倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システム(WMS)とは?
倉庫管理システムは「WMS(Werehouse Managemente System)」や「物流センター管理システム」とも呼ばれる、製品在庫を保管するための倉庫全体を管理するシステムです。
倉庫管理システムに似ているものとして在庫管理システムがあります。しかしこの2つのシステムには明確な違いがあります。まず在庫管理システムはあくまで「企業が持つ在庫」を管理するシステムです。仕入れた部品や原材料の数、仕掛品や完成品の数、消費した部品や原材料の数、販売した完成品の数をデータとして管理することで、在庫状況をリアルタイムに可視化します。
一方、倉庫管理システムはもっと広範囲に製品在庫の流れを管理するためのものです。入荷から出荷まで倉庫内に製品がある状態をトレースし、倉庫内での製品の流れをすべて可視化します。この他、広い倉庫では様々な在庫管理方法が取られているので、製品に応じて異なる管理方法が適用できるのも特長です。
背景/目的
では、倉庫管理システムはなぜ必要なのでしょうか?それは広い倉庫では従業員が独自に作成した在庫リストや目視でのチェックでは目が届かなくなり、ミスが発生しやすくなることです。在庫管理だけでは、帳簿上のデータと実際の在庫が少しでもズレが生じると、そのズレはどんどん大きくなっていき、最終的にはそのズレの原因を究明するのも困難になってしまいます。
そうなると在庫だけを管理していると必要な問題に気づけない可能性が出てきてしまいます。そこで倉庫内の製品の流れを可視化する倉庫管理システムが必要になってくるのです。
入荷から在庫、在庫から製造、製造から在庫、在庫から出荷準備、出荷準備から出荷など倉庫の中で製品一つ一つの流れを追うことは簡単ではありません。これを都度作成する帳簿を使って人手で行うとなると、データと実際の在庫にかなりの差異が生じる可能性があります。
これをシステム化することにより、正確性とリアルタイム性の二つのメリットが生まれるのです。また担当者の負担も低減され、より付加価値の高い作業に専念できるようになります。
課題
倉庫管理システムを導入するにあたって注意すべき課題は「外部との連携」です。たとえば本社と倉庫が物理的に離れているところにあると、本社の調達管理システムや販売管理システムと倉庫管理システムを連携することが難しくなります。製造現場と物理的な距離がある場合も同じです。
たとえば物理的に距離があるからといって、システム間で連携すべきデータをCSVファイルなのでバッチ処理をしていると、せっかくのシステム化もリアルタイム性は損なわれ、効率性は下がってしまいます。
さらに、外部との連携は社内での話だけではありません。倉庫管理ではサプライヤーと協力して適切な管理を実施するケースが少なくありません。倉庫管理システムを導入すると既存プロセスを大きく変更することになるため、サプライヤーの理解や協力が必要になってきます。
このように、倉庫管理システム導入で重要なのは「外部との連携」です。これはシステムに限った話ではないため、関係者全員へのメリットを明確にする必要があるでしょう。
ソリューション(解決)
社内で運用している他の業務システムとの連携、さらにサプライヤーとの連携という課題を解決するためのソリューションとしてクラウドERPがあります。ERPとは事業に必要な複数の業務システムを一つのプラットフォームに集約したシステムであり、これをクラウドサービスとして提供するのがクラウドERPです。
ではなぜクラウドERPが倉庫管理システムの課題を解決できるのでしょうか?それはまずERPでは様々な業務データが統合管理されているため、倉庫管理システムに必要な情報をリアルタイムかつ正確に連携することが可能であるためです。
またクラウドサービスとして提供されるため、サーバーなどのハードウェアの設計や調達が不要で、初期導入コストを抑えながら常に最新の機能が使えるというメリットがあるためです。
さらにクラウドサービスではインターネット経由でのアクセスが可能であるため、サプライヤーなど社内の関係者も利用できます。そのため、関係者が同じように倉庫管理システムのメリットを享受しやすくなるのです。
機能
倉庫管理システムは一般的に次のような機能を備えています。
- 入荷管理機能
- 出荷管理機能
- 在庫管理機能
- 棚卸管理機能
- マスタ管理機能
- EC受注機能
- ハンディターミナル連携機能
以上のような機能領域があり、さらに詳細な機能が提供されます。実際には扱う商品の特性などにより不必要な機能や、これ以外にも必要な機能があるかもしれません。事前に機能要件を定義しておくことが大切です。
メリット
倉庫管理システムを導入すると次のようなメリットが得られます。
- 人為的ミスを削減する
- 作業負担が軽減する
- 作業の属人化を排除する
- 不良在庫を見える化する
- 人件費を削減する
- リアルタイムに在庫状況を把握する
- 製品の流れを追う
- 生産性が向上する
- 出荷精度を向上する
- 出荷締め切り時間を延ばす
このように、倉庫内の状況を可視化することによるメリットは多くあります。現在の課題のみならず、結果的にはそれ以外の副次的効果を得られることもあります。たとえば生産性が向上することで出荷の締め切り時間を延ばすことができたり、その結果として顧客満足度まで向上します。
デメリット
倉庫管理システムを導入するデメリットは、システム化によって従来の管理プロセスが変更されることです。今まで目視で行っていた在庫チェックや人手作成していた帳票などはシステム化によって自動化します。作業効率が上がることを考えれば良いことなのですが、管理プロセスが変更することで効率性が逆に下がるところが出たり、サプライヤーとの協力が難しくなることがあります。
このデメリットを回避するためには、導入検討段階から関係者を巻き込み、管理プロセスのどの部分が変更になり、どういった効果を目指すのかという認識を共有することが大切です。目的の共有ができれば、倉庫管理システムのメリットを最大限引き出せるでしょう。
選び方のポイント
自社にとって適切な倉庫管理システムを選ぶためにまず大切なことは、機能要件を明確にすることです。既存の管理プロセスから倉庫管理システムに必要な機能を考え、最適な製品を選ぶための基準にします。ここで注意することは機能要件に多くを詰め込まないことです。
多機能なシステムは魅力的に感じるかもしれませんが、使用しない機能が多くても効果は上がりません。
もう一つのポイントは倉庫管理システムの柔軟性に着目することです。導入後は当初想定していた管理プロセスと違って、変更点が多く生じるものです。その際に、管理プロセスの変更にも柔軟に対応できるシステムが必要です。また、プロセスの変更により他の業務システムとの連携が必要になる場合もあります。
このような拡張性を考慮し、ERPのような統合プラットフォームを選択するのも重要なポイントです。
まとめ
複数の倉庫を持っていたり、物理的に離れた場所に在庫管理場所を持っている場合は倉庫管理システムがより効果を発揮するでしょう。さらに、外部システムとの連携や将来的な拡張への対応も考慮し、クラウドERPのような統合プラットフォームも検討し、自社にとって最適な倉庫管理を実現しましょう。
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