安全管理システム
安全管理システムとは?
建築現場には様々な危険があります。ここでいう危険とはビジネス上のリスクではなく、生命に関わる危険です。建設業労働災害防止協会(建災防)が毎年行っている調査※1によれば、2017年に建設業で発生した死傷者の数は1万5,129人です。全産業での死傷者の数は12万460人なので、1割以上が建設業に集中しています。
さらに、死亡者の数は建設業が323人、全産業が978人なので死亡者数にいたっては3割以上に達しています。この数値から見るに、やはり建築現場には多数の危険があり、従業員安全を管理することは会社にとって重大な責務です。
2018年7月は記録的な猛暑に見舞われており、地球温暖化による気温上昇が年々深刻化している中で、建設現場では早急な安全対策が求められています。
そんな中、従業員の安全確保として注目されているのが安全管理システムです。労働災害を未然に防ぐことは企業にとっても重要なことであり、従業員の安全を管理することで、業務上の死傷事故を無くし、安心して働ける環境を整えます。
背景/目的
先にご紹介したデータのように、建築現場には様々な危険があります。もちろんその危険とは熱中症だけではありません。たとえば建築現場にて立ち入りが制限された危険区域へ知らずに入ることで、事故が発生することがあります。しかしそうした危険を100%管理することは、不可能でした。
たとえば業務上のルールや規則を厳格に策定しても、不注意による事故を完全に防ぐことはできず、また休憩時間に関して厳格に管理しても現場では規則通りのことが運ばないこともあります。建設スケジュールの遅延を取り戻すために、人材を多く投入したり無理な労働環境になることもあるでしょう。
安全管理システムはそうした中でそのニーズを拡大し、現在では様々な製品が登場しています。
課題
安全管理システムはセンサーや監視カメラから取得したデータを本社で集約し、それを可視化できる状態にすることが大切です。そのため、データを収集・分析し、可視化できる状態にするためのプラットフォームが欠かせません。
しかし、そうしたプラットフォームを構築したり運用することは会社にとって非常に大きな負担です。特に建設業に従事する中小企業では情報システム部門を持たないことが多いため、プラットフォームの構築と運用に大きな問題を抱えがちです。
ソリューション(解決)
安全管理システムの課題を解決する上で欠かせないキーワードが「クラウド」です。クラウドとはインターネット上で提供されるサービスの総称であり、社内インフラを構築しなくてもシステムを利用できるという特長があります。
近年登場している安全管理システムの多くIoTと組み合わせており、クラウドの活用を進める要因にもなっています。たとえば作業着に装着されたセンサーや監視カメラからの情報をインターネット上のシステムに収集し、それを分析した上でユーザーの目に見える状態にします。さらに、クラウドならインターネット環境さえあればどこからでもアクセスできるため、柔軟性も非常に高いのが特長です。
機能
安全管理システムが備える機能は製品によって大きく違います。一般的な機能としてデータ収集機能、データ分析・加工機能、ダッシュボードとして表示する機能が備わっています。監視カメラを主体として安全管理システムなら、カメラの切り替えやズームアウト、その他カメラを通じたコミュニケーションによる作業指示などの機能が備わっています。
メリット
安全管理システムを導入することで企業には次のようなメリットがあります。
- 従業員の安全を確保できる
多数の危険がある建築現場では、従業員にとって安心できる職場環境を整えることでその危険を軽減できます。もちろん100%の安全はありませんが、安全管理システムを導入することで従来の危険を半分以上削減し、安全の確保に努めることができるでしょう。
- 会社としての信頼を維持できる
建築現場にて事故が発生すると、会社はその責任を負うだけでなく社会的信頼も低下します。それによって仕事量が減少したり、会社として存続していくことが難しくなることもあるでしょう。安全管理システムによって事故発生を防止すれば、会社としての信頼も維持できるのです。
- 労災コストを削減できる
建築現場での事故は会社としての信頼が低下するだけでなく、多額の労災コストがかかります。これは会社が従業員に対して支払う責務なので、避けては通れません。事故が多発している現場では労災コストによって経営が圧迫されることがあります。事故発生率が低下すれば、その分労災コストも少なくなるので安全管理システム導入以上のコスト削減効果があるでしょう。
デメリット
安全管理システム導入のデメリットは「製品選びが難しいこと」と「導入・運用コスト」でしょう。実は、一口に安全管理システムといっても様々な種類があります。監視カメラを設置し、その映像をリアルタイムに監視することで安全を確保するもの。従業員にウェアラブルデバイスを装着してもらい、心拍数などを監視することで安全を確保するもの。このように製品ごとに特徴が違い、確保できる安全も異なります。
もう一つのデメリットが導入・運用コストです。たとえばウェアラブルデバイスを搭載した作業着を購入するとなると、1着100万円以上かかることもあります。専用の監視カメラも非常に高額なので、安全管理システムを導入する企業にとっては導入・運用コストが大きな負担になるでしょう。
そのため安全管理システムを導入することでのパフォーマンスと、導入・運用コストのバランスを考慮して導入すべき製品を選ぶ必要があります。
選び方のポイント
安全管理システムを選ぶ際のポイントは、まず現場の実態を把握することです。建築現場によって発生しやすい危険が異なるので、これを適切に把握しないと最適な安全管理システムの導入ができません。そのためにはまず現場の監視を行い、どういった危険がありそうか、実際にどういった事故が発生しているかを調査して、危険の傾向を知ることが大切です。
また将来的にはIoTの活用が必須になります。センサー等から危険を察知して早く対応することができるからです。そのためには安全管理システムはクラウドで提供されるサービスを選択することが合理的でしょう。
また従業員の安全管理は労務管理とも関係が深く、他のシステムとのデータの連携も必要になります。その際にはERPのような統合されているプラットフォームも選択肢としては有力でしょう。これらを合わせると、安全管理システムもクラウドERPを選択することで、より広く業務改善につなげることができます。
そうした調査をまとめて会社にとって本当に必要な安全管理システムの形を見極めることで、建築現場の事故防止に貢献します。
まとめ
転倒、転落、落下、熱中症など建築現場では危険がたくさんあります。改めて言いますが、そうした危険から従業員の安全を確保し、安心して働ける環境を整えることは会社としての責務です。厳格なルールや規則を策定しても、実際に事故が減らないのならば有効なソリューションを提案できていないということ。この機会に安全管理システムの導入を検討し、より高い安全の確保を目指しましょう。
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