工場管理・監視システム
工場管理・監視システムとは?
ドイツが官民一体となって進めている「インダストリー4.0」は、製造業のデジタル化・コンピューター化を目指す国家的戦略的プロジェクトです。工場の生産ラインにある設備などをIoT(モノのインターネット)化し、無数のセンサーから収集したデータで生産ラインを管理・監視するという取り組みが中心です。
こうした取り組みは他に「スマート・ファクトリー」や「FA(ファクトリー・オートメーション)」などとも言われています。
これらを実現するためのインフラとして欠かせないのが工場管理・監視システムです。生産ラインの設備をIoT化しても、そこから生成されるデータを収集し、かつそれらを一元的に管理して分析するための基盤が欠かせません。
工場管理・監視システムはいわばその基盤であり、スマート・ファクトリーやFAを目指す上で欠かせないシステムです。
背景/目的
世界中でスマート・ファクトリーやFAへの取り組みが活発化している背景には、製造業の実情が関係しています。従来、日本の製造業は国内で企画・設計した製品を低コストで生産できる海外拠点で製造し、大量生産による販売を行っていました。しかし、生産国の人件費高騰によってコストダウンのメリットが享受できなくなりつつあり、かつ新興企業の技術力の高さによって国際競争は激化しています。
そこで多くの企業が着目したのが「量」よりも「質」への転換です。従来通りの生産量はキープしつつ、より質の高い製品を生産することで、競争力を高めようという取り組みが注目されだしたのです。
しかし、生産量を維持したまま品質を向上するというのは多大なコストと労力がかかります。たとえば品質基準を従来の倍にした場合は、生産量を維持したり品質を向上するためのコストや労力は単純に2倍ではなく、それ以上の負担が発生します。
これを実現するための施策が「生産ラインの自動化」です。製造業では元来生産ラインの自動化が進められてきましたが、品質チェックや細かい作業についてはやはり人手が欠かせませんでした。この人手が必要だった部分まで自動化に成功すれば、人件費の削減や生産ラインの完全自動化によって高い競争力を生むことができます。
そのため工場管理・監視システムの重要性が増しています。
課題
スマート・ファクトリーやFAを実現するために欠かせない課題は、これまで人手で行っていた作業をいかにして自動化するかという点に集約されます。たとえば生産ラインから流れてくる製品や部品を見て、手に取って品質をチェックし、不良ならば生産ラインから弾き出すという作業は従来ロボットには難しく、熟練の作業者によって行われることも多いでしょう。
製品や部品によって不良基準は様々ですし、これらを画像解析によって見極めて、適切に弾くという作業はロボットには難しいものです。しかし、この課題を解決しない限り完全なスマート・ファクトリーやFAを実現することは不可能でしょう。
ソリューション(解決)
スマート・ファクトリーやFAの課題を解決するために欠かせないキーワードが「IoT」「ビッグデータ」「AI」「セキュリティ」の4つです。
1. IoT
IoTはいわばセンサーによって様々なデータを生成し、そこから様々な知見や洞察を得るためのものです。スマート・ファクトリーやFAの課題を解決するためには、どこにセンサーなどを取り付けてどんなデータを収集するかを十分に検討し、適切なソリューションを考えることが重要です。
2. ビッグデータ
IoTから生成されるデータは膨大でまさにビッグデータだと言えます。ビッグデータといえばそれを一元的に管理し、加工し、分析するための基盤が欠かせません。さらにデータから得た知見や洞察をダッシュボードに表示し、生産ラインをリアルタイムに監視することが欠かせません。
3. AI
スマート・ファクトリーやFAの実現において特に注目されているのがAI(人工知能)技術です。近年はAI技術の発展が目覚ましく、特定の分野では人間以上の能力を発揮するAIが多数存在します。たとえば商品の品質チェックの自動化は、AIによって実現していくことは確実でしょう。高度な画像認識やデータ処理の技術があれば、人間と同じように生産ラインから流れてくる商品の品質チェックが行えます。
4. セキュリティ
4つめに重要なキーワードがセキュリティです。生産ラインを自動化するということは、ロボットやソフトウェアの力を大いに利用するということです。それは反面、セキュリティ上のリスクが生産に重大な問題を引き起こす可能性がある、ということです。セキュリティは今まで以上に強化して、様々なリスクに対応することが大切です。
機能
工場管理・監視システムが提供する基本的な機能は「データ管理」「データ分析」「モニタリング」の3つです。
- データ管理
IoTなどのデバイスから収集したデータは、工場管理・監視システム上で一元的に管理されます。どういったデータを収集し、どのように管理するかの設定も可能でしょう。
- データ分析
工場管理・監視システムに収集および管理したデータは自動的に分析され、その結果がダッシュボードに表示されます。ユーザーはそれを参考に意思決定を迅速化できます。
- モニタリング
ダッシュボードに表示したデータは人が監視するだけでなく、工場管理・監視システム自体も生産ラインの稼働状況をモニタリングします。問題が発生する可能性がある場合は迅速にアラートして、生産をストップさせません。
メリット
工場管理・監視システムを導入するメリットは、これまでは不可能だったレベルで生産ラインを監視できるという点です。たとえば今までだったら問題が発生してからそれを認識し、対処するのが一般的です。しかしそれでは対処に時間を取られ、生産がストップし効率性が下がる可能性があります。
そこで工場管理・監視システムがあると、問題が発生するまえにそれを検知する「予兆管理」ができるので、問題を発生させずに生産を進めることができます。
デメリット
デメリットとしては生産ラインにIoTを設置したり、データ収集や分析のためにコストがかかる点でしょう。比較的大規模なシステムになるので、そのための投資はやはり必要です。ただし、工場管理・監視システム導入・運用後の生産状況を考えると、将来的にコスト削減になる可能性もあります。
選び方のポイント
工場管理・監視システムは非常に多様な製品が登場しています。IoTからのデータ収集を中心にしたものや監視カメラから得られる映像を中心としたものなど様々です。ですので、自社にとって適切な製品を選ぶためには、現在の生産ラインや生産管理状況を考慮して機能要件を固めていくことが大切です。
IoTの基盤として選択されるのはクラウドです。ネットワーク経由で地理的に分散している工場のデータを集約することも容易であり、蓄積したデータに応じてリソースの割り当てなども柔軟にすることができます。
またさらに蓄積したデータは単に工場管理のためだけでなく、事業に活かされる貴重な生のデータとなります。これらを基盤のデータとして取り込み、他の業務システムでも活用できればより適切な経営判断が可能になるでしょう。
そのためのプラットフォームとしては、工場管理システムを単独で検討するのではなく、ERPを検討するのも有効です。さらにクラウドERPであればIoTとの相性も良く、経営情報の一部として工場管理データを活かすことができるようになります。
まとめ
工場管理・監視システムは今後規模を問わず欠かせないシステムになると考えられています。スマート・ファクトリーやFAへの取り組みよって生産性の大幅な向上が重要視されています。皆さんもこの機会に、工場管理・監視システムの導入をご検討いただき、クラウドERPの価値についてもご検討ください。
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