予算管理は「管理会計」の一種なので、法的規制がなく、企業は予算管理を行う義務がありません。それでも予算管理を行う企業がいるのは、期内の予算編成を組むことで設定した目標を達成するために、経営をコントロールするという目的があります。
しかし、予算管理を正しく行えている企業は、そう多くありません。大半が「予算をただ管理するだけ」になってしまい、予算管理本来の意義を失ってしまっているのです。
その原因には予算管理の本質を理解していないという理由以外に、マニュアル環境による様々な弊害があります。人手による予算管理は手間も多く、正確性にかけるので正しい予算管理を行う環境を整えられないのです。
そこで予算管理システムが活躍します。予算管理における業務を効率化したり、その他様々な導入効果があるのです。ここでは、そんな予算管理システムの導入メリットについて紹介していきます。
メリット1.予算編成の自動化による時間短縮
予算編成を組む際の、最大の問題は「時間」です。まずは各部署の計画(予想)損益計算書の作成を求めるのが一般的ですが、すべての部署の計画損益計算書が打ちあがってくるまでにかなりの時間を費やします。
部門責任者も日々の現場業務に追われたりとなかなか時間を取れないので、計画損益計算書作成が遅れてしまったり、作成はしたが打ち上げられないまま放置されているといった事態も少なくありません。
また、Excelで計画損益計算書を作成している場合は、各部署から打ちあがったとしても集計作業にまた時間がかかります。
この情報をもとに総合予算編成を組んだとしても、各部署に再度落としこみ修正を重ねていくという作業が必要になるので、一つの予算編成が完成するまでかなりの時間を費やしてしまいます。
これでは、日々変化するビジネス社会に適用するのはもちろん、スピードのある経営を実現することも難しいでしょう。要するに、予算管理ではいかに迅速に予算編成を組めるかがとても重要となります。
予算管理システムでは、システム上で各部署の計画損益計算書を作成してもらうことで、自動的に集計することが可能です。フォーマットも定まっているので部門責任者も短時間で作成しやすく、現場にとっても経理担当者にとっても大幅な時間短縮が望めます。
メリット2.評価・フィードバックの仕組みを整える
予算管理を行う上で大切なことは、評価やフィードバックの仕組みを整えることです。最終的な予算編成をもとに経営戦略を立て、各部門に具体的な施策を落とし込んでいくわけですが、その施策が効果を発揮しているかどうかを評価しなければなりません。
評価がなければ問題点を見つけることができませんし、改善を行うこともできません。また、施策に対する問題点は主現場から打ちあがってきます。このためフィードバックの仕組みもなければ予算管理のPDCAサイクルを回すことはできないのです。
そこで、予算管理をシステム化することで予算や施策の進捗を追いやすくなり、具体的な評価をくだすことができます。また、システム上でフィードバックを行える仕組みを整えれば、現場と経営者のコミュニケーションが加速し、効率的にPDCAサイクルを回していくことができるでしょう。
メリット3.KPIの設定とモニタリング
KPIとは「重要業績評価指標」のことで、最終的な目標に対する中間ポイントのようなものです。例えば「1ヵ月で100万円売り上げる」というのが目標なら、それに対する様々なKPIを設定します。
顧客単価を従来の20%向上する
100名の顧客にDMとメルマガを送る
1日5万円で目標を達成する
などなど、1ヵ月に100万円を売り上げるという目標だけでも、様々なKPIを設定することができます。大切なのは「目標達成に向けた正しい指標を設定できているか」ということです。
そして、予算管理にもKPIは必要です。予算編成通りの予算で部門目標を達成できそうか、KPIを設定することで常に効果測定を行うのです。予算管理システムにはそうしたKPIを設定する機能と、モニタリングする機能が備わっています。
メリット4.四半期ごと、月次ごとの予算編成も可能に
予算編成のスピードが早くなれば、1期ごとに組んでいた予算編成も四半期や月次ごとに組むことが可能になります。短い期間で予算編成を組むことができれば精度も各段に上がるので、より具体的な経営戦略を立てていくことができるでしょう。
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メリット5.部門責任者の評価指標にもなる
予算編成通りに部門目標を達成しているかどうかは、部門責任者の評価指標でもあります。しかし、予算管理がシステム化されていない企業では、予算管理を評価指標にすること自体が難しいのです。
人手によって予算管理を行っている環境では、予算編成を組むまではいいがその後の経過をモニタリングする経営者や幹部は多くありません。というより、モニタリング環境が整っていないので、現実問題として監視することができないのです。
故に、予算管理が評価指標に直結しないのです。
予算管理システムならば前述したように、設定したKPIをモニタリングする機能が備わっています。経営者や幹部はリアルタイムに予算編成の進捗状況を知ることができるので、部門責任者に適切な管理を下せるようになるのです。
これにより、各部門責任者のモチベーションが向上するという二次効果も生まれます。
メリット6.PDCAサイクルで予算編成精度を上げる
予算管理で最終的に大切なのは「PDCAサイクルを回すこと」です。予算編成をもとに経営戦略を立て、部門ごとの目標と施策を決め、実行し、評価し、改善する。これを繰り返していくことで予算編成精度が向上し、より最適化された施策を展開することができます。
そして、予算管理システムならこうしたPDCAサイクルを回していくことが可能です。予算編成の効率化で業務時間を短縮すれば、細かいPDCAサイクルを回して継続的に改善していくことができるのです。
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メリット7.クラウドなら運用負担軽減やセキュリティ性の向上も
クラウド型の予算管理システムを導入する場合、ここまで紹介したメリット以外に「運用負荷軽減」や「セキュリティ性の向上」といったメリットがあります。
クラウドはシステムベンダーが運用しているアプリケーションを、インターネットを通じて利用します。そのため、ユーザー企業は運用業務を行うことなく、常に最新の予算管理システムを導入することができるのです。もちろん、各種設定などはユーザー企業で自由に行えるので、最適化された予算管理システムを構築することができます。
セキュリティ環境が十分でない企業にいたっては、セキュリティ性の向上というメリットもあります。クラウド上に保管されたデータはシステムベンダーによって堅牢に守られているので、サイバー攻撃による情報漏えいリスクを低減することができるでしょう。
まとめ
予算管理システムを導入するメリットには様々なものがあります。しかし忘れてはならないのが、あくまで「正しい導入と正しい運用を行った場合」ということです。正しい導入とは自社に最適な予算管理システムを導入すること。そして正しい運用とは、現場ユーザーを意識した運用を行うことです。
この点に留意しつつ、自社にとって最適な予算管理システムを導入し運用していただきたいと思います。
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- 予実管理