メンテナンス管理システム
メンテナンス管理システムとは?
物品や設備製造などの事業は製品を販売してビジネスが終わりではありません。このような事業の特徴は、消耗、劣化、不具合などによって発生する問題に対応し続け、顧客に安全で快適に使用し続けてもらうという使命を持ち合わせます。生産設備、空調設備、昇降機、浄化槽、防災設備、消防設備などの設備などに加え、IT機器やそれに付随するソフトウェアも含まれます。このような設備や機械には「メンテナンス業務」が欠かせません。
メンテナンスとは「保守」や「維持」という意味で、これらの業界が販売する設備や機械には経年劣化や消耗があるため、定期的なメンテナンスを施さないと安全に利用し続けることができません。またIT機器などもソフトウェアの不具合や新たに発見されるソフトウェアの脆弱性などに対応するための継続的な保守が必要になります。
IT機器に限らず、現在は設備や機械もソフトウェアで制御されている範囲が広がり、単なる部品などの保守だけでなく、IT機器と同様にソフトウェアの保守も重要になってきています。このように、販売した設備や機械などを顧客に安全に利用してもらうために重要な業務がメンテナンスであり、製品のライフサイクルの後半を構成するプロセスになります。このメンテナンスを効率的に適切に行うための情報管理を行うのがメンテナンス管理システムです。
背景/目的
「メンテナンス」という言葉は、それを提供する業態によってサービスの内容が大きく変わります。たとえば産業用機械を製造販売する企業ならば、メンテナンスは「機械の定期点検および修理」を指すでしょう。消耗品の交換や清掃などが中心でしょう。ソフトウェアのメンテナンスであれば新しいソフトウェアのインストールと設定などでしょう。いずれのメンテナンスでも、近年はサービスとして提供することで収益源になるとともに、顧客との接点としての重要さも増しています。
従来は、たとえば産業用機械を製造販売する企業では顧客の要望に応じ定期点検を行ったり、問題があれば修理のためにオンサイトの対応をするということが一般的でしょう。特別な契約が無い限りそこにビジネスは発生しませんし、「メンテナンス=事後対応」といったところでしょう。
しかし最近ではそのメンテナンスをビジネス化しようとする動きが活発化しています。たとえば産業用機械に複数のセンサーを設置し、問題の予兆をキャッチしてすぐに点検を行い必要とあらば修理するといった、より積極的なメンテナンスサービスが提供され始めています。問題が発生する前に手を打てるので、顧客は業務を止める必要もなくスムーズに事業を継続できます。こうしたサービスを提供すれば顧客の生産性は上がりますし、そこから収益を確保することも可能でしょう。
こうした「メンテナンスへの見方」が変わったことで、メンテナンス管理システムが強く求められるようになりました。
課題
メンテナンス管理システムを導入することでメンテナンス業務を効率化したり、人為的ミスを無くしたり、定期契約の更新漏れなどが無くなることは確かです。ただし、メンテナンス管理システムには新しい課題があります。それば「予防保守(予兆保守)」によるメンテナンス業務の迅速化です。
予防保守とは従来のメンテナンス業務とは違い、決められた日時に定期点検を行ったり、問題が顕在化した時に対応するようなものではありません。機械や設備の状況をリアルタイムに監視して、問題が発生しそうな予兆があればすぐに対応し、問題が発生する前に予防することを目的にしています。
この予防保守をサービスとして提供することは、企業として競争力を生み競合優位なビジネスを展開できます。しかし予防保守を実現するためには、機械や設備に多数のセンサーを取り付けたりする他、メンテナンス管理システム側でもそれを受け入れ分析し、稼働状況を報告するための機能が必要です。
ソリューション(解決)
メンテナンス管理システムに基本的に求められているのは、各顧客の契約内容、スペック、メンテナンスの履歴や計画を管理することです。しかしそれ以上に期待されている予防保守という領域まで対応できるのがクラウド型のメンテナンス管理システムです。クラウドサービスとして提供されることにより、物理的に分散している設備や機械などから情報を収集することが容易になり、また現場との情報共有も行いやすくなります。
設備や機械をIoT化し、センサーから定期的に情報を収集することによって常に状態監視をしたり、メンテナンスの担当者はどこにいても同じシステムを利用できるメリットがあります。メンテナンス担当者は社内にいても、取引先にいても同じシステムにアクセスして機械や設備の稼働状況を確認できるため、予防保守のためにリアルタイムな監視できます。
もう一つのソリューションの切り口がクラウドERPというプラットフォームです。ERPとは複数の業務システムを統合し、業務間のデータをリアルタイムに正確に連携します。そのため、メンテナンスに必要な部品在庫の管理システムや物流システムと連携し、より適切で効率的なメンテナンス管理を可能にするのです。
このERPをクラウドサービスとして利用することで、IoTとの相性がいいクラウドサービスとデータ連携が可能なERPのメリットを両方享受することができるのです。
機能
メンテナンス管理システムは、対象となる製品や目的によって機能が変わります。たとえば、一般的な保守運用を目的として製品ならば、契約書作成や契約切れのアラート通知、過去の取引情報を引用した取引更新や機械や設備に関するドキュメント管理などを提供しています。
それに対し、予防保守を目的として製品ならば上記の機能に加えてセンサーからのデータ収集およびデータ分析、機械や設備のモニタリング画面、閾値に設定による問題予兆の定義、問題の予兆があった際のアラート通知、フィールドサービスエンジニアの手配機能などが備わっています。
このような視点で、メンテナンスを事業の中でどのように位置づけるのかも含めて検討することで必要な機能を洗い出すことが必要です。
メリット
メンテナンス管理システムを導入するメリットは様々です。まず、保守運用に関する契約業務を効率化できることです。WordやExcelで契約書を作成し、契約内容をExcel帳票で管理する従来の方法では、非効率なことが多く人為的ミスも発生しやすくなります。一方メンテナンス管理システムを導入していれば、契約書作成や契約内容の管理はすべてシステム上で行え、かつデータ入力作業も手間がかからないのでミスが無くなります。
もう一つ大きなメリットは機械や設備に関する情報をリアルタイムに可視化できることでしょう。前述した予防保守を目的としてメンテナンス管理システムならば、センサーから収取した情報によって自社が製造販売するすべての機械や設備を監視できます。予防保守も加えることで保守性も高まり、顧客満足度もさらに向上するでしょう。
デメリット
メンテナンス管理システムのデメリットは強いていえば従来の管理プロセスが変更されることでしょう。保守運用などをシステム化するので、業務上の変更点が大きくなり、最初は現場がそれに慣れないという場合もあります。
しかし中長期的なメンテナンス管理システムの運用計画を立てれば、そう大きなデメリットには感じないでしょう。
選び方のポイント
メンテナンス管理システムを選ぶ際はまず自社の保守運用業務を改めて見直して、機能要件を固めていきます。 前述のようにどの製品を選ぶかによって機能が大きく違うので、適切なメンテナンス管理システムを選ぶためにも機能要件は欠かせません。
ソリューションで述べた通り、メンテナンス管理システムは在庫管理システムや物流システムなどとの連携が重要であるため、メンテナンス管理システム単体で選択するのではなく、業務システムの一つとして選択することが重要です。そのため、ERPは非常に有力な選択肢になります。さらに今後のIoTの活用による予防保守などを考慮するとクラウドサービスである必要があります。その結果、クラウドERPはメンテナンス管理システムの選択肢として非常に合理的です。
まとめ
従来は当たり前にように提供されてきたメンテナンスも、今ではサービスとしてより高い付加価値を提供し、重要な収益源となっていきます。IoTはメンテナンス管理と非常に密接な関係にあり、今後のメンテナンス業務をサービスとして提供できるように位置付けていただくことが重要です。
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