マスター管理
マスター管理とは?
マスターとは製品やサービスを管理するために必要な「基本情報(マスターデータ」のことです。事業は多くの業務によって成り立っており、各業務において同じ情報を使用します。しかし、業務ごとに同じ内容を異なる表現で管理してしまい、全体として整合性のある管理ができなくなる場合があります。そのようなことを防ぐために、マスターは要となる情報です。
たとえばある取引先に製品を販売した際は、「どこに何を販売した」というデータを販売管理システムに入力します。それに必要なデータとして取引先と製品のマスターデータを使用します。たとえば取引先の会社名においても、会社名の表記方法は様々です。その結果、その都度入力してしまうと表記ゆれによって正しい集計や管理ができなくなってしまうのです。それを防ぐために、大元のデータで去るマスターを作成し、各業務システムはそのマスターを参照することによって全体のデータの整合性を保つのです。
このように、マスターとは各業務システムのデータの整合性を保つとともに、入力の手間を効率化するための基本情報なのです。取引先マスターや製品マスター以外にも、給与計算や人事管理のために使用する従業員マスターなどもあります。
マスター管理とは、様々な取引や業務に使用する基本情報を適切に管理し、常に使いやすい状態を保つことです。
背景/目的
マスター管理が必要とされるようにあった理由はシンプルです。データ入力作業を効率化したりデータの整合性を保つためです。
たとえば製品マスターを例にあげると、一つの取引にて業務システムに入力すべき製品の基本情報は多岐に渡ります。製品名、品番・型番、価格、スペックなど基本情報といってもかなりの項目が必要です。取引の都度、こうしたデータを一回一回入力することは非効率です。
さらに、毎回これだけのデータを業務システムに入力していると、必ずどこかでミスが発生します。もしも出荷指示書を作成する際に品番・型番を間違っていたら、取引先に届く製品は注文と違ったものになるでしょう。
一方で製品マスターを業務システムであらかじめ管理していれば、取引が発生した際は製品マスターを呼び出すだけで、多くのデータ入力作業を省けます。これは業務効率を向上するだけでなく、生産性の向上や人為的ミスの軽減になり、ひいては顧客満足度や企業の信頼などに繋がっていく要素なのです。
課題
マスターの意義は明確ですが、その課題は「複数の製品マスターをどうやって管理するか?」ということです。製品マスターを使用する業務システムは販売管理システムといった取引に直接関わる業務システムだけではありません。生産管理システム、在庫管理システム、出荷管理システム、あるいは営業支援システムや顧客管理システムなど色々な業務システムで製品マスターを管理する必要があります。
しかし、企業の業務システム環境は部門ごとに分断されているのが多く、製品マスターの一元管理は難しい問題です。そのためある業務システム用のマスターを変更しても、他の業務システムではそれが反映されないということが起こります。複数の業務システムでの製品マスター変更は作業が大変なだけでなく、ミスや漏れも発生しやすいため、適切な管理が難しくなります。
その結果、各業務システム間での製品マスター不整合が起きれば、様々なシーンで重大なトラブルが発生する可能性があるのです。
ソリューション(解決)
製品マスターを管理する上での最大の課題である「マスターの分散化」を解決するためには、関連するすべての業務システムを統合することが根本的な解決策になります。たとえば、複数の業務システムで製品マスターを使用する場合、それぞれが単一のデータベースからマスターを呼び出すようにすればこの課題は解決できます。製品マスターの内容を変更しても、複数の業務システムのマスターに反映する作業は不要です。
しかし、こうした統合的なマスター管理を実現するのはなかなか難しい問題です。企業の業務システムは長らく「部門最適化」によるサイロ化が進んできたため、各部門が使いやすい業務システムを個々に運用していることが多いのも現状です。個別の要件に応じて作られている各業務システムのすべてを連携したり、一つのデータベースに接続するというのが現実的ではないのは想像に難くありません。
それに対する解決策として、ERPによる製品マスターの統合管理があります。ERPとは、企業が経営活動を実施するにあたって欠かせない複数の業務システムを統合したプラットフォームです。各業務システムで利用するデータは一元管理されているため、業務システム間でのデータの不整合は起こりません。
さらにERPをクラウドサービスとして利用することで、多様な環境で利用されている業務システムとの連携が容易になります。
クラウドERPでは製品マスターが一つのデータベースで管理され、各業務システムをそれを使用します。加えてクラウドサービスとして提供されるため、初期投資を抑えて運用をスタートすることが可能です。
機能
クラウドERPは一般的に次のような機能を備えています。
- 財務会計システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 人事管理システム
- 生産管理システム
- 調達管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 出荷管理システム
- 受注管理システム
- 発注管理システム
- Eコマースシステム
- ビジネスインテリジェンス
一口にクラウドERPといっても様々な製品があるので、選択するものによって機能は異なります。
メリット
クラウドERPで一元的に管理できるのは製品マスターだけではありません。取引先マスターや従業員マスター、企業がこれまで管理してきたすべてのマスターを一元管理できます。
統一データベースのメリットは他にもあります。たとえば財務会計システムや営業支援システム、あるいは生産管理システムが生成するデータを経営者はリアルタイムに見ることができ、現時点での経営状況を把握できます。ビジネスインテリジェンスが搭載されているERPならば、情報分析およびレポートを素早く出力できるので、情報活用が進み経営意思決定が迅速になります。
クラウドサービスの観点からすれば、社内インフラを整える必要がないため運用負担が軽減するというのが大きなメリットです。さらにインターネット接続環境さえあればどこからでもシステムを利用できるので、ワークススタイルの変革にもなります。
デメリット
クラウドERPは良くも悪くも、これまでの業務形態を一新するソリューションです。そのためクラウドERPの導入に対する準備ができていないと、既存の業務形態を継続する部分が出てきたり、システムを使いこなせないことで生産性が下がってしまいます。
適切に管理するために、中長期的な運用計画を立てておくことが大切です。
選び方のポイント
クラウドERPを選ぶ際は、できる限り柔軟なものを選ぶのがおすすめです。マスターは企業内のあらゆる業務システムで利用されます。そのため、様々な環境で運用されている各業務システムと連携できる柔軟性や拡張性が重要です。
既存の業務形態をできるだけ維持しつつシステム化によって業務効率を上げるというのがベストなので、クラウドERP選びの際は製品の柔軟性に着目してください。
まとめ
皆さんの会社では、分断化されたITシステム環境によって製品マスターやその他のマスターが乱立している状況にないでしょうか?そうした状況下では業務効率は下がり、作業の手間は増えるばかりです。製品マスターおよび様々なデータを一元管理するためのプラットフォームがあれば、効率性、整合性を保ちながら適切な事業管理が可能になるというメリットをもたらします。この機会に、クラウドERPによるマスター管理と統合的な業務システム環境をご検討ください。
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