債権債務管理
債権・債務管理システムとは?
債権とは、他者に対してある行為や給付を要求できる権利です。それに対し債務とは、自身の財産に対して他者からの要求へ対応するための責務です。ビジネスにおいてはこの要求は一般的に金銭によるものが多いでしょう。
特に企業対企業(BtoB)のビジネスは「与信取引」が基本です。与信とは相手に信用を与えるという意味で、ビジネスは信用の上に成り立っています。というのもほとんどのBtoBビジネスにおいて商品やサービスの受渡し時期と、実際に代金を回収する時期が異なるためです。これは販売の都度金銭のやり取りを行っていると販売側と購入側の双方にとって手間が多く、合理的ではないためです。
そのため、一定期間内に発生した取引の金銭回収や支払いは、両当事者が協議した支払いの基準に従うことになります。ちなみに債権のことを「売掛金」、債務のことを「買掛金」ともいいます。
この債権と債務を管理するためのシステムが債権・債務管理システムです。
背景/目的
従来、債権・債務管理はExcelなどで作成した帳簿や会計システムで行ってきたという企業が多く、今でもそうした管理を実施している企業もあるでしょう。基本的には発生した債権・債務を記録し、それに対する支払いの消込ができればよいので、システム的な要件はシンプルかもしれません。
しかし最近になり、債権・債務管理システムの重要性が再確認されています。その理由が、単純な計上と消込を手動で行っているとデータの信憑性が低くなり、かえって手間がかかったり、トラブルになることもあるからです。
Excelに代表される独立したアプリケーションによる債権・債務管理の仕組みは「リアルタイム性に欠ける」というデメリットがあります。また、たとえば債権管理では入金記録と突合し、消込を行いますが、同じ取引先で複数の債権がある場合などはミスを起こす場合もあります。そのためリアルタイム性と正確性の二つの観点で情報管理に多くの問題が発生します。
会計システムにおいても債権と債務を帳簿として記録することは可能ですが、リアルタイムの回収・支払い状況を記録することは難しく、どうしても不整合や非効率が生まれてしまう可能性があります。そのような課題を解決するべく債権・債務管理に特化したシステムとして提供されるのが債権・債務管理システムです。
課題
販売側と購入側の双方にとってメリットの多い与信取引ですが、実際にはリスクもあります。それが販売側にとっての「未回収リスク」です。「未回収」とは、取引先から期日までに支払われるはずの代金が支払われなかった状態を指し、「焦げ付き」とも言われます。
取引先も一つの企業として経営活動を行っているので、経営が悪化すると代金を支払えない、つまり債務を果たせないことがあります。販売側にとってそれは重大な問題を引き起こします。代金が支払われないと、売上としては計上されても現金を回収することができず、資金繰りが悪化することになります。販売側も仕入れなどの支払いがあるため、販売側の支払いも滞り、連鎖することにもなりかねません。
最悪の場合、取引先が倒産するなどして支払い能力がなくなると、最終的に代金を回収できず、貸し倒れとして処理しなければならない可能性もあります。
これは購入側の観点でもリスクです。与信取引は信用の上に成り立つため、代金未払いが一度でも発生すると販売側だけでなく社会的な信用が低下し、そのあとの取引条件が悪化するなど、経営に影響を与えます。
ソリューション(解決)
こうした与信取引のリスクを回避するために、債権・債務管理システムは調達管理システムや販売管理システム、あるいは会計システムと連携してリアルタイムな情報収集と可視化を行います。
取引が発生し、調達管理システムや販売管理システムのデータが入力された段階でそれを債権・債務管理システムに反映し、常にリアルタイムな情報で債権および債務を管理するのです。さらに会計システムと連携した回収・支払い状況に応じて自動的に消込作業を行い、債権・債務管理が適切に行われるようサポートします。
もう一つ重要なことは「与信管理」です。取引先の与信を管理し、取引の可否や限度額を決定することで、貸し倒れのリスクを最小化します。
機能
債権・債務管理システムには次のような機能が備わっています。
・債権および債務の一元管理
企業が抱えている債権と債務を一元的に管理し、常に最新情報が見えるように可視化します。
・代金回収・支払いに応じて消込作業
取引先からの代金支払いや、取引先への代金支払い情報を取り込み自動で消込作業を行います。
・多様な支払い方法へ対応
銀行振込、約束手形、相殺、ファクタリングなど多様な支払い方法に対応します。
・代金回収の支援と書類作成
代金回収の期日をアラートしたり、未回収が発生した際は督促状作成など債権業務をサポートします。
・長期債権管理
シミュレーション機能を使用して長期的な債権を管理することで、経営計画の立案に役立てます。
メリット
債権・債務管理システムのメリットは未回収リスクを低減することと、債権および債務の管理業務を効率化することです。
与信取引における未回収リスクが100%無くなることはありませんが、債権・債務管理システムで与信管理を徹底したり債権業務を効率化することでそのリスクを低減できます。
さらに、債権・債務管理の全体業務が効率化するため、手間を少なくしてコア業務へとより集中できる環境を整えます。
デメリット
これといったデメリットはないのですが注意点はあります。それは、債権・債務管理システムが取引に関わる複数の業務システムと連携する必要があるということです。前述のように調達管理システムや販売管理システム、会計システムなどと連携することでリアルタイムで正確な情報の可視化と管理が可能になります。
既存のシステム環境によっては、債権・債務管理システムの導入是非を慎重に検討しなければならないでしょう。
選び方のポイント
債権・債務管理システムを選ぶ際のポイントはまず、業務実態に合わせた製品を選ぶことです。一口に債権・債務管理といっても企業によって取引方法は違いますし、どんな商品を扱っているかによっても異なります。そのため、業務実態に合わない製品を選んでしまうと、債権・債務管理システムが機能しません。
もう一つのポイントは既存の業務システムとの連携です。債権・債務管理システムは様々なシステムと連携しなければならないので、接続性を確認しておかないと導入後に思わぬトラブルを招きます。そのため、個別のシステムではなく、経営に必要な情報が一元管理されるERPを導入することにも合理性があります。もともと情報が一元管理されるため、その中で債権・債務管理の機能を利用することで、リアルタイムかつ正確な情報管理が実現できます。
まとめ
債権・債務の適切な管理は経営に大きな影響を与えかねない重要な課題です。適切かつ正確な管理を徹底していないと、最悪の場合資金繰りが悪化し、「黒字倒産」もあり得ます。
ですので、債権・債務管理業務を効率化し、リスクと管理するためにも、債権・債務管理システムの導入をご検討ください。特にクラウドERPは導入の初期コストも抑えながらERPのメリットを享受できるため、価値のある選択肢となるでしょう。
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