近年、急速な発展を遂げて多方面で活躍しているAI(Artificial Intelligence:人工知能)。AIに関するニュースは目にしないというほど話題になっていますし、業務活用における実用化も進んでいます。このAIを業務効率化へ取り入れるとどうなるのでしょうか?本稿では業務効率化にAIを活用するメリットとデメリットをご紹介します。
AIとはそもそも何か?
AIはさまざまなメディアで取り上げられていますが、まずはAIとはそもそも何かという定義から始めます。
初めてAIという言葉が使用されたのは、1956年7月から8月にかけて開始されたダートマス会議と言われています。当時ダートマス大学に在籍していたジョン・マッカーシー教授が主催し、AIに関するさまざまな項目を定義していきました。教授は後に「AI研究の第一人者」と呼ばれるようになります。ジョン・マッカーシー教授が作成したAIに関するFAQページでは、AIについて次のように説明しています。
知的な機械,特に,知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術です。人の知能を理解するためにコンピュータを使うことと関係がありますが、自然界の生物が行っている知的手段だけに研究対象を限定することはありません。
要するにAIとは「頭の良いコンピューター」のことで、非常に高度な情報処理能力を持っていることから、一部の分野で人間の頭脳を凌駕するほどの力を発揮します。
AIと聞くとSoftbankが提供しているPepperのように、人の言語を理解して会話するロボットを想像する方も多いでしょうが、ビジネスで活躍しているAIにはそうしたタイプはむしろ希少で、多くの場合は特化型AIと呼ばれる一部の能力の特化したコンピューターを指します。
業務効率化にAIを活用するメリット
実は、AIを業務効率化に活用したという事例は近年増えていますが、単純な業務効率化で考えると他に適したITツールがいくつか存在します。たとえばRPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)がその代表格です。
RPAはパソコン上の処理を自動化するためのソフトウェアで、特定のアプリケーションに限定せず、アプリケーションをまたいだ自動化を実行することで大きな業務効率化を実現します。大手金融会社ではすでに年間数万単位の業務時間短縮に成功しており、その効果は実証されています。
では、業務効率化においてAIが活躍するシーンはどういった時でしょうか?詳しく理解するために、業務効率化にAIを活用した事例をご紹介します。
富士ゼロックスの業務効率化AI
富士ゼロックスでは業務効率化や生産性向上に向け、AIやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)とRPAを組み合わせたサービスを提供しています。これまで人間が行っていた定型的な業務をロボットが代行し、そこにAIを組み合わせることで判断力と独創性を必要とする業務に専念することができます。
- 帳票などの手書きの情報を認識してデジタルで処理できる形式に変換する
- Webからダウンロードしたデータをもとに集計を行いレポートを自動生成する
- 法の改正による商品への影響などの専門的な知識を伴う関連性を自動検出する
など様々なサービスが提供されています。
参考資料
さいたま市のAI活用
2017年、埼玉県さいたま市でAIを活用した実証実験が行われています。保育所の入所割り当て業務を効率化する目的でAIを活用し、申請者から受けたさまざまな希望条件を最大限実現させることを目標に取り組まれました。
従来は30人ほどの職員が1週間以上かけて行うほど大掛かりな業務ですが、AIを活用したことで数千人の児童割り当てがわずか数秒で完了しました。結果も人間が行うものに劣らない完成度であり、AIによる割り当ての正確性が示されています。
参考資料
AIを用いたマッチング技術で最適な保育所入所選考を実現。さいたま市の児童約8000人の割り当てもわずか数秒で可能に
上記2つの事例から見るに、AIによる業務効率化のメリットは人間的な情報処理能力を伴う業務(非定型業務)において、人間に近い感覚での処理を実行し、そこにかかる膨大な業務時間を短縮することです。
RPA等のITツールはマニュアル化され、定期的に発生する定型業務の効率化に適しています。たとえば各店舗から送信される売上データを抽出し、台帳にまとめる作業を日次で行っているなどの業務です。こうした定型業務にはAIが介入するまでもなく、RPAでも十分な業務効率化効果が得られます。
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AI導入のデメリット
業務効率化にAIを取り入れることにより、一部の領域において非常に高い効果を得られることは確かです。実際にさいたま市の事例では、単純に計算しても210万円以上の人件費削減になります。RPAなどの業務効率化ITツールを導入するよりも、高度な効率化を実現するのが大きなメリットです。ただし、デメリットも当然あります。
AI学習のために最適化されたデータの集積が欠かせない
AIによる業務効率化へ取り組むためには、業務に関連するさまざまなデータを学習させる必要があります。しかしシステムごとの扱うデータの種類と形式が異なるため、データの最適化に手間と時間がかかります。
AIに精通したエンジニアやコンサルタントの配置が必要
AIを導入するにあたり、導入部署内では新しい人材が必要になります。AIに精通しているエンジニアやAI導入経験を持ったコンサルタント、さらにはAIが出した結果が正確なものかどうかを確認し修正するスタッフなど、新しい人材が必要になることで人件費がかかります。
AI導入によるITコストの増加
AI導入にはさまざまな準備が必要になり、担当させる業務によって必要になるコストも違います。いずれの方法でもITコストの増加は免れないため、AI導入によるROI(投資対効果)とのバランスをしっかり試算することが大切です。
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AI導入は慎重に検討しよう!
業務効率化にAIを取り入れることにより、高い効果を得られることは確かです。ただし、企業によっては十分なROIが得られない可能性もあるため、AI導入検討時にその効果をしっかりと把握し、慎重に検討を進めることをおすすめします。また、AI単体で導入するのではなく「AI×ERP」のように、中にはすでにAIが取り込まれている、もしくは取り込みやすいERPも存在するため、AIと他の技術を組み合わせたソリューションも積極的に検討しましょう。
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