水平分業と垂直統合、どちらのビジネスモデル手法が優れているのか?

 2019.02.01 

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かつて、シャープの液晶テレビ「亀山モデル(アクオス)」は日本国内はもちろん世界でもその高い技術水準から人気を集めていた機種です。特徴は完全な「垂直統合型」として製造が進められていた点でしょう。垂直統合型とは製品の開発から生産、販売にいたるまで上流から下流のプロセスをすべて一社で統合したビジネスモデルをいいます。

それに対して、製品の核となる部分の開発・製造・販売は自社で行い、それ以外の部分を外部委託するビジネスモデルを「水平分業型」といいます。このビジネスモデルで成功した企業の代表いえば米アップルでしょう。2007年から販売開始されたiPhoneは、スマートフォンやタブレットの開発機能やOSと一部のソフトはアップルで統合されていますが、生産に関してはEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器受託生産サービス)を利用しています。デバイスの多くは日本の中小企業が開発・生産しています。

垂直統合型と水平分業型ではどちらのビジネスモデルが優れているのか?最近では「水平分業型が時代に適したビジネスモデルだ」という声が多いでしょうが、果たしてそうなのか。今回は2つのビジネスモデルの特徴を整理しつつ、ビジネスモデルとしてどちらが優れているのかを考えてみます。

垂直統合型と水平分業型、それぞれの特徴

垂直統合型

前述のように垂直統合型とは「垂直統合型とは製品の開発から生産、販売にいたるまで上流から下流のプロセスをすべて一社で統合したビジネスモデル」のことです。製品の企画開発、設計、部品の調達、製造、販売にいたるまでのすべてを一社で統合することで、多彩なノウハウを蓄積できるというメリットや、高い機密性を維持できるというメリットがあります。

特に製造業においては継続的にノウハウを蓄積することで、それを別の製品や事業に活用できるため如何にノウハウを蓄積するかというところに注力している企業も多いでしょう。製品の設計書や生産プロセスなど機密性の高い情報を扱うことも多いので、垂直統合型で情報保護を高めることができます。

シャープ、ソニー、パナソニックといった世界に躍進した日本企業の多くは垂直統合型のビジネスプロセスを持っていました。それが、日本のモノづくりが世界最高水準になった要因だという人もいます。

水平分業型

一方水平分業型は「製品の核となる部分の開発・製造・販売は自社で行い、それ以外の部分を外部委託するビジネスモデル」のことですね。これは言い換えれば、ビジネスの中核だけを自社で遂行して、他の部分はスペシャリストに任せると考えることもできます。

水平分業のメリットは非常に高い効率性を持ち、自社はよりクリエイティブな仕事に注力できるという点でしょう。実際にアップルは現在でも世界トップクラスのクリエイティブ企業として君臨しており、iPhoneは今もなお人気機種の1つです。

さらに、水平分業型のビジネスモデルは破壊的にイノベーションを生むこともあります。その代表例がアクションカムとして爆発的にシェアを拡大した「GoPro」です。GoPro社の設立者兼CEOであるニコラス・ウッドマンは、サーファーがカメラを付けて撮影をしていたことをヒントに、サーファー目線でダイナミックに撮影できるカメラを開発しようと考えました。

その際に選択したビジネスモデルが水平分業型であり、主要デバイスはソニーから調達し生産はファブレスで行っています。GoProはアクションカム市場ではシェアNo.1であり、ビデオカメラという大きな括りでも最大20%のシェアを拡大するようになりました。

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「誠心(まごころ)」を企業理念として鉄鋼関連を中心に事業を展開している濱田重工。現在、事業基盤の強化や人材の確保のため、長期的な視野でDXに取り組んでいる最中だ。段階的な施策の中で大きな山となるのが、2020年1月に運用を開始した「Oracle Fusion Cloud ERP」の導入である。

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人材活用にもみられる垂直統合型と水平分業型

垂直統合型と水平分業型は一般的に製造プロセスにおけるビジネスモデルを指しますが、最近では人材活用にもこの2つの言葉が適用されています。人材作用における垂直統合型と水平分業型とは、いわゆる「自前か、助っ人か」という話です。

自社で採用・教育した社員を中心にビジネスを遂行している企業が垂直統合型ならば、外部からの人材を積極的に採用して強化した企業を水平分業型といいます。ちなみにアップルは人材活用においても水平分業型を採用しており、世界中から集めて優秀な人材によって最強の開発チームを築きました。

人材活用における垂直統合型のメリットは、企業へのロイヤリティ(忠誠心)が向上することとノウハウを多く積み上げられるという点です。やはり企業独自に採用・教育された人材ほど企業へのロイヤリティが高く、企業に尽くす傾向があります。自然と勤続年数が長くなるのでそこで得られたノウハウが蓄積していくというのも大きなメリットです。

水平分業型のメリットは外部から優秀な人材(スペシャリスト)を獲得することで、企業が抱えている課題をダイレクトに解決したり、客観的視点を取り入れることで業務プロセス等を最適化できるという点です。企画開発の効率性という観点からも、水平分業型の方が優れています。

有識者の中には「水平分業型の人材活用では、そこに長く勤続している人材のモチベーションを下げることになる」と警鐘を鳴らす人もいます。これは確かに事実ですが、外部人材を獲得することで内部人材が対抗心からモチベーションが上がり、相乗効果を生むというケースもあるので一概には言えない問題です。

重要なのはやはり「バランス」ではないかと考えます。「成績が落ちた選手はすぐに解雇する」という考え方の水平分業型は、従来日本企業の風土に馴染まないものだとされてきましたが、最近では多くの企業が水平分業型の人材活用に取り組んでいます。時代は確かに水平分業型に流れているのですが、これによってその企業独自のコアコンピタンスを失ってしまうという危険性もあるでしょう。

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これからの時代に合っているのはやはり水平分業型か?

垂直統合型と水平分業型、どちらのビジネスモデルが優れているかという問題は一概に結論は出せません。しかしどちらの方が時代に合っているかという話しではやはり水平分業型でしょう。

近年ではIT技術やAI技術の発展によって業務プロセスを自動化するケースが非常に増えています。特に最近市場規模を拡大しているRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)というIT製品は、パソコン上の定型作業をすべて自動化できるものとして注目され、金融機関を先進事例として導入が拡大しています。

つまり、時代的に業務プロセスをアウトソーシングすることへの抵抗感が少なくなっており、それによる高い生産性を享受していることから水平分業型が優れていると判断している企業が多いのです。もちろん、すべての企業にとって水平分業型が適しているわけではりません。

企業独自の高いコアコンピタンスを維持しているような企業としては、継続して垂直統合型のビジネスモデルを採用することでその強みを守ることができます。ですので、水平分業型のビジネスモデルを採用する際は、まず自社のコアコンピタンスについて整理し、それを失くことにならないか等を十分に検討した上で進めていきましょう。

ちなみに水平分業型の企業では経営基盤が希薄になりがちなことから消えていくことも少なくありません。自社のビジネスモデルを選択する際は、高い慎重性を持って取り組みましょう。

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