し、予算を決定していく方法です。現場の意見が経営層に届きづらいデメリットはあるものの、従業員に対して目標を与え、役割と責任を明確にするメリットがあります。
一方、ボトムアップは「下から積み上げる予算」と呼ばれ、部署や課、担当者など、現場の意見を汲み上げて予算を決定していく方法です。より実現可能な見積りの作成や従業員のモチベーションアップといったメリットがあるため、実際の予算編成ではトップダウンとボトムアップの2つを取り入れている企業が多いでしょう。
予算管理の大まかな流れとしては、まず経営者が経営戦略や利益計画などに基づき、予算編成の方向性を決定する予算編成方針を作成します。次に、それらをガイドラインとして、それぞれの部門で関連する項目の予算を作成し、予算編成担当者が見積財務諸表と総合予算を作成します。
予算編成の業務についてより詳しく知りたい人は、こちらの記事を参考にしてください。
https://www.clouderp.jp/blog/budgeting.html
https://www.clouderp.jp/blog/budget-planning-skill.htm
予算管理の流れ②予算のシミュレーションをする
作成した予算計画が企業の目標とする額に満たなかった場合は、原因の分析や予算の調整を行います。この作業で必要になるのが、以下の予算シミュレーションです。
- トップダウン・ボトムアップなど複数の予算編成で比較する
- 問題発見のためのドリルダウン分析
- 予算数値の変更
- シミュレーション結果の保存・比較
予算管理の流れ③業績を管理する
業績管理では予算の実績を把握・分析し、一つひとつ問題点を洗い出していきます。その際、一般的に用いられるのが、「差異分析」「進捗分析」「見込分析」の3つの方法です。
差異分析
差異分析とは、月ごとに予算と実績との差異を確認し、目標値に達しない場合は原因を探り対策を検討する方法です。年間の予算は通常12ヶ月に配分されており、繁忙期や季節ごとの特色などを加味したうえで、予算が作成されています。差異分析では、このように分配された月次のタイミングで予算と実績を比較し、分析レポートを作成します。
差異分析を行うメリットは、短期的な一定のペースで業績を確認することで、それぞれの従業員が自分の達成度を把握しやすくなることです。また、問題が大きくなる前に対処できるため、予算達成の確率を高めやすくなるでしょう。
進捗分析
進捗分析とは、月次ごとに以下の2点を比較し、達成率を確認する方法です。
- 実績を累計したもの
- 年度予算または予算値を期初から当月まで累計したもの
差異分析はあくまでも目安であって、最終的な予算は年間を通して達成しなければならないものです。進捗分析は、予算に対してどこまで進捗しているのかを把握し、抜本的な対策を講じやすいメリットがあります。万が一、大きく差が開いてしまっている場合は、月ごとの予算額や予算達成へのペース配分などを改める必要があるでしょう。
見込分析
見込分析とは、以下の2点を作成し、年間予算と比較することで予算達成の確率を占う方法です。
- 期初から当月までの実績値
- 当月以降の予算値を合わせた数値(見込値)
見込み分析のメリットは、達成・未達成の予測を早い段階で把握し、対応策をタイムリーに検討できることです。また、売上を分析する場合は、当月以降の予算値の代わりに、営業活動データを受注や見積りなどの進捗別に色分けして積み上げたものを利用すると、近い将来をより高い精度で予測できるでしょう。
予算管理を行うツール
予算管理業務は、多くの部署や部門などを扱うため、担当者の負担が大きくなりがちです。ここでは、効率よく予算管理が行えるツールを2つご紹介します。
エクセル
エクセルのメリットは、機能が豊富で汎用性が高く、用途に合った管理表を作成できることです。機能性がシンプルな分、企業が求めるフォーマットを作成しやすく、さまざまな関数や数値に対応できるでしょう。また、インターネット上で基本のフォーマットをダウンロードできるため、慣れていない人でもすぐに作成できます。
さらに、エクセルはもともとOfficeソフトが入っているパソコンであれば無料で使用できるため、初期費用を抑えられるメリットもあります。簡易的な予算管理システムを探している人や、なるべく導入コストを抑えたい人などに適しているでしょう。
一方、予算管理が進むにつれて操作が複雑になり、かえって使いづらい管理表になってしまうケースも見られます。また、エクセルは予算管理専用のソフトではないため、高度な集計や分析などを行う場合は実用性に欠ける一面もあります。用途によっては、専用の予算管理ソフトのほうが適しているかもしれません。
予算管理システム
予算管理システムとは、予算目標に対する進捗がどの程度なのかを比較するシステムです。会計システムや原価管理システムなどと連携し、予算編成を一元的に管理できるものもあり、予算管理にかかる負担やコストを大幅に減少できるメリットがあります。
また、予算管理システムには分析機能を備えているものもあります。手入力で行っていたデータ集計やパフォーマンス管理などを自動で行ってくれるため、人材コストを削減し、ほかの必要な業務に人材を充てられるメリットが期待できます。エクセルに比べてより高度なデータ活用・分析が行えるため、企業規模が大きい場合や扱うデータが多い場合などにも適しています。
予算管理の効率化を目指すためには?
予算管理は、計画の策定や実績管理、経営方針の決定などさまざまな業務を含みます。変わりゆく市場に対応していくためにも、企業は自社の現状や予算に対する進捗などを正しく把握しなければなりません。
予算管理を効率化し、企業の意思決定をスピーディーに進めるためには、効果的な予算管理システムの導入がおすすめです。統合基幹業務システムである「EPM(Enterprise Performance Management)」は、企業経営に欠かせない会計システムや業務システム、分析機能などをオールインワンで提供するソリューションです。予算管理業務の効率化を目指したい人や、効果的な予算管理システムを探している人などは、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
予算管理とは、年度ごとに予算計画を作成し、実績と比較しながら分析を繰り返すことで、経営判断に役立てることです。企業の現状を把握したり、従業員に業務の指針を示したりする目的もあるため、企業の規模などにかかわらずしっかりと行う必要があります。
とはいえ、予算管理には予算編成やシミュレーション、業績管理など多くの工程があるため、手入力ですべての作業を行うのはさすがに大変です。効率よく予算管理を行うには、企業に合った適切なツールを導入するとよいでしょう。
- カテゴリ:
- 経営/業績管理
- キーワード:
- 予算管理システム